Star vicino Op.3
Star vicino al bell'idol che s'ama,
e il piu vago diletto d'a
mor!
Star lontan da colei che si brama,
e d'amor il piu mesto dolor!
とある街に着いた三蔵一行は、体を休める為にさっそく宿を取った。
「今日はツインが2つです」
チェックインをすました八戒がカギを2つもって戻ってくる。
「じゃあ、今日俺、八戒とがいい」
そういって悟空が八戒にじゃれつく。
悟浄はそんな悟空の襟首をつかむと“ぽい”っとほかる。
「馬鹿、お前と同室じゃ八戒が寝不足になるだろ。運転手が寝不足じゃアブねーつーの」
だから俺と…と悟浄は八戒にからむ。
「ズッけーよ。最近悟浄ずっと八戒と同室じゃん!」
そんな2人の様子を見ながら八戒はふぅとため息をつく。
「八戒は誰と同室がいいの?」
悟空のその言葉に八戒はドキッとする。
「え…僕ですか…?」
自分が本当は同室になりたいのは…と思いつつ窓に目を向ける。
そこには興味なさそうに窓の外を見ながらタバコを吸っている三蔵の姿。
胸が小さく痛んだ。
それをごまかすように笑顔をつくると
「僕は誰と同室でもかまいませんよ」
と言う。
それを聞いた悟空と悟浄はまたぎゃあぎゃあと言い争う。
「出かけてくる」
三蔵はそう言いすてると、吸っていたタバコを灰皿でつぶし部屋を出ていく。
そんな三蔵の後ろ姿を見て、八戒の胸がまた痛む。
一番の喜びは愛する人の側にいること。
一番つらい事は熱望する人から離れていること。
ただ少し離れている事が、これまでもつらい事かと八戒は思う。
「八戒、お前が選べよ」
悟浄の声で八戒は我にかえる。
三蔵が出ていってからかれこれ一時間ほどたっていた。
あれから、カードだ腕ずもうだ、なんだかんだと勝負していた悟浄と悟空だったが、どうやら決着はつかなかったらしい。
「うーん…そーですねー…」
突然話をふられて八戒は困り少し考える。
そして思い立ったように“ぽん”と手を打つ。
「じゃあこうしましょう。街に入るとき手前の森にクリスマスローズが咲いていたんですよ。それを先に取ってきた方と同室ということでいかがですか?」
八戒のその提案に悟浄と悟空が顔を見合わせ、うなずく。
走るように宿を出ようとした時、三蔵が戻ってきた。
手に赤い花をもって。
「…三蔵、その花…」
驚く八戒にその花を渡す。
「…えっと…じゃあ今日は僕と三蔵、悟浄と悟空という事で」
イカサマだ!八百長だ!といわれつつ、とりあえず部屋に入る。
「どうしてこの花を僕に?」
三蔵に渡されたクリスマスローズを花瓶に入れながら八戒が問う。
「お前がこの花をみてたのが気になったからだ。それに…」
照れくさそうに視線をはずしながら言う。
「それに…?」
八戒は驚きを隠せないまま続きを促す。
「なんか、その花がお前とダブってみえたんだよ」
三蔵は八戒の腕をつかむと引き寄せ抱きしめる。
「悩みがあるなら言え」
「……」
そこまで見抜かれていたかと思う。
三蔵とのわずかな距離が不安だった。
うつむく様に咲いていた花がまるで自分のようだと思えた。
でも、そんなわずかな行動に気付いてくれたことが嬉しかった。
八戒は三蔵の背中に腕をまわす。
そうしてゆっくりと口付けをかわす。
もう不安はない。
クリスマスローズの花言葉
─────── 不安をとりのぞいて下さい
END
とらわれの姫君Yからのリク「悟浄と悟空による八戒争奪戦で勝手にやってろっぽくみえた三蔵に最後かっさわれる」デシタ。
ラブコメ(死語)してみました。
今回ネタを考えてから該当しそうな花を探しました。←よいこは絶対まねをしない
普通逆ですね。おかげで最初考えてた話から、微妙にズレました。
今回タイトルはイタリア歌曲より。意味は「側にいることは」です。
タイトルもすでに苦しいです。