48 STUDIES Op48
17.手懸



「今日から秘書として入る事になった猪八戒です。よろしくお願いします」
八戒は緊張した様子で挨拶をした。
目の前にいるのはこの会社の社長、金髪の美青年であった。
名前は玄奘三蔵。
この会社をつぐために先代社長に育てられたモノである。
半年前、先代社長が何者かに殺され、そのあとを三蔵が23歳という若さにして受け継いだ。
三蔵はかなり頭がキレるが、性格もキレており(笑)人間性には問題有りな人である。
会社関係の人付き合いはともかく社内での人付き合いはかなりひどい物だった。
気に入らないものは即クビである。
なので秘書ともうまくいかず八戒でもうすでに10人目であった。
なお、秘書をやめた者のその後は誰も知らない…という怪談話状態である。
今回新卒の八戒を秘書として採用したのはほぼ賭け状態だった。
22歳で三蔵と歳が1つ違いなので歳も近ければもしかしたら…という事である。
そしてかなり頭がよく人当たりも良いように見えた。
さらになぜか保育士免許ももっていた…‥。
この者ならもしかしたら三蔵とやっていけるかもしれない。

「社長はかなり変わった方だと言う事をよく覚えて置きなさい…‥。もしも駄目でも他の部署で採用するから…まあ頑張りなさい」
「…はい…‥」
八戒は実に優秀であるだけに実際は少しもったいなかった。
彼ならこの先それなりに出世をすることが出来るだろう。
しかし、もしかしたら三蔵の所で彼の人生が駄目になってしまうかもしれなかった。
それは可哀想であるが、もう他に秘書になれそうな人がいない。
秘書室長は溜息をつきながら彼を送り出した…‥。

「今日から秘書として入る事になった猪八戒です。よろしくお願いします」
そう言って挨拶したものの三蔵は八戒の事を見ようとすらしない。
そんな三蔵に八戒は困ってしまう。
「…コーヒー……」
三蔵はポツリとそう言った。
「はい、わかりました」
やっと話しかけてもらえたので、八戒は嬉しそうに返事をすると給湯室に向かった。
実はこれは三蔵の第一次試験である。
コーヒーもろくに煎れられないような奴はいらん、という事である。

「どうぞ」
三蔵の目の前にコーヒーカップが置かれる。
温かなコーヒーの香りが部屋に広がる。
一口含むとコーヒーの芳醇な…(以下略)
「合格だな」
コーヒーカップをソーサーの上に置くと三蔵はそう言った。
「…え…‥?」
「今日からお前が俺の秘書だ」
三蔵の言葉に八戒はにっこりと笑う。
「ありがとうございます、社長」
「社長はやめろ。三蔵でいい」
「え…でも…‥」
八戒は少し困ったような顔をする。
「命令だ」
「はい…」


しかし、三蔵はすぐに八戒の恐ろしさを身をもって知ることになる…。
「三蔵、だめですよ
今までのように好き勝手な行動をとっていると必ずこう八戒に窘められるのである。
さすが保育の免許を持っているだけあって(笑)気がつけばやんわりと行動を制限されている…。
このままではすべてが八戒のペースで進められてしまう…。
ここで一度威厳を取り戻す必要がある…。
三蔵は煙草を灰皿に押しつけながら一つの作戦を練っていた…。


「遅くまで御苦労様です」
八戒が三蔵の前にコーヒーを置く。
時刻はまもなく21時…といった時間であった。
別に特に今日中にやってしまわなくてはならない仕事など無かった。
ただ、八戒をこの時間まで残しておくための口実だ。
この時間なら社長室に来る者などいない。
警備の方にはあらかじめ連絡をしているのでこの付近には寄らないだろう。
計画的犯行という奴である。
「…八戒…‥」
八戒の腕をつかむとデスクの上に引き倒す。
ネクタイを掴み弛めるとYシャツを引き裂くように脱がせる。
八戒の瞳が恐怖の色に染まる。
「…声を出さないのか?まあこの階には誰もいないから助けを呼んでも無駄だけどな」
三蔵はワザと冷たい目で見下ろしてそう言う。
別に八戒を本気で抱きたいわけではない。
少し脅してやろうと思っただけだ。
「…貴方が望むなら…‥」
「…‥?」
八戒はぎゅっと目をつむる。
紅く染まった頬と白い肌がとても対照的だ…。
脅しだけのつもりだったのに引き込まれている自分がいる。
目を閉じてじっと我慢している八戒に口付ける。
…柔らかい唇…‥。
「…八戒…‥」
もう自分を抑える事が出来ない。
あらわになっている白い上半身に唇を寄せる。
「…あ…‥や…‥」
八戒の唇からもれる甘い声が三蔵をより暴走させる。
これ以上は冗談にならないと思いつつもう止められない。
体も心ももっともっと八戒を求めてしまう。
今までこんなにも人を求めた事はあっただろうか。
人と深く関わるのは嫌だったのに…‥。
八戒とはもっと深い所まで落ちても構わなかった。
彼の隅々までを知りたい。
「や…さんぞ…‥」
八戒のズボンと下着を取り去る。
そしてまだ息を潜めている蕾に唇を寄せる。
「…やだ…やめて下さい…そんな所…‥」
八戒が震える手で抵抗を示す。
しかし、三蔵はそんな声を耳に入らないかのように性急に八戒を求める。
舌を進ませ、同時に指を差し込み八戒の入口に解していく。
「…すまん…‥もう限界だ…‥」
「え…‥?」
急に八戒の腰を持ち上げられ、椅子に座っている三蔵の上に降ろされる。
「い…‥ああ…‥」
自分の体重で三蔵が奥まで入り込む。
キャスター付の椅子の不安定さが怖くて、八戒はデスクの端にしがみつく…。
三蔵はそんな八戒の腰を優しく抱きしめた。


「大丈夫か?」
三蔵は八戒に破れてしまったYシャツのかわりに自分の上着を掛けてやる。
「すまない…いきなりこんな事をしてしまって……」
「いえ、貴方が僕を求めてくれて嬉しかったです。…それとも…‥後悔していますか?」
自分を見上げてくる八戒に優しく口付ける。
「いや、お前を愛している。全てを俺のものにしたいぐらいに」

 

 

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