八戒お誕生日企画(悟空編)
その日は朝から奇怪な音が鳴り響いていた。
ガシャーン、バキバキ……ドカンッ。
その音が発生している場所は……台所。
その扉には書き殴った文字で
『立入禁止』
と書いた紙が貼ってあった。
その扉のスキマからは、いや〜な色をしたケムリが漏れていた……。
「八戒、八戒」
手を後ろにまわして嬉しそうに走ってくる悟空。
「どうしたんですか?」
八戒がにっこり笑って聞き返すと、悟空は後ろにまわしていた手を前に出す。
「はっぴーばーすでぃ、八戒」
悟空の手の上には……得体の知れない物体。
───── ……何物?
と、凍り付く悟浄と三蔵。
「うまくできなかったけど……ケーキ焼いたんだ」
───── ケーキだったのか……。
悟浄と三蔵の頬を汗が伝う。
まるこげで、とても円形には見えない物に、最初は白かったかもしれない灰色のクリームが雪崩を起こしたかのようにのっている。
その上に、あちらこちらを向いているつぶれた苺。
「ありがとうございます。とってもおいしそうですよ」
───── マジでか?
そのケーキらしき物体を見ているだけで、気分が悪くなってくる悟浄と三蔵。
「あと、これプレゼント」
照れながら筒状に巻いてある紙を渡す。
「ありがとうございます。何ですか?」
八戒はクルクルとその紙を広げる。
そこに描かれているのは………。
───── 何者!?
小学校低学年レベルの落書きのような絵……。
「俺…金持ってないから……八戒を描いたんだけど……」
───── 八戒だったのか………。
「とっても嬉しいですよ。大切にしますね」
へへっと照れたように笑う悟空。
「あ、ケーキ食べてみてよ」いそいそとケーキを切り分け八戒の前に置く。
───── 食えるのか?
「いただきます」
一口そのケーキを食べる。
ごしゃ、ごしゃ、ごしゃ、ごしゃ……。
───── イヤな音してるぅ……。
「とってもおいしいですよ」
おそらくすごい味であっただろうケーキを笑顔で食べる八戒。
───── やはり母は強いな。
と思う悟浄と三蔵であった。
END
母子チックな誕生日話デス。
……何も語るまい……。
いやホント…何も語れません……