朝の新聞 Op24 ー改訂版ー

 





「……ふう……」
 とあるアパートの前で一人の青年がため息をついていた。
 彼の名前は猪八戒。
 半年ほど前に上京してきたのだが……。
 もともとは新聞配達のつもりで入ったバイトだが、いつの間にか勧誘の方に回されていた……。
 世の中恐ろしいものである……。
 八戒は、いかにも野郎の一人暮らしの多そうなアパートを見て再びため息をつく。
 今日も契約を取れなかったら、おそらくクビだろう。 
 まあ、それはそれでいいのだが、問題はいままでの分の給料も払われないかもしれない…ということである。
 それはちょっと……というか大変困るのである。
 八戒は重い足を引きずりながら一段一段階段を上がった。

 
 
「沙悟浄さん……か」 
 八戒はとある一室の前で表札を見上げる。 
 怖い人じゃなければいいけど……と思いつつチャイムを鳴らす。
「はいはい」
 しばらくして中から一人の男が出てくる。
 煙草を吸いながら出てきたその男は、肩より少し下の長さの紅い髪、そしてカラコンなのか瞳も同じ色をしていた。
 ……バンド系の人なんでしょうか……。
 その時点で八戒は既に、帰りたい、と思っていた。
「俺の部屋に何か用?」
「…あ…あの…○○新聞ですけど……あの……その……」
 八戒はあわててしどろもどろになってしまう。
「勧誘?」
「え…あ、はい…」
 悟浄は慌てている八戒の様子がかわいくて軽く笑う。
「ま、立ち話も何だから中入れば?」
 悟浄は八戒の腕を引き、強引に部屋の中へ入れると鍵を閉める。
「…ちょ…何をするんですか!」
 八戒はいきなり床へと押し倒される。
「何って……決まってんだろ?
 アンタ可愛いな」
 両腕を片手で押さえられ、もう片手で上着のボタンがはずされる。
「……や…やめ……誰か……」
 ジタバタと抵抗する八戒に深く口づける。
 声を上げている最中だったので八戒の口内へと悟浄の舌が容易に入り込む。
「…ん……んん……」
 悟浄が慣れた様子で八戒の口内を犯していく。
「んん…ん……はっ…」
 ようやく悟浄の唇が離れた時には、八戒の顔は紅く染まり瞳にうっすらと涙が溜まっていた。
「どう?俺って上手だろ?満足させてやるぜ。」
 八戒の首筋に唇を落とし、上着を少しづつ脱がせながら唇を移動させていく。
「や……誰か…」
「このアパートの奴らほとんどいねえぜ。ま、いたとしても聞き耳たてるぐらいしかしないんじゃない?」
 胸の突起を甘噛みし、手を八戒の下半身へとのばす。
「なんだかんだいって感じてんじゃん。」
 ズボンの上からそっと撫で上げる。
「俺のテクそんなにイイ?それともまんざらでもないってコトかな?」
「そんなッ。ん……やぁ……」
 八戒が瞳に涙を浮かべ必死に否定しようとするが、与えられる刺激に思考がまとまらなくなっていく。
 抵抗が少なくなったのを感じ取ると、悟浄は八戒のズボンを下着ごと取り去る。
「たっぷりとかわいがってやるよ。」
 八戒の中心を掴み、直に刺激を与える。
「…あ…や……仕…事が……」
 八戒が半ばうわごとのように呟く。
「…へぇ……、じゃ急いでやるよ。」
 八戒の後ろへローションを塗ると、慣らしもせず己のモノをつきあてる。
「…や…やめて…あああああああぁ…」
 抵抗する八戒を押さえつけると一気にその身を進めた。




「いつまで泣いてんだよ。」
 突っ伏して泣いている八戒の横で悟浄は煙草に火をつける。
 八戒から返事はなく、ただ泣き声だけが部屋に響く。
「ほら、三ヶ月契約に判押してやったぞ。」
 悟浄は八戒の目の前に契約書を投げる。
 八戒は涙目のまま悟浄を睨み上げ、衣服を素早く身につけると契約書を掴み部屋を出る。

 八戒はアパートの前でしゃがみ込む
 止められない涙が次から次へと流れ落ちた……。





 ------------ 数ヶ月後
 一つのアパートの前に八戒の姿があった。
 ゆっくりと端の一部屋へと向かう。
 表札には『玄奘三蔵』と書かれている。
 八戒は小さく息を吸うとチャイムを鳴らす。
 ややあって中から不機嫌そうな金髪の青年が出てくる。
「何の用だ。」
「○○新聞の者ですが」
 にっこり笑う八戒。
「いらん。帰れ。」
「話だけでも聞いていただけませんか?」
「帰れ。」
 尚も食い下がるが短く言い切られる。
 八戒は少しうつむくと上目遣いに三蔵を見上げる。
「……今、三ヶ月以上ご契約頂きますと、僕がサービスしますけど……」
 ゆっくりとシャツのボタンをはずしていく。
 八戒の白い肌がちらちらと見える。
「中で話の方聞いて頂けませんか?」
「…………」


 八戒は服の前をはだけさせると三蔵の手を掴み自分の胸元へと引き寄せる。
「最近ではこういう勧誘の仕方をしてんのか?」
 三蔵の言葉に八戒は小さく笑う。
「ええ…まあ僕のオリジナルですけどね」
 八戒は三蔵のベルトを緩めズボンをずらすとソコに顔を埋める。
 そして何の迷いもなく三蔵のモノに舌を這わせる。
 ゆっくりとそれを口に含み三蔵の熱を高めていく。
「ん……んん……」
 時折誘うように三蔵を見上げる。
「…くっ……」
 三蔵の限界が近いのを悟ると八戒はそこから口を離し、手で三蔵の根本を締める。
「ここから先は契約書に判を貰ってからになるんですけど」
 八戒はそう言いにっこりと笑う。
「…そう言う事か…。
 それで俺が素直に判を押すとでも思っているのか?」
 強気でそう言う三蔵に八戒はふふっと笑い着ている服をすべて脱ぎ落とす。
 そして三蔵の上に跨ぐようにする。
「僕の此処…試してみたいと思いませんか?」
 そう言い、根本を締めたまま少しだけその身を沈める。
「どうです?」
 そして誘う様にもう一度三蔵の目を見る。
「……ちっ…分かった。
 印鑑はそこの引き出しの三番目だ……」
 三蔵は諦めたようにそうつぶやく。
「ありがとうございます」
 八戒は手慣れた様子で印鑑を取り出し契約書に三ヶ月分判を押す。
「契約、ありがとうございました…」
 八戒はそう言い軽く口づけをすると三蔵の上にその身を深く降ろした。


 八戒は身支度を整えると判の押された契約書を鞄の中へと仕舞う。
「それでは、また三ヶ月後にお伺いします。」
 八戒はにっこりと微笑むとその部屋を後にした。



 こうして彼は、人一倍契約を取るバイトととして後に社員へと昇格した。
 
 転んでもタダでは起きない男、猪八戒。
 彼が世界を征する日も……近い?


   


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