立正大学経済学ゼミ報告 2002年11月7日

記録・コメント 矢沢国光

 午前・岩田先生

  テーマ:ブッシュの単独主義は何を意味するか

 

 ◇米中間選挙でのブッシュ共和党の勝利

 ブッシュ米国大統領は、中間選挙で共和党が大勝したので、国連安保理事会[米英仏露中の第二次大戦勝利5カ国が゜拒否権を持つ]にイラク攻撃の決定は制約されない、とする「単独主義」が加速された、といわれている。

 

 ◇戦後世界政治体制と国連

 第二次大戦後の世界は、米・西欧グループとソ連・中国グループの2大グループによる分割体制を結果した。

 米・西欧グループは、欧州でNATO軍事同盟を結成し、その極東版として日米安保体制を構築した。

 ソ連・中国グループは、欧州でワルシャワ軍事同盟を結成し、これに中国も結合する「ワルシャワ・中国体制」を構築した。

 米ソは核兵器・ミサイルを保有し、世界を軍事的に分割した。[米ソ冷戦体制]

 その後中ソ論争がエスカレートし、中ソ軍事同盟体制は崩壊し、アジアでは、ソ連=ベトナム・北朝鮮と中国の対立軸が形成された。

 共和党のニクソン=キッシンジャーは、ソ連影響力のアジアからの排除をねらって対中接近し、米中国交回復に走った。

 こうして、二大陣営による欧州分割とアジア分割を内実とする世界の軍事分割体制が成立し、これを枠組みとして、米欧日の世界経済体制が形成された。ドル体制、IMF、世界銀行、GATTがその「世界経済体制」である。

 

 ◇ソ連・東欧体制の崩壊

 ソ連・東欧体制は、ゴルバチョフによる改革によってもその政治的経済的破綻を阻止することはできず、崩壊の道を歩んだ。ソ連は、エリツィン大統領を経てプーチン体制に移行した。ソ連・東欧体制の崩壊の過程において、中国の影響も大であった。

 

 ◇米体制の行方

 戦後資本主義世界経済は、NATOと日米安保を基礎とする経済体制であり、経済的には、ドル・金体制であった。

 ところが、日欧(とくにドイツ)の経済発展によって、米国との経済バランスが崩れ、1971年ニクソン米大統領は「金・ドル交換停止」を宣言した。その結果、ドルは「変動相場制」へと移行したのであるが、同時にドルの(西ドイツ・マルクにたいする)暴落が起きた。このドル暴落の背景には、大陸欧州と東アジアの経済発展がある。

 ドル・金交換停止の直接の結果として、1973年第一次石油ショックが生じた。これは、金との交換性を断ったドル・インフレーションの一環である。

 

米国は、もはや経済的には「超大国」ではない。

 

   ◇米国・ブッシュの「単独行動主義」の意味するもの

 単独行動主義とは、言い換えれば戦後米国が主導して築いた「国連」の無視であり、米国が自ら築いた戦後体制を自ら壊し始めた、ということに他ならない。したがって、

    「ブッシュの単独行動主義は、戦後世界体制の幕引きである」

「米国の世界体制は、経済的な崩壊に続いて、政治的にも崩壊が始まった」

 ことを意味する。

 

 ◇その他各国の動向

 欧州においては、イギリス・ブレアのみが米国単独主義の応援団となっている[アングロ・サクソン体制]。英国においては、労働党が、

・伝統的な社会民主主義政策をとるか

・サッチャー路線を継承するか

が問われ、結局、ブレアの労働党はサッチャーの継承を選択した。

 

 大陸欧州(独・仏等)では、米体制への幻想から脱しつつある。

 これにたいして、日本の自民党政府は、未だ日米安保体制への依存を続けようとしており、米体制への幻想を抱き続けている。

  中国は、未来の経済超大国としての姿を現しつつあるが、自らの力の強大さについて無自覚であり、未だに自らを「途上国の代表」と位置づけている。

   日欧の経済界は、中国への進出を目指しており、中国国内市場の陣取り合戦が始まっている。

 

   ◇アジア再編の軸としての中国

 11月に行われたアジア太平洋会議において、中国はアセアン諸国に対して、共同市場形成を呼びかけている。

 中国はすでに家電生産においては世界一であるが、さらに、数年以内には、1000万台規模の自動車産業 ができようとしている。

 欧米はかつての力を失っており、中国がアジア経済の再編成、さらには、世界経済再編成の軸となりつつある。

 

   ◇ブッシュ=ブレア連合のイラク攻撃のねらいは何か?

 一つは、中近東の石油・エネルギー資源の掌握である。米国は、サウジアラビアの油田開発に注力してきたが、現在サウジアラビアへの支配が動揺している。そのため、イラクへの軍事的支配による中東石油への支配をねらっている。

 もう一つは、イスラエルの強硬派[シャロン首相+ネタニエフ元首相]とくむことである。

 

 ◇イラク攻撃の影響

 中世世界商業の主要なルートは、海上通商ルートであるが、商業の拡大とイスラム世界の拡大が重なっている。インドネシア、フィリピン、パキスタン等はイスラム圏である。米国は、イスラム圏に対する支配力を持っていない。

 もし米国がイラク攻撃に踏み切るならば、イスラム世界が激動する恐れがある。そしてそれはまた、欧州にも波及する可能性がある。

 これに対して、東アジアは、米・イスラム圏・欧州の激動の外にあり、その間にますます経済的に拡大する。

 

 ◇日米安保体制の意味

 北朝鮮が日米安保の仮想敵国のようにいわれているが、北朝鮮の核兵器・ミサイル(テポドン)は、ほとんど軍事的意味を持たない。

 米国にとつての「日米安保」は、対中国の取引のツールではないか。

 米国の共和党の伝統的な外交戦略は、現実的な利害計算外交であり、

  「中国とパートナーとなってアジアに力を持つ」

ということである。

 米国が中国と取り引きできるのはなぜか?

 中国が、看板は「社会主義」であるが、実際にはであり、米国として、中国資本主義と手を組む方が合理的だからである。

 

 ★矢沢のコメント

 岩田先生は、「ブッシュ米国の単独主義は、米国戦後支配体制の幕引きである」という。長期的に見ればその通りであろう。「単独主義」を米国の「強さ」ではなく「弱さ」の表れと見るのは、なるほど、という気がする。

 その上で、世界資本主義分析の課題として、次に問題となるのは何だろうか?

 一つは、アメリカ政治とアメリカ経済の関連である。イラク攻撃自体は、米経済にとって大きな負担となることが予想され、米国の株価・ドル通貨は、共に下がっている。だが、それにもかかわらずブッシュは「中間選挙勝利から大統領選再選へ」のために、減税の拡大[それは財政赤字拡大をもたらさざるを得ない]に向かっている。

 ブッシュは、経済的な困難の増大を覚悟の上の政治的支配力の強化−それによる欧州・日本等からの借金の継続・拡大の流入−という世界政策、いやむしろ「経済的な弱点を世界政治の支配力の挽回によってカバーする」という世界政策に向かっているのではないか。そうした米国の政治・経済政策に、欧州・日本がどこまでつきあっていけるか。

 もう一つは、岩田先生の指摘した「中東の石油」の重要性である。中東に限らず、石油・エネルギー資源の確保は各国産業の死活問題であり、世界政治の根底には、資源争奪戦があると思われる。世界政治を資源戦争という視点から洗い直す分析が必要ではないか。

 

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 午後・五味先生

  

 ◇戦後世界政治体制の崩壊[午前・岩田先生の補足]

 

 ◇資料 Financial Times

  Financial Times の記事は、次のサイトで読むことができる:http://news.ft.com

 

◇資料 日経金融新聞2002.11.5「加熱する中国不動産市場」

      マンションの空室率が大きくなっている。

 

11/6NHKテレビ  中国の家電量販店の競争

 家電量販店「国美」は、アフタサービスに年1回巡回。「蘚亭」は24時間態勢で注文・苦情処理し、カードによる顧客の囲い込み。


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