あぶない刑事
ABUNAI DEKA
企画から半年、綿密な準備をへて、タイトルも
「あぶない刑事」に改められる。
1986年10月5日、記念すべき第1話がオンエア。
第1回目の視聴率は14.4%(ビデオリサーチ)
ナイーブかつワイルドという、アンビバレンツな魅力でアクションスターとしての
可能性を感じさせ、成長しつつあった舘ひろしと、数々のテレビシリーズで「軽さ」を身上としたコミカルなアクションで活躍していた柴田恭兵とのコンビは、
終焉を迎えつつあった「太陽にほえろ!」時代にとってかわる
新たな刑事ドラマの誕生を予感させた。
「あぶない刑事」オリジナル・サウンド・トラックより
「Want You Back Again」
「刑事ワイルド&ルーズ」には、それまでの刑事ドラマの通念を打ち破る要素が盛り込まれていた。
主演には当初から、舘ひろしと柴田恭兵さらに浅野温子、「ビーバップハイスクール」でデビューし人気爆発の
仲村トオルが想定されており、そのキャスティングの段階で成功が約束されていたといえるだろう。
2つのテレビシリーズ、6本の劇場用映画、そしてテレビスペシャルとして、ブラウン管やスクリーンに登場。
ダンディでセクシー、シリアスかと思えばコミカル・・・
見るものを惹きつけずにはいられないタカとユージの活躍が続いているのはファンとしてはうれしいこと。
最初のテレビシリーズから13年後に映画「あぶない刑事フォーエバー」としてが帰ってきたのも、ファンの
熱い熱い期待に後押しされてのこと。この作品で、テレビシリーズを知らない世代までをも巻き込み、ファンが拡大。
そしてさらなる映画作品「まだまだあぶない刑事」製作へと進んでいく。
テレビシリーズも、今尚再放送を心待ちにされるほど、あぶない刑事は、いや、タカとユージは
時代を超えて私たちを惹きつけている。
神話
8月28日の「金曜ロードショー」の枠で「あぶない刑事フォーエバー TVスペシャル’98」が放映された。
ユニークなのは、2時間枠のテレビ編でいったん解決したと思われた事件が意外な展開を見せて、
9月12日公開の映画第5作「あぶない刑事フォーエバー THE MOVIE]のオープニングにつながってくる。
テレビスペシャルが第一部で映画が第二部という構成が、いかにもテレビと映画をフィールドにして
自由に暴れてきた「あぶない刑事」ならではといえるだろう。
TVスペシャルは、昔の雰囲気を色濃く漂わし、映画は派手なシーンを多様するといった対比もみられた。
この作品のラストシーンは、あぶない刑事シリーズが「完全に終結した」と思わせるものだった。
2005年3月17日に公開された「まだまだあぶない刑事」
ファンの熱い要望に答えたということは、当然のことながら、
前作公開時に、主演の舘氏、柴田氏が、
年齢を重ねたあぶ刑事をみせたい
という話を真剣にしていたことも、第6作目製作の決定要因となったようだ。
物語は前作「あぶない刑事フォーエヴァー」から7年後、
死んだはずの“タカ”と“ユージ”が手錠をはめられ、
港署に連行されるところから始まる。
映画公開の年年は、シリーズ開始20年目の節目の年であったため、DVDにも映像特典や豪華ブックレットがつき、その他関連グッズはもちろん、過去20年のテレビシリーズ、映画の名場面フォト集「あぶない刑事SCRAPBOOK」や、サウンドトラックのコンプリートボックスなど、メモリアルグッズが多数発売された。
独特のテイストでテレビの刑事ドラマの枠を軽く乗り越えて、スクリーンへ飛び出し、さらには、ハリウッド映画ばりのスケールで、観客の度肝を抜くアクションと、おなじみのジョークを繰り広げるタカとユージの「あぶない刑事」シリーズは、日本映画を代表するシリーズの一つといっても過言ではない。
いつものキャラクターがお馴染みの活躍を見せる。
シリーズものでは当たり前のことだが、同じ俳優達が20年以上も変わらずに演じ続けるということはものすごいことだ。
タカとユージは成熟こそすれ、まったく成長していない。トオルも薫も松村課長も、スタートのときのままである。
それがシリーズ最大の魅力なのだろう。
しかし、それから7年後、第6作目となる「まだまだあぶない刑事」が製作されることが明らかになる。
それから2年、1998年
「テレビではじまる、映画でおわる」
という意味深なコピーで、日本テレビ開局45周年記念として
「あぶない刑事フォーエバー」プロジェクトがスタート。
オマタセ、ベイベー。イッツ・ショータイム。
「あぶない刑事」以降、さまざまな刑事ドラマが誕生してきたが、
この20年で今尚活躍しているのは、港署のタカ&ユージだけということが、
なによりも不滅の「あぶない刑事神話」を証明しているのだ。
1986年4月、それまでの刑事ものとは一線を画した、
いわば日本版マイアミバイスを目指して、舘ひろし、柴田恭兵、それに浅野温子を主演にした新番組
「刑事ワイルド&ルーズ」(仮題)を企画。
長谷部監督の提案で、横浜の管轄署を舞台にすることとなった。横浜といえば、日活出身の長谷部監督にとって思い出の地だったのかもしれない。
神奈川県警の所轄である港署を舞台に、捜査課の刑事、鷹山敏樹・通称タカ(舘ひろし)と、
相棒の大下勇次・通称ユージ(柴田恭兵)、その後輩の町田透・通称トオル(仲村トオル)が活躍する刑事ドラマだったが、ユニークなのは所轄署ゆえに捜査課の隣に少年課があること。少年課の課長、松村優子(木の実ナナ)と、やたら事件に首をつっこむ少年課刑事・真山薫(浅野温子)が色を添える。
捜査課の課長は、今までの頼もしいヒーローボスではなく、サラリーマン的な課長・近藤卓造(中条静夫)というのが
あぶない刑事のユニークな点といえるだろう。いつも部下達に「バカモン!」と怒鳴っている中間管理職の近藤課長の存在は「あぶない刑事」のリアリズムとなっている。
こうしたベストキャスティングを得て、「あぶない刑事」の視聴率は平均15%を記録。
最終回に向けて20%を越すほどの勢いを見せ、1年間51話に及ぶ人気シリーズになった。
番組終了2ヵ月後の87年12月12日には、
劇場版第一作「あぶない刑事」が公開された。
「太陽にほえろ!」、「特捜最前線」といった
ビッグヒットシリーズでも映画版が製作されることはなかった。これまでテレビの刑事モノで
映画化されたのは60年代の「特別機動捜査隊・東京駅に張り込め」以来のこと。
テレビシリーズとほぼ同じスタッフとキャストにて完成。
「あぶ刑事ファン」は、テレビシリーズファンのみならず映画版でさらに拡大。
88年7月2日には第二作が公開。88年10月にはテレビの第二シリーズ「もっとあぶない刑事」がスタート。
放映枠も日曜9時から日テレ刑事ドラマ黄金枠である金曜8時に移行され、
タカとユージの名コンビは再びブラウン管で大暴れする。
第二シリーズは全25話。
その「もっとあぶない刑事」が89年3月31日に終了して1ヵ月後の4月22日には
映画化第3弾「もっともあぶない刑事」が公開された。
テレビから映画へ、映画からテレビへ、さらに映画へと
「あぶない刑事」シリーズの展開はそれまでの刑事モノとは全く違う様相を呈している。
成長しないキャラクター。悲壮感とは全く無縁の軽快さ、軽さ、
カッコよさとなり、ファンの心を捉えてはなさないのだろう。
「あぶない刑事」シリーズは、テレビ、映画ともに繰り返し再放送され、新たなファンを生み続けている。
86年10月から89年4月にかけての間にテレビ2シリーズ、映画3本が製作された
「あぶない刑事」はいったん終了する。しかし、熱烈なファンによるテレビの再放送を望む声が日本テレビに殺到し、
映画版の最新作の製作を希望する声が後を絶たなかったと言う。
製作サイドが「あぶ刑事」の映画化第4弾製作を決定したのは、95年11月日本テレビ系の「金曜ロードショー」の枠で、「もっともあぶない刑事」が再々放映されたことに端を発する。裏番組は、人気絶頂のSMAPの木村拓哉とダウンタウンの浜田雅功によるドラマ「人生は上々だ」と、「未成年」を抑えて、20.2%の高視聴率(ビデオリサーチ)を獲得。
7年前の作品がこれだけの視聴率を記録したことに、不滅の「あぶ刑事」神話を実感した
日本テレビとセントラル・アーツのスタッフは映画化第4作の製作を決定。
こうして「あぶない刑事リターンズ」プロジェクトがスタートした。
7年の月日は、スタッフ、キャストにも微妙な変化を与えていた。
捜査課の「タヌキ」こと、近藤課長役の中条静夫氏が急逝。
重要なキャストの一人が亡くなった喪失感は大きかったが、
後任には東映映画には欠かせないベテラン俳優・小林稔侍を迎えている。
さらに俳優としてもベテランの域に入った
仲村トオル演じる町田透刑事も港署に赴任して約10年。
いつまでも先輩のパシリをしているわけにもいかず、ようやく後輩刑事が登場。
こうしてマイナーチェンジはしたものの、港署のメンバーはテレビシリーズ以来の
レギュラーが揃って、7年ぶりとは思えないチームワークを見せた。
「あぶない刑事リターンズ」は映画ならではの見所が満載で、タカとユージの
デンジャラスなアドベンチャーもハリウッド映画クラスとなってスケールアップした。