ヘ調のワルツ Op117


ギャンブラー悟浄さんは、最近お金を貯めている…。
今までお金を稼いでも、そのほとんどがその日の飲み代に消えていたのだが。
最近では、女に酒をおごったりもしないし、自分の飲む量も控えている。

倹約家(?)である三蔵さんは、最近一層節約をしている。
最近では酒・煙草の量まで減らしている…。

二人がそんな事をしてお金を貯めている理由……。
それは………。

9月21日、八戒ちゃんの誕生日の誕生日だからである。
ここは、お互い相手よりも良いものをあげて八戒ちゃんに
『あいがとv』
と、ほっぺちゅーの一つぐらいいただきたい。
そんな煩悩にまみれた考えであった……。



〈悟浄さんの場合〉
「悟浄…まだ考えてるの?」
かれこれ一時間おもちゃ選びに付き合わされているA子さんはそう呟く。
ちょっとおもちゃが見たい…、そう悟浄がいうのでおもちゃ屋に入ったのは一時間以上前だろう。
それからずっと悟浄は真剣におもちゃとにらめっこしている。
それも…幼児用のおもちゃと。
「悟浄…?」
その様子はあまりに真剣すぎて、かえってあやしい…。
「なあ、二歳ぐらいの子が欲しがるのってどんなだ?」
悟浄は真剣な目でそう問う。
「に…二歳…?
 そうねえ、……ぬいぐるみ…とか…?」
戸惑いながらそう答えると、悟浄はそのまま無言でぬいぐるみコーナーに移動し、また真剣にぬいぐるみを一つずつ手にとって考え始める。
何度も何度もぬいぐるみを見比べ、その中の一つを掴む。
「それにするの?かわいいじゃない。
 きっと喜ぶわよ」
やっと決めた悟浄にA子さんはほっと息を吐く。
しかし……。
「…悟浄………?」
今度は同じぬいぐるみを見比べる。
「どれが一番可愛いと思う?」
これまた真剣にぬいぐるみの顔を見比べる悟浄を、A子さんは未確認生物でも見るかのように見守った……。



〈三蔵さんの場合〉
「あの…お客様、何かお探しでしょうか……」
本屋の絵本コーナーで一冊ずつにらみつけるようにする三蔵に店員は恐る恐る声を掛ける。
しかし、三蔵は店員の言葉には耳を貸さず、黙々と本を選ぶ。
その殺気立つ程真剣な様子に横に居た子供が固まっていた。
「あの……お客様………?」
慌てうろたえる店員と、それを何も気に掛けない坊主。
そしてその横で泣き始める幼児。
そんな奇妙な光景がうららかな昼の本屋で目撃された……。



『八戒、誕生日おめでとう!』
大きなケーキを目の前にそう言われ、八戒ちゃんはにっこりと微笑む。
その笑顔にノックアウトしそうになるのを二人は必死で堪えた。
「八戒、コレ俺からのプレゼントね」
そう言って悟浄は可愛らしいピンクの包み紙にくるまれたプレゼントを八戒ちゃんの手の上にのせる。
それを八戒ちゃんは小さな手で一生懸命開ける。
「ぶーしゃん!」
中から出てきたのは、目つきが悪い所がとっても可愛いブタのぬいぐるみ。
八戒ちゃんはソレをぎゅっと抱きしめる。
「気に入ったか?」
「んー」
悟浄の目の前で微笑む八戒ちゃんの手から三蔵はそのブタを取り上げる。
「そんなモノよりも、コレは俺からだ」
代わりに水色の包み紙に包まれたモノを八戒ちゃんの手の中に置く。
八戒ちゃんは不思議そうな顔をしながらもそれを開く。
「ごほんだ…」
それは八戒ちゃんの好きな絵本の続編だった。
その表紙を見つめながら八戒ちゃんは目を輝かせる。
「気に入ったか?」
「んー」
今度は三蔵に向かって微笑む。

「…で、八戒」
そう言って三蔵と悟浄はお互いにらみ合う。
「どっちのプレゼントが気に入った?」
「う?」
八戒ちゃんは首をかしげると、ぬいぐるみと絵本を交互に見る。
その様子を見ながら悟浄と三蔵には緊張が走る。
果たして八戒ちゃんはどっちのプレゼントを選ぶのだろうか。
絶対に負けたくはない……。
「んー…」
八戒ちゃんは少し考えると顔を上げる。

「んー、どっちもすき。
 あいがと、ごじょ、さんぞ」
そう言い微笑むと悟浄と三蔵の頬にそっとキスをする。
「……………」
八戒ちゃんの小さな唇が触れた頬をそっと手で押さえて、お互い顔を見合わせる。
…自分を選んだ訳ではないが……まあ、これはこれで良いとしよう。

「次の勝負はクリスマスだな……」





ギリギリになってしまいましたが誕生日企画SSです。
今回は子豚ネタで。
悟浄×八戒版は、23日のオンリーアンソロに載っていると思われますので、興味のある方はどうぞ(笑)
なんか、なんだかな出来ですいません。
子豚の別の話も近いうちにアップ出来たら、と思っています。
(P・S タイトルの『ヘ調』はへたれの『へ』です・笑)


2002年版の八戒さんBDSSです。
子豚に逃げてたね……。
ちなみにこの続きなるものを悟浄のBDに書こうかと思ったら、某闇管に『またブタ?』みたいな事をいわれて流れました。
その後普通に悟浄BD書いたのか、それすら流れたか…記憶にないです



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