48 STUDIES Op48
32.首引恋慕(くびひきれんぼ)
「町内運動会…ですか」
「そうなのよ。八戒さんと悟浄さんは二人三脚に出場が決定したから、宜しくね」
そう言い、回覧板と共に『運動会のお知らせ』と書かれたプリントを強引に渡すと八戒に何かいう間も与えずに『それじゃあ』と帰っていく。
「あの…」
八戒はプリントを手に持ったまた呆然としてしまう。
「なにコレ」
遅くに起きてきた悟浄は朝とも昼とも言えない食事を取りながらテーブルの上に置かれたプリントを見る。
「町内運動会のお知らせだそうです。
よくわからないですけど、僕と悟浄は二人三脚に出ることになっているみたいですよ」
八戒はヤレヤレ…といった感じに溜息をつく。
「へー、この町内、運動会なんてやってたんだ〜」
悟浄はさほど気にした様子もなくプリントに一通り目を通す。
「えーっと…なになに。一位には商店街お買い物券○○円分プレゼント…」
「え?」
悟浄の言葉に八戒が反応を示す。
「んで、結局コレどーすんの?やっぱ断る?」
といって八戒を見る。
八戒の目の色は先程とは明らかに違う…。
「でも、断るのも何ですし…。
やっぱり御近所付き合いも大切ですしね。
あ、出るからには一位を取りましょうね」
「……へーい」
悟浄は心の中で『コイツ、商品券に目が眩みやがったな』と思った。
……おそらく間違ってはいない(笑)
「運動会に出るんですから明日から練習しましょうね」
ベッドの中で八戒がそう言う。
八戒のパジャマの上着に手をかけたまま悟浄が露骨に嫌そうな顔をする。
冗談じゃない。
運動会に出るだけでも面倒なのに、その上練習なんて……やってられない。
「別に練習までしなくてもさ〜」
「だって、練習しないと一位になれないかもしれないじゃないですか」
八戒は力いっぱい言う。
八戒の目的はあくまでも商品券なのだ。
一位にならなくては意味がない。
「そんなこと言われてもさー」
悟浄は八戒の胸元に顔を埋めながら考える。
だいたい、もう運動会だなんだという年でもないのに…。
しかし、二人三脚とはなかなか美味しいシチュエーションではある。
八戒と身体を密着させて走るなど、なかなか出来る体験でもない。
でも、走るのは面倒だ。
運動ってそんなに好きじゃないんだよなー。
コッチの運動なら得意なんだけどな…。
そこまで考えて悟浄はニンマリとする。
イイコト思いついた。
「じゃあ、今から練習しようぜ」
「は?今からですか?」
悟浄の言葉に八戒が不思議そうな顔をする。
こんな時間に二人三脚の練習をするというのか…?
もう夜もかなり更けているし、なにより今、情事の途中だというのに…。
「二人三脚なんてもんはさ、ようは息が合えばいーわけじゃん」
「はぁ…」
悟浄が取り出したのは一本の紐。
それを輪にする。
「何をするんですか?」
「ま、いいから。ほら八戒、ここに座ってゥ」
悟浄は自分の膝を指してそう言う。
勿論ただ座れといっているわけではない。
ようは自分で挿入れろ、と言っているのだ。
八戒は少し躊躇い、それでもゆっくりと悟浄の上に座る。
「あ…んん……」
息を吐きながら少しずつ悟浄を飲み込んでいく。
時間をかけて全てを自分の中に収める。
まだじっとその感覚に耐える八戒の首に、先程の紐がかけられる。
「な…んですか…これ…」
よく見ると紐は悟浄の首にもかけられている。
ちょうど二人の首が輪の中にすっぽりと入った状態になる。
「二人の息を合わせる練習。
今日はこの紐の通りに動こうぜ」
そう言い、悟浄が動き出す。
紐の力で八戒も悟浄と同じように動く。
「ほら…右…左……前…後…」
かけ声と共に悟浄の動きがだんだんと激しくなる。
「…や……ん…あ…」
「…俺達…息ぴったりじゃん…。
これで一位も確実だな…」
「…そんなわけ…あ…は…ごじょ…」
……結局この練習(笑)のしすぎで八戒の腰痛のため運動会は欠場になった。
教訓:練習は程々にねゥ
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