48 STUDIES
Op48
35.達磨返し(だるまがえし)
「先生、ちょっと顔貸してくんない?」
卒業の三代名物(笑)といえば、
『サイン帳』
『制服の第二ボタン』
そして……
『お礼参り』
だろう…。
季節が冬から春に移り変わる頃。
世の中には終わりと始まりのために慌ただしくなる。
学校では三年生の授業は殆ど無くなり、毎日卒業式の準備が進められる。
そんな時期の話であった…。
国語科の教師猪八戒は教材室でのんびりとコーヒーを飲んでいた。
主に三年生を受け持っているので授業も殆ど無い。
三年生の成績もつけ終わった。
中にはかなり問題のある生徒もいたが、地獄のような補修と追試でなんとかなった(…というか、なんとかした)
今年度もこれでなんとかできたとほっと一息つく。
そんな時、教材室の扉がいきなり勢いよく開かれる。
「…!?貴方は…三年の…えっと、沙悟浄君。どうかしましたか?」
扉の向こうに立っていたのは三年の沙悟浄だった。
彼は問題のある生徒の中でも代表になるぐらいであった。
彼一人のためにかなりの時間を使った気がする。
……しかし、いったい何の用だというのだろう。
「先生、ちょっと顔貸してくんない?」
「はい?」
突然言われたことに理解が出来ない。
悟浄は八戒の手を掴むと、そのまま教材室を出る。
「ちょっと…どこへ……」
「静かにしてろよ」
八戒の質問には答えず、悟浄は廊下を進んでいく。
「入れよ…」
保健室の扉を開けると八戒の背中を押す。
悟浄は中に入ると扉の鍵を閉める。
「保健室の先生は…?」
中には誰も人はいない。
それなのに鍵が開いているというのもおかしい。
「ちょっとお願いして別のトコ行ってもらった。
外出中の札かけておいたから誰も来ないぜ、先生」
この場合、『お願いした』というのは『脅した』ということなのだろう。
「こんなところに連れてきて…どういうことなんですか?」
ゆっくりと近付く悟浄にそう言いながら少しずつ後ろに下がる。
しかし、後ろにベッドがあるのでこれ以上は下がれない。
「先生にはずいぶんとお世話になったから、御礼しないといけないと思ってね」
「…や……」
悟浄の手が八戒のシャツの襟元に伸ばされる。
そして、そのまま勢いよく左右に引っぱる。
音を立ててシャツの釦がはじける。
「何をするんですか!」
悟浄は八戒のシャツを脱がせると、その破れたシャツで八戒の手を後ろで一つにまとめて縛る。
そして、八戒の身体を押し、ベッドへと転がす。
「何をするんですか。
どうしてこんなことを…」
悟浄はベッドに乗り上げ、八戒を組み敷く。
「先生が補修やら追試やらやったせいで、デートキャンセル。それで俺、彼女に振られちゃったわけ。
かわいそーでしょ。だから、先生責任取ってよ」
「そんなの貴方の問題じゃないですか!
何で僕が…ん…んん……」
言葉の途中で悟浄が八戒の唇を奪う。
悟浄から逃れようと八戒は必死で首を振るが、手を後ろで縛られている上に、悟浄に押さえ込まれ、逃れることが出来ない。
「や…やだ、やめて……」
ようやく唇が離されるが、悟浄の手が八戒のズボンにかけられる。
自分が今から何をされるかを感じ取り、まだ自由の利く足で抵抗を示す。
しかし、両手でしっかりと押さえ込まれ、オマケにズボンと下着を取り去られてしまう。
「おとなしくしてろよ」
悟浄は周りを見るとテーブルにおいてある包帯を手に取る。
「暴れると困るからな」
八戒の足を折り曲げると、そのまま包帯で縛り上げる。
「あ…やめて下さい…どうしてこんな……」
足まで縛られ、身動きがとれない。
その上、この状態では、悟浄の目に八戒の見られたくないところがしっかりと映ってしまう。
羞恥からか、八戒の目から涙が零れる。
「へー、先生でも泣くことあるんだ。
かわいいじゃん」
「…もう、帰してください…お願い…」
八戒のその言葉に悟浄は一旦ベッドから離れる。
自分にかかっていた重みが無くなり、八戒はほっと一息つく。
しかし、悟浄はすぐに戻ってくる。
手に何かを持って…。
「先生も忙しいみたいだし、早くしてやらねぇとな」
そう言って笑うと、手に持っている容器の蓋を開け、八戒の後ろに塗りつける。
「や…つめた……」
それは軟膏か何かだろうか。
冷たさに身を竦める。
「力抜いておいた方がいいぜ」
軟膏の塗りつけられた場所に今度は熱いモノが押しあてられる。
「まさか…やめて…あぁっ…」
軟膏が塗られただけの所に悟浄は無理矢理自身を押し進める。
八戒の口から苦痛の声が漏れそうになるが、それを己の唇で塞ぎ消す。
「ん…んんん……」
「それじゃ、先生。どーもお世話になりました」
そう言うとベッドのカーテンを引く。
…その言葉が八戒に届いたかどうかはわからない。
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