三文オペラ Op157
「え、一週間も留守にするんですか?」
突然の悟浄の言葉に八戒はそう返す。
「ま、めずらしいデッカイ仕事だからさー…。
寂しい?」
「寂しいに決まってるしゃないですか。
明日から一週間だなんて……それもこんな急に……」
ラブラブ状態の二人にとって一週間という時間は地獄のようだ。
「でも、仕方がないですからね……」
八戒は渋々という感じにそう言う。
そしてそっと悟浄の耳元に唇を寄せて囁く。
「そのかわり、今日は………ねv」
「ああ……」
いつもよりも荒い息づかいと甘い声が寝室に響く。
時間はもう夜中というよりも明け方に近かった。
「あ…あぁぁっ……」
八戒は甲高い声を上げて悟浄の上に崩れる。
そのまま悟浄の首に腕を回し、肩口にそっと口づける。
「そろそろ寝るか?」
「ん……もう一回……。
ね……悟浄……」
八戒は甘くそう囁く。
「おいおい……。
俺明日はやいんだけど」
悟浄は苦笑しながらそう言う。
しかしそう言いながら、再び汗で湿った八戒の肌に指を這わせる。
それだけで八戒はまた熱を帯び始める。
「いつからこんな淫乱になっちまったんだ?八戒さんは」
からかう様に言う悟浄に八戒は少し恥ずかしそうに目を伏せる。
それでも直ぐに、そんな事を言う悟浄の唇を自分の唇で塞ぐ。
「もう…貴方のせいですよ。
僕がこんな風になってしまったのは」
「俺のせい?
じゃ、責任とんなきゃな」
言葉と同時に悟浄は自分自身を八戒に突き立てる。
「あぁぁ……当たり前……です。
責任……ちゃんと…んん……とってくださいね……」
その夜は、部屋がうっすら明るくなるまで甘い声が絶える事は無かった。
「いってらっしゃい」
八戒は少し悲しそうな笑顔で言い、悟浄に口づける。
『いってらっしゃいのキス』よりも深いキスを交わし、名残惜しそうに唇を離す。
「じゃあ、いってくるから」
「はい……」
悟浄は八戒に手を振り、歩き出す。
しかし数歩で歩みを止める。
「あのさ、八戒……」
「はい……」
「手、離してくんない?」
無意識に悟浄の上着の裾を掴んでいた八戒は、自分の手に気づいて慌てて離す。
「あ、ごめんなさい……」
たった一週間だというのに……。
少しも離れていたくない。
「八戒、一週間なんてすぐだよ。
電話するし……だから、な」
「はい……分かっています……」
頭では分かっているのに……。
それでも悟浄と離れたくないという気持ちは止められない。
「いってらっしゃい……悟浄……」
そんな気持ちを無理矢理押し込めて、八戒はもう一度そう言う。
「ああ、いってくるよ」
泣きそうな目をしている八戒の瞼に、悟浄はそっと口づけて家を離れた。
「はあ……」
八戒は掃除の手を止めて溜息を吐く。
朝から何回目か覚えていない程の溜息を……。
悟浄がでて、まだ数日しかたっていないのに。
それでも直ぐに悟浄の事を考えて……そして目の前にいない事を感じて溜息を漏らす。
「こんなに溜息ばっかりしてたら、幸せ逃げちゃいますね……」
小さくそう呟いて、そしてまた溜息を漏らす。
なるべく悟浄の事を考えないようにと、八戒は暇が無いぐらいに動き続けた。
といっても専業主婦状態の八戒には仕事と呼べるようなしごともなく……。
ただ家中を磨き続けていた。
無心にと磨き続けた部屋は、元々綺麗だったのに更に磨いた事でぴかぴかになっていた。
それはいいのだが、このままでは掃除をする場所すらなくなってしまいそうだった。
八戒一人では、部屋が汚れていくこともないし、洗濯物が溜まることもない。
料理を作るにも、自分一人分では凝ったモノをつくる気にもならない。
そうすれば必然的に買い物に行く用事すらない……。
何もする事が無くなってしまい暇な時間が訪れる。
そうすれば……考えてしまう。
……悟浄の事を……。
「はぁ……」
八戒は悩ましげに溜息を吐き、自分の体を抱きしめる。
それは寂しさを紛らわせる為に無意識に取った行動だった。
が、その抱きしめた自分の腕の感触に体が震えた。
「悟浄……」
思わず声が漏れる。
自分の腕なのに……まるで悟浄に抱かれているかのような気持ちになる。
たった数日だというのに……こんなにも自分の体は悟浄を求めている……?
「ん……」
八戒は自分の腕を、いつも悟浄がしているように動かす。
ウエストラインをなぞるようにそっと動かす手のひら。
それは、決して激しいものではなく……少しずつ八戒の中の熱を高めていく。
駄目と思いながらも、次第に手を止める事が出来なくなる。
まだ昼の……それも居間で……。
頭ではそう考えても、自分の中の熱を止める事はできない。
「はぁ……」
八戒は深く息を吐いて、自分の上着に手を掛ける。
布越しの感触がもどかしく感じられ、上着のボタンを外し隙間から手を差し込む。
手が直接の肌に触れた瞬間、体がビクッと揺れ熱が更に高まっていく。
「あ……ごじょ………」
囁く様にそう言い、今度はベルトを外しズボンと下着を一気に取り払う。
もう恥ずかしいなどと考えている余裕は無かった。
どうせ誰も見てはいない。
そう思い、八戒は足を開き自分の中心に手を伸ばす。
「あ……ん…んん……」
自分の手で擦りあげる度に甘い声が漏れる。
目を閉じ、瞼の裏に悟浄の顔を映し一心に自慰を続ける。
その時……
「キュッ?」
八戒の耳に入った鳴き声に、慌てて目を開ける。
そこには自分を不思議そうに見つめるジープの姿が……。
「ジ……ジープ……」
八戒は慌てて自分の脱ぎ捨てた服を集め、体を隠す。
「キュ?キュ〜?」
「な…なんでもないですよ、ジープ……」
そう誤魔化そうと笑う八戒の肩にジープはちょこんと留まる。
そして舌で八戒の頬を舐める。
「あっ……」
いつもジープが八戒に甘えて取る行動。
でも先程まで熱を溜めて、更にまだその熱を解放出来ていない体はそんなジープの舌に感じ思わず声があがってしまう。
「キュ〜」
「ジープ……」
八戒は少し考えて、立上がる。
そして台所へと向かった……。
八戒は冷蔵庫を開けて、まだ封を切って間もないバターを取り出す。
それを自分の中心、……そして秘められた蕾へと塗りつけていく。
冷たいバターは直ぐに体温で溶け、部屋にバター独特の香りが広がる。
「ジープ……」
八戒はいつもよりも甘い声でジープを呼ぶ。
それは……いつも悟浄との情事の時の様な熱をもっと声。
いつもとは違う感じの声で呼びかけられたジープは首をかしげながら八戒へと近づく。
そのジープを指先でそっと撫で、自分の中心へと近づける。
そして、ねだるようにジープに囁く。
「……舐めて……」
ジープの舌が八戒の中心に塗られたバターをそっとなめ取っていく。
ザラザラとした舌の感触……。
暖かさも、しっとりと濡れた感触も感じられるけど、それは悟浄のモノではない。
それでもジープの舌の感触に八戒の中心が感じ始める。
「あ…やぁ……」
甘い声が次々に八戒の唇から漏れる。
ジープの細い舌が八戒の中心に塗られたバターをなめ取る度に、そこはビクッと揺れ…バターでないモノが八戒を濡らしていく。
「や…あ……ごじょ……」
更にジープの舌がまだ閉じられている八戒の蕾へと移る。
細い舌が閉じた蕾をこじ開け、中へと進んでいく。
「あ……あぁ……」
こじ開けられる感触に思わず八戒の腰が浮く。
「もっと……もっと奥に……」
思わず八戒の唇からそんな言葉が漏れる。
それでもジープの舌では、表面を煽るだけで精一杯で八戒は絶えきれないもどかしさに、掃除途中で放っていた箒を手に取る。
そして箒の柄を舌で舐め濡らす。
「あぁ……ごじょ……早く……」
そう呟き、八戒は箒の柄を自分の中へと一気に押し込める。
「あぁぁぁぁ……」
固い箒の柄は八戒の奥まで一気に突き上げられる。
そのまま八戒は勢いよく、柄を動かし続けた。
「ん…やぁ…ごじょ……もっと……」
悟浄の名前を何度も呼び、奥まで突き上げる。
それと同時にジープの舌が八戒の中心を舐めあげる。
「あ…だめ…や……あぁぁぁ…」
ジープの舌が先端をつつくように舐めあげた瞬間、八戒は絶頂を迎えた……。
部屋に電話の音が響く。
「はい……」
『あ、八戒?
俺だけど』
「悟浄?」
『別に用事ってほどじゃないけど、ちょっと仕事一段落してさ。
お前の声が聞きたくなってさ。
……あれ?なんか声おかしくねえ?』
「そうです…か……?」
『風邪引いたりしてねえ?』
「大丈夫ですよ……ん……」
『本当か?』
「ええ……。
ねえ…ごじょ……」
『ん?』
「はやく……はやく帰ってきて……」