「最近、機嫌がいいよね」
部活中の手塚の様子を、不二は話し出した。
それに賛成するのは、レギュラー達。
「微妙なんだよな〜、何かあったのかにゃ」
「でも、他の人にはわからないだろうね」
身近にいるからその変化に気付く。
そのくらいの僅かな機嫌の変化だった。
「何、やってんスか」
遅刻の罰でグラウンドを走ってきたリョーマは、こそこそと内緒話をする先輩達の輪に混ざる。
まだ手塚はいないから、少しくらいは話していても平気だろう。
「最近の手塚を見てどう思う?」
不二はリョーマに先程までの会話の内容を話し、リョーマの意見を伺う。
「どうって至って真面目で面白くないって思うっス」
「越前らしい答えだね」
「本当にお前らしいよ」
「あ、手塚が来た」
手塚がコートに現れた事で、何事も無かったかのように散らばった。
まさか、自分と手塚が付き合っているなんて思わないだろう。
リョーマは誰にも見られないように、下を向いて笑い、渦中のの人物の元へ向かった。
「部長、俺と打ちませんか?」
「…あぁ」
「先輩達、不思議そうにしてたッスよ」
「…別に気にしない」
言葉の変わりにボールを打ち合う。
たとえば、心を覗けるメガネがあったら見てみたい。
きっと赤面するような想いが、胸一杯に溢れているに違いない。
でも、心の声は自分でも気付かない本音の声。
2人の恋は、ゆっくりとであるが、しっかりと育まれていくのだった。
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