48 STUDIES Op48
11.本駒がけ



その日の宿は少し変わったところであった。
そもそも、この街自体がいつもよるような街とは違っていた。
いつもは食料燃料等の補給の出来るような普通の街であったが、今回は…。
「すごい人ですね〜…」
ガイドブックに載るような観光地であった…。
普段ならば、そんな街にはよらないようにしているのだが、今回はこの街の近くには他の街がない…といった地方であった。
しかし、どんどん過疎化が進んでゆき、困った村人達が多額の金を投資して温泉を掘った。
俗に言う村興しというものである。
そして、温泉が湧いてから急に村は発展し、今では有名な温泉街である。
街には何十軒という温泉宿が建ち並んでいる。
そんな街なので普通のビジネスホテルのようなものはなかった。
というわけなので、今回三蔵一行が泊まる宿もそんな温泉を売りにしている宿であった。
部屋も普通泊まっているような殺風景な洋室ではなく、わびさびのきいている畳張りの和室である。
「いい部屋ですね、三蔵」
本日の部屋割りは三蔵と八戒・悟空と悟浄である。
三蔵たるもの、こんな絶好のチャンスを逃すはずはない。
「早速温泉行ってみます?」
八戒が部屋に置いてあるタオルと浴衣を持ってそういう。
「…あぁ…」
その時、三蔵が良からぬことを考えていると言うことを八戒は当たり前ではあるが知るわけもなかった…。


「いいお湯でしたね」
さすがに温泉を売りにしているだけ会って、広いし、種類も豊富である。
旅の疲れをとるには充分なものであった。
「夕飯の時間までまだ少しありますね、どうします?」
「………」
嫌な予感がする…。
ただ無言で見つめてくる三蔵に、八戒は本能で危険を感じる。
「中庭綺麗ですし、散歩でもしましょうか」
このまま部屋にいては危険な気がするので、八戒は必死で場の流れを変えようとする。
しかし三蔵は動こうとしない…。
「じゃあ、お茶でも入れますね」
三蔵の視線から目を背けるようにしてぎこちなくポットに手を伸ばす。
なるべく時間をかけてお茶を入れると、三蔵の前にそれを置く。
「八戒」
三蔵が急に八戒に触れる。
八戒は咄嗟に後退ってしまう。
「なぜ逃げる」
「いえ、なんとなく…」
…何となく嫌な予感がするからですよ…と心の中で呟きながら三蔵との距離を置こうとする。
それでも三蔵は八戒との距離を詰め、腕を掴むと自分の方へと引き寄せる。
「逃げるな……」
そのまま八戒を抱き口付ける。
「…………」
強引だけど力強い…。
八戒はそのまま三蔵に流されそうになる。
……が… 浴衣の合わせ目から手を差し込まれ、我に返る。
「…三蔵…何をするんですか!」
「言わんとわからんか?」
そういい、尚も手を胸元に侵入させる。
「ん…も…もうすぐ夕飯の時間なんですよ…」
風呂に入ったばかりの体は熱を帯びていてすぐに体内の熱が上がってきてしまう。
三蔵に流されないように八戒は必死に抵抗する。
「大丈夫だ、すぐに終わる」
八戒の抵抗もあっさり交わし、侵入させた手で八戒の胸の突起を刺激する。
そして、もう片手を浴衣の裾の合わせ目から侵入させる。
「や…ん…そんな…それに…」
時間的な問題だけでなく、行為後の熱の引ききらない体で夕飯に行くことになる…。この宿の夕飯は各部屋ではなく、食堂でなのだ。
そんな姿を悟浄や悟空に見られるのは嫌だ…。
そんな八戒の心情を読みとってか、三蔵は優しく八戒の頬に口付ける。
「行為で熱を持っている体も、温泉で熱を持っている体も見た目的にはほとんどかわらん」
「…………」
それは八戒を安心させるために言った…と思いたいが…あまり助けにはなっていない…。
「それに…」
「や…んん…」
突然、三蔵が八戒の中心に触れる。
八戒のソコはもうすっかり反応を示していた。
「ここをこんなにしている方が問題なんじゃないか?」
そのまま軽く上下に動かす。
「や…やめ…ん…」
「このままだと服が汚れるな」
三蔵は八戒の下着だけを脱がし、浴衣の下を腰のあたりまで捲り上げる。
「な…何をするんですか…さんぞ…」
「言っただろ、このままだと服が汚れるからな」
「や…んん…あ……」
三蔵が手の動きを早めると八戒は三蔵の手の中に己を吐き出す。
「…は…だったら…まだ…ん」
全部脱いだ方がマシであると荒く息を付きながら三蔵に抗議しようとするが、全てを言い終わる前に唇を三蔵の唇でふさがれる。
「せっかくお前に似合っているからな、この浴衣」
そう言い、もう一度八戒の唇に触れる。
「…三蔵……」
そう言われてしまったら、八戒とてもう何も言い返せなくなる。
こういうときにそんなことを言うのは反則だと思う。
…何も抵抗できなくなってしまうから…。
「や…ん…ちょっと…」
後ろに指が侵入してくる感触で八戒は我に返る。
流されないようにしようと思いつつも、気が付けばすぐに流されてしまう…。
自分は三蔵に弱い…と思う。
特にこういう時は…。
「…八戒…挿れるぞ…」
いままで後ろを解していた指が抜かれ、代わりに三蔵のモノが押しあてられる。
「…え…さんぞ…」
「汚れないように浴衣の裾…持ってろよ…」
三蔵に触れそうとした手に浴衣の裾を持たされる。
え…?と考えている間に、三蔵は八戒の中にその身を進ませる。
「ん…あぁ…さんぞ…あ…」
座っている三蔵の上に八戒が乗っている形だが、浴衣の裾を持っているせいで両手が塞がっているので自分では上手くバランスが取れない。
不安定な感じに体に力が入ってしまい八戒は掴んだ浴衣の裾をぎゅっと握りしめる。
「八戒…ちゃんと支えているから…力を抜け…」
「ん…さんぞ…あああ…」
八戒は大きく身を震わせ、頂点に達する。
また、それと同時に三蔵も八戒の中に己を放った…。



「…結局…この浴衣、もう着れませんよ…」
汚れないように…と掴んでいた浴衣の裾は八戒が握りしめていたため、大きく皺が入っている。
「あぁ…そこにもう一枚あったぞ」
「………」
なら始めにそう言って欲しい…と八戒は心の中で言う。
実際に言ったところで無駄なので言わないが…。
「それにせっかくお風呂に入ったのに…」
八戒の体は汗でベタベタになっている。
これではごまかすのは難しい。
おまけに三蔵が中に出したせいで……。
「とりあえず、シャワーでも浴びておけ。食事から戻ったら一緒に温泉に行くぞ」
「…はい……」
そう答えながら八戒は、何かまた嫌な寒気を感じる。
……まさかね…

─── この予感がはずれますように…
(注訳:三蔵が温泉でHとか言い出しませんように)

 

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