48 STUDIES Op48
16.仏壇返し




「お前はこれからどうするつもりだ?」
斜陽殿で自由な身になった悟能…いや、八戒に三蔵がたずねる。
「…悟浄の所に戻ろうと思います…」
八戒は小さく笑ってそう言った。
「そうか…」
三蔵はそれ以上何も言わなかった。
見た目は軽そうではあるが、悟浄はそれなりに良い人だ…。
八戒は頼るのもわからなくはない…。
三蔵はそう思っていた。

…でも事実は別の物…。
八戒は三蔵の出ていった部屋で小さく笑う…。
「…悟浄…貴方の元に帰りますね…。
 …だって、僕は…貴方のペットなんですから…」
小さな声で呟き、自分の体を抱きしめる。
悟浄によって飼い慣らされたその体を…。


「もうお前は戻ってこないと思ってたぜ」
悟浄はそう呟いた。
彼が死んだと伝えられる前に、…いや、彼を送り出した時点でもう彼には会えないと思っていた。
「どうしてです?」
名前は変わっていても彼は自分の前で前と同じように笑う。
そして悟浄の唇に触れる。
触れるだけの軽いキス…。
「僕は貴方のペットなんですよ」
「……そうだな…」
ペットといっても八戒はまるで猫のようだ…。
首輪をつけているわけでも鎖で繋いでいるわけでもない。
犬のように忠実なわけでもない。
自由気ままでプライドが高くて…。
もしかしたら別の所では別の名前で飼われているのでは…と思ってしまう。
「どうしたんですか…?」
「いや…なんでもない」
悟浄は八戒の髪を軽く撫でてやる。
「ふふ…変な人ですね」


本当に八戒は猫のようだった。
自分で自分のことを『ペット』だといっても、別に全て悟浄に従ったりはしない。
ただ、そこに一緒にいるだけ。
必要以上には干渉しない。
…それでも悟浄が本当に必要としていればそれに従う…。
そのあたりの心得はあるらしい。

「八戒、こっちこいよ」
悟浄が八戒を求めれば八戒はそれに従う。
しなやかに悟浄に甘えてくる。
従順に従いながらも、瞳には強い意志を持っている。
悟浄はそんな八戒の瞳が好きだ。
いつもその瞳に引き込まれそうになる。
「悟浄……」
自分を呼ぶ甘い声…。
その声にも引き込まれてしまう。
まるで飼っているのではなく飼われていると勘違いしそうだ…。
八戒は自分から悟浄に口付ける。
はじめはじゃれるように数回軽く触れる。
次第に少しずつ深い口付けへと変化していく。
追い込むように合わせる唇。
本気で相手を求め舌を絡ませる。
最後に大きく吸い上げると名残惜しそうに離れる。
そして悟浄の上着のボタンをゆっくりと一つずつはずす。
視線は上目遣いに悟浄を見たままで。
悟浄の上着を脱がせると、自分の上着を脱ぐ。
そして、直接肌を触れ合わせ、熱を伝えるようにしながらまた口付ける。
「今日はずいぶんと積極的なんだな」
八戒がふふっと笑う。
「さみしかった?」
悟浄の問いに八戒は悟浄の体を抱きしめる。
「…本当に寂しかったんですよ…」
悲しそうな顔で悟浄を見つめる。
その顔のあまりのかわいらしさに悟浄は八戒にキスをする。
唇に、頬に、額に、目蓋に…いろいろなところに軽く触れるだけのキスの雨を降らす。
「…ちょっと…悟浄…」
息なりのことに八戒が慌てる。
「寂しい思いさせてゴメンな。その分、今日は目一杯可愛がってやるよ」
悟浄の笑顔に八戒も笑顔で返す。
「…約束ですよ」


「ん…あ…ごじょう…」
八戒の甘い声が柔らかい唇から漏れる。
悟浄の手が八戒の体の上を滑るたびに八戒の唇から声がひっきりなしに漏れ続ける。
「八戒…ココ悦い?」
八階の中心にひときわ大きい刺激を与えると悟浄の背中にまわされた腕に力が籠もる。
「…えぇ…悦いですよ…だから…もう……」
「もうがまんできない?」
「じゃあ、ちょっとコッチに立って」
「…え……?」
突然言われたことに八戒は訳がわからずキョトンとする。
「いーからいーから」
楽しそうに言う悟浄に、八戒はとりあえずベッドから降りる。
「そのまま前屈みになって」
言われたとおりに上半身を前へ倒す。
まるで立位体前屈のような型…。
「わ…ちょ…悟浄…あ…」
悟浄は八戒の腰を両手で掴むと、突き出された八戒の尻に己の高ぶったモノを押しあてて挿入する。
八戒の足に力が入らずガクガクとする。
「ちゃんと支えてろよ」
「そんなこといっても…」
不安定な体勢のため変なところに力が入ってしまう。
「あ…やだ…ごじょ……ん ─── …」





「ねぇ、悟浄は犬と猫どっちが好き?」
酒場の女が悟浄にそうたずねる。
「んー、猫かな」
「え、でも犬の方が賢いし忠実じゃない?
 猫って飼っている気があんまりしないもの」
「でも、それを飼い慣らすのも楽しいけどな。
 じゃ、俺、家で可愛い猫が待ってるから帰るわ」
悟浄は上着を取ると女に軽く手を振る。
「悟浄、猫飼ってるの?どんな猫?」
女の質問に悟浄はニッと笑う。
「きれいでカワイクて俺だけに甘えるヤツかな」

だから今日も急いで帰ろう…。
猫の待っている家に。

 

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