TECHNONET REPORT 2005.11


第14回ポリマー材料フォーラム (1)



2005年のポリマー材料フォーラムは,11月15日,16日 東京 タワーホール船堀(江戸川区)で開催された。

 高分子学会の4大行事のなかでも最も新しくスタートしたものであるが,本年ですでに14回の開催を迎えた。高分子材料は実用に直結した材料であり,その研究開発には産官学の連携が不可欠である。

 本年は以下の4セッションにわかれ,それぞれ招待講演とポスターセッションが行われた。なかでも,ポスターセッションは,研究発表だけでなく,新製品・新技術のPRの場でもある。材料開発から最終製品までの流れの中で,材料は様々な使われ方をするが,様々な領域の研究者,技術者とその場で直接交流できる意義は大きい。共同研究などきっかけとなることも期待される。

 Aセッション 環境対応・ライフサイエンス
 Bセッション 電気・光・情報材料
 Cセッション 高性能・高機能ポリマー材料
 Dセッション ポリマー材料の設計・加工・解析

ここでは,セッション別ではなく,独自のまとめかたで,ポスターセッションから注目研究を紹介することとしたい。

 第1回は以下の項目でまとめたものを紹介する。

・有機無機ハイブリッド
・エラストマーの新しい展開
光機能性ポリマーの新しい展開


<有機無機ハイブリッド>

 有機無機ハイブリッドにかかわる発表は年々増加している。高分子材料の機能化においてハイブリッドの手法は確立しつつあるとみてよい。最初に機能性微粒子の開発とハイブリッド技術の動向をいくつか紹介したい。

 綜研化学は機能性微粒子およびその応用技術の開発を盛んに行っており,今回のフォーラムにおいても多数の発表を行っているが,ここでは有機/無機ハイブリッドを応用した機能性微粒子などいくつかをとりあげる。

・チタン含有マクロモノマーを用いた単分散高屈折微粒子の合成 1PC06  

綜研化学 三澤毅秀 mizawa@soken-ce.co.jp

 重合性置換基を持つシランカップリング剤とチタンアルコキシドから調製したシランーチタン縮合物(マクロモノマー)を用い,MMA/IPA/水中で乳化重合により,ハイブリッドPMMA微粒子を得た。開始剤として過硫酸ナトリウム(KPS),乳化剤は度で知るベンゼンスルホン酸ナトリウム。75〜90℃の条件で重合を行った。

重合後に得られたハイブリッドPMMA微粒子は,真球状でかつ単分散性に優れている。最大の特徴は,ホモPMMA微粒子に比べ,最大反射波長がより高波長側にシフトしていることで,高屈折率を実現している。1.70程度と考えられ,光学用微粒子としての可能性が大きい。

・単分散顔料内包粒子の開発 1PC08 綜研化学 崔 英  saiei@soken-ce.co.jp

顔料内包微粒子というと何のことかよくわからないが,代表的なものとしてはトナーがある。ここでは,電子ペーパーや電子写真などの素子材料として,単分散のアクリル微粒子の開発を紹介。単分散PMMA粒子をシードにMMA-DVBの混合モノマーを棒順剤としシード重合で単分散多孔性PMMA粒子を作製。そこに顔料水分散体を入れ加熱し,加熱し,顔料吸着を行った。樹脂粒子への顔料吸着性は顔料分散剤の種類や顔料分散時の条件などに大きく依存するが,条件を上手に制御することで,多孔性微粒子の内部にも顔料を浸透させることができる。さらにハイブリタイザーを用いてメカノケミカル的に処理することで,顔料がしっかり樹脂に固定化された単分散顔料微粒子を得ることができた。酸化チタンを用いた白色微粒子,カーボンブラックを用いた黒色微粒子などを紹介。   なお,綜研化学のホームページは http://www.soken-ce.co.jp


・異方性ヘマタイト/シリコーンコアシェル粒子の合成と性質  コーセー 中出正人ら m-nakade@kese.co.jp

 コアシェル型粒子は,コア粒子そのもとのは異なる特性を示すことがあり,新しい機能材料設計の手法として注目されている。単分散回転楕円型へマタイト粒子を合成し,これにシランカップリング剤を反応させてシリコーンを被覆,コアシェル微粒子を得た。シリコーンの被覆は攪拌操作だけでなく,超音波照射による合成も試みた。
 このコアシェル粒子は強い疎水性を持ち,未処理のヘマタイト粒子に比べトルエンへの分散性が優れている。また,超音波照射により合成したサンプルは,攪拌合成したサンプルより粒子同士の凝集が低減していた。

・マクロアゾ重合開始剤を用いたコアシェル微粒子の合成,無機物との複合化 1PC26
    大阪府産技研 木本正樹ら kimoto@tri.pref.Osaka.jp

 ポリエチレングリコール(PEG)含有マクロアゾ重合開始剤(MAI)を用いMMAなどの重合を行いコアシェル微粒子の合成を行っている。得られたポリマー微粒子の分子量,分子量分布に及ぼすモノマー・MAI比の影響などを紹介。さらに得られたポリマー微粒子にテトラブトキシシランなどを用いて,有機無機複合微粒子を調製した。PEG層の外側にシリカ層を持つ複合微粒子で,焼成により中空シリカ微粒子が得られる。

有機・無機ハイブリッドは,微粒子,コーティングなどへの展開が多い。塗料,コーティングでは,かなり実用化も進んでおり,光硬化技術との組み合わせが注目ざれる。一方,成形材料への展開も始まっている。

・フェノール・シリカナノコンポジット材料の開発
 1PG31 アイシン化工 松澤 隆ら(愛知工業大学との共同発表)      
   t.matsuzawa@aisin-chem.co.jp

 ゾルーゲル法による有機・無機ハイブリッドを,成形材料に展開した。シラノールと有機溶媒に溶解したフェノール樹脂を攪拌しながら混合し,そのあと溶媒を室温で減圧除去。得られたゼリー状化合物を熱処理することで,フェノール樹脂オリゴマーにシリカが均一分散した複合体が得られる。これを数μmまで粉砕し,フィラーとする。このフィラーをノボラック型フェノール樹脂に分散させることにより。シリカナノコンポジット材料を得る。
 このフィラーを添加したフェノール樹脂は,成形性にすぐれており,また得られた成形他の強度,摺動特性にもすぐれている。これはフィラーの反応性により,連続した樹脂架橋点構造中にコンポジット化されたシリカ微粒子が点在する構造をとることによる,という。

・ガスバリア性と耐摩耗性にすぐれた有機無機ハイブリッドコート材料 1PC33 三井化学 西浦克典ら        

 ガスバリア性にすぐれるポリビニルアルコール(PVA),ポリアクリル酸(PAA)に無機材料としてシリカをナノレベルで複合化することで,ガスバリア性と耐摩耗性を合せ持つハイブリッドコート材の開発。製造方法は図に示すように,テトラメトキシシラン(TMOS)のゾルゲル反応による加水分解駅にPVA,PAAの水溶液を添加して得られる。これを基材にコーティング,120℃1時間加熱してコーティング膜を得る。
 無機材料としてTMOSのみを使用した場合には膜は白濁したが,有機・無機間に強い相互作用を導入することができるアミノプロピルトリメトキシシラン(APTMOS)を添加することで透明なコート膜が得られる。PVAとPAAのエステル結合によって構成されるポリマーネットワークとシリカマトリックスが相互進入網目(IPN)構造を形成することによる優れた耐摩耗性,ガスバリア性が得られる。


・光学特性にすぐれたポリ(2−ヒドロキシメタクリレート)/チタニアハイブリッド 1PC34 
  日大理工 田代哲也ら    tetsuya.tashiro@polymer.chem..cst.nihon-u.ac.jp
 有機無機ハイブリッドによる機能性材料の研究。新しい光学材料の開発を目指している。PMMAやPCなどの透明プラスチックは光学用途に幅広く使われているが,屈折率,アッベ数などの光学的機能に関してはガラスに劣っているのが現状である。有機無機ハイブリッドの技術を利用してこうした要求に対応できる材料の開発を進めている。
 側鎖に水酸基を持ち透明に性にすぐれ,紫外製暴露でも透明性の劣化の少ないポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)に着目,これにチタニアを分子レベルで複合させ,両者の特徴を生かした材料とする。

・フェノール樹脂/人工ゼオライト複合材料の硬化挙動および硬化物物性 1PD09
 大阪市立工業研究所 松本昭博ら(共同研究 KT材料研究所,中部電力) akihirom@omtri.city.osaka.jp
 石炭灰を原料とする人工ゼオライトをノボラック型フェノール樹脂に充填し,その流動特性,硬化物物性を従来のフィラーと比較検討した。人工ゼオライトは,石炭火力発電所で発生する石炭灰(Fly ash)に水酸化ナトリウム水溶液を添加し加熱加圧して得られるナトリウム型人工ゼオライト(Na−Ze)と,さらにこれを水酸化カルシウム水溶液を反応させ陽イオン交換したカルシウム型人工ゼオライト(Ca-Ze)の2種を用いた。その他のフィラーと比較検討した結果,人工ゼオライトを用いた系は,比較的低圧でも成形可能であることがわかった。ま機械的強度はガラス繊維並みとは行かないが,他のフィラーに比べて非常にすぐれている,という。耐熱性もガラス繊維並み。さらに硬化物の線膨張係数が小さく,異方性がほとんどないという点も興味深い。

・水ガラスをシリカソースとした有機無機ハイブリッドフィラー 1PD11
 SRI研究開発 井本洋二ら y-imoto.az@srigroup.co.jp
 この研究グループはこれまで2-ビニルピリジン変性SBRラテックスにシリカが被覆したハイブリッドフィラーが,ゴムに添加した場合,高減衰と高補強性を示すことを明らかにしている。今回はさらに補強性を向上させる目的で,アミノ変性SBRラテックスに着目した。これをシリカで補強したハイブリッドフィラー作製,SBRに添加した場合の構造および力学的特性を調べた。
アミノ変性ラテックスに,水ガラスを添加,その混合物を硫酸溶液に滴下しゴム分を凝固,洗浄,乾燥して有機無機ハイブリッドフィラーを得た。これをSBRに硫黄との添加剤を加え混練し,加硫して試料を得た。加硫後のゴムの引張り特性では,従来の2-ピリジン変性SBR/水ガラス複合体より高い補強性を示すことがわかった。

・電磁抑制シートの磁性粉末に対するシラン処理とシート物性 1PD15
 湘南工大,NECトーキン 栗田 勇ら ikuta@mate.shonan-it.ac.jp
 電磁シールド用途に使われる磁性粉末複合体は磁性粉末と熱可塑性バインダーで構成されるが,磁気特性を向上させるには,磁性粉末を高充填する必要がある。シランカップリング剤を用いて磁性粉末の高充填化を行った。カチオン系,アミノ系,メタクリロキシ系,ビニル系,エポキシ系のシランカップリング剤を用い,磁性粉末93%,ポリマーバインダー7wt%でシートを作製,どれが高密度充填できるかを調べた。その結果,磁性粉末とバインダーの親和力を向上させるカチオン系カップリング剤が優れた性能を示すことが明らかになった。さらにその処理濃度の最適値の検討も報告した。


<エラストマーへの期待>

熱可塑性エラストマーは,ポスト塩ビ材料として,加硫ゴム代替材料として,また樹脂改質材として幅広い応用が期待でき,研究開発も盛んである。今回も数件の発表があった。

・新規熱可塑性エラストマー「タフセレン」 1PC43 住友化学 永井理子ら nagai@sc.sumitomo-chem.co.jp
 タフセレンは,新世代触媒を用いて開発されたポリプロピレン系完全非晶室軟質ポリマー。PPとの相溶性にきわめてすぐれており,ベースのPPを損なうことなく軟質化,透明化が実現できることから,改質剤として広く使われるようになっている。ここでは,成型加工性改良剤としての応用を取り上げた。空冷インフレーション加工への応用例を紹介。また,OPPの延伸倍率向上や真空成形シートの深絞化などへも効果が期待できる。

・ポリアミド系新規エラストマー”UBESTA XPA” 1PC44 宇部興産 奥下洋司 13980u@ube-ind.co.jp
 ナイロン12をハードセグメントに,新規ポリエーテルをソフトセグメントとするマルチブロックタイプのポリエーテルアミド。硬さの異なる4種のグレードがある。写真(下)に示すようにハードセグメント,ソフトセグメントがそれぞれ数十nmスケールの微細な相構造を形成している。
 物性的には軽くて強靭で低温柔軟性に富んでおり,熱可塑性ポリウレタンと2色成形した場合,従来品よりも1.5~2倍の強度を示し,スポーツ靴底への用途展開が期待される。

・低硬度低Csポリウレタンエラストマー 1PC68  國分哲ら(日本ポリウレタン工業)
この発表は熱可塑性エラストマーではなく,熱硬化性エラストマー(ゴムでいう加硫ゴム)にあたるものである。熱硬化性ウレタンは,強度,耐摩耗性にすぐれることからロールやベルトなどに使われている。この材料は,TDI(トリレンジイソシアネート)とMOCA(メチレンビス-2-クロロアニリン)からなるが,硬度(JIS A)70が一般的であった。低硬度化を可塑剤を使わず,プレポリマーと,ポリオールの組み合わせから検討し,低硬度(JIS A30~60)を実現。また,低硬度にもかかわらず,非常に低い圧縮永久ひずみ(Cs)を実現した。

・耐熱・耐油性熱可塑性エラストマー 1PD01 日本ゼオン 梅津清徳 K.Umetsu@zeon.co.jp
 従来のTPEの欠点のひとつである耐熱性,耐油性を改善した「ゼオサーム」の紹介。アクリルゴムと,ナイロン6を組み合わせた動的架橋方熱可塑性エラストマー(TPV)である。その特徴はまず耐油性,耐熱性である。ポリエステル系エラストマー(TPEE),EPDM/PP系動的架橋エラストマーとの熱老化性試験結果を下に示すが,エンジン油などの潤滑油中での使用も可能。また150℃以上の耐熱性があり,エンジン周りでの使用も可能。また,ベースにナイロン6を使っているため,自動車用エンプラとして使われているポリアミド樹脂との複合化も可能であり,ポリアミド,エラストマーの複合一体部品などへの展開も期待できる。


・SISブロックコポリマーの新しい可能性 1PD02 日本ゼオン 大石剛史ら T.Ooishi@zeon.co.jp
 SISはハードセグメントにポリスチレン,ソフトセグメントにポリイソプレンを用いた,スチレン系ブロックコポリマーである,主としてホットメルト型粘着剤の原料などに使われている。ここで紹介するのは,低分子量ポリイソプレンを導入した新規なSIS。
 SISはもともとTPEのなかでも低弾性率,低硬度の材料であるが,さらに低硬度。低をモジュラスを示す。また,粘着付与剤を使用しなくても微粘着性を示す。圧縮永久ひずみや永久伸びにおいては天然ゴム同等の特性を示す。また,低分子量ポリイソプレンの導入によって特徴的な粘弾性挙動を示し,制振性の機能も示す。従来の粘着剤用途だけでなく,新しいTPEとして用途展開が期待される。

・最新の機能性熱可塑性エラストマー 1PC71  三菱化学 植田俊弘  
 三菱化学では,スチレン系,ポリエステル系,オレフィン系と各種の熱可塑性エラストマーを製品化しているが,ここではスチレン系エラストマー「ラバロン」の最新高機能グレードを紹介。一つは高反発および低反発グレード。全く特性が逆であるが,いずれもモルフォロジー制御のための原料配合技術とコンパウンディング技術がポイントとなる。その技術を紹介。
もう一つは,チューブ・ホース用良キンクグレード。「キンク」とはチューブを折り曲げたときに円管がつぶれ閉塞する状態をいう。従来のホース・チューブ素材である軟質塩ビはキンク性のすぐれた素材であったが,塩ビ代替のエラストマーでは問題となることが多い。ここでは,キンク性が軟質塩ビ並みのグレードと,その医療,食品分野への応用事例を紹介。
  三菱化学のホームページ  http://www.mcc-spd.com

<光硬化材料の新展開>

・航空機用可視光硬化マトリクス樹脂の研究 1PC15 東レ 荒井信之ら (共同研究 富士重工) 
   Nobuyuki_Arai@nts.toray.co.jp
 大型旅客機への炭素繊維強化複合材料(CFRP)の適用はいよいよ本格化してきた。CFRP部材の成形にはプリプレグのオートクレーブ成形が用いられてきたが,マトリックス樹脂の硬化には加熱が必要で,成形コストが大きくなる。このため,熱硬化によらないCFRPの成形法に期待が集まっている。そこで,マトリックスのエポキシ樹脂を可視光で硬化する方法の開発に取り組んでいる。
チオキサントン誘導体を増感剤,光重合開始剤としてヨードニウム塩を用いた光反応システムにより,エポキシ樹脂の可視光硬化を可能にした。この方法で作ったCFRPは,従来の熱硬化による航空機構造用CFRPと同等レベルの強度を有する。


革新的FRP製造技術 1PD08  三菱重工業 林 宣也ら noriya_hayashi@mhi.co.jp
 UV光を透過できない材料系へのUV硬化技術の適用を目指した研究。炭素繊維強化複合材料へのUV硬化材料の実用化を目指し,カチオン硬化を適用した。2004年のポリマー材料フォーラムも発表があったが,今回はRTM(レジントランスファーモールディング)への適用,実際の成形例などを紹介した。炭素繊維Vf40 (40 vol% 程度)にしきい値が存在し,Vf40未満であれば,長さ1mのJ型フレーム部材の連続硬化成形が可能であることを明らかにした。航空機部材においてもUV硬化の応用がキー技術になることが期待されている。


・成形加工可能なハードコートフィルム材料  1PC25 三菱レイヨン 岡崎正吾ら  okazaki_sh@mrc.co.jp
 三菱レイヨンでは,アクリル樹脂フィルムを自動車内装材,建材,反射材などに幅広く展開している。最近では環境問題に対する対応として。スプレー塗装に代りアクリルフィルムを表皮材として用いることも増えている。しかし,自動車外装など,屋外で用いる場合,耐擦傷性が問題となる。そこでアクリルフィルムの表面に光硬化性樹脂組成物を積層,光硬化させることで,アクリルフィルム本来の透明性,耐候性,熱成形性といった特徴を損なうことなく耐擦傷性,耐薬品性を付与したハードコートフィルムを開発した。
下表は,このハードコートフィルムをPC(ポリカーボネート)樹脂とインモールド工法で一体化,続いてUV照射して得たハードコート表面と,従来のアクリルフィルム表面の特性を比較しものである。

表 ハードコートフィルムの特性

ハードコート アクリルフィルム
iO2 content
コーティング厚み
wt%
μm
40
10
インモールド後の物性
外観
鉛筆硬度(JIS K 5400
接着性(JIS K 5600
光透過性(ASTM D 1003
HazeASTM D 1003
耐傷付性(Haze,Taber試験)
CS10F 5t00%
耐候性(SWOM3000hr






Good
H,3H
100100
91
0.5
10(100cycles)
10(500cycles)
Good
Good
H
100100
91
0.5
32 (100cycles)
40 (500cyles)
Good

・エン・チオール反応を利用した有機―無機ハイブリッド材料 1PC28  荒川化学 福田 猛ら(共同研究 大阪市工技研)   t.fukuda@arakawachem.co.jp
 チオールとオレフィンとに光照射することで起こるエン・チオール反応は,光重合開始剤を用いなくとも反応が可能であり,酸素阻害を受けない,硬化収縮が少ないなどの特徴ある。最近研究開発が盛んであるが,ここでは有機-無機ハイブリッドへの応用を紹介。3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1を加水分解して得たチオール基を持つシルセスキオキサン様縮合物と,多官能アリレートを反応させて得られる有機・無機ハイブリッド材料を紹介。高い屈折率と高い鉛筆硬度を持つ膜が得られる。
 なお,同社の資料では次のようなことを述べている。この有機-無機ハイブリッド技術は、硬化時に揮発成分の発生することが無いシリカ(シルセスキオキサン)を無機成分とし、さらに硬化後の収縮が少ない光硬化型のエン-チオール反応を適用、そしてこれらに最適な架橋性樹脂を有機成分として組み合わせることで、厚膜にすることが可能なうえに硬化収縮の非常に少ない寸法安定性に優れたものになっている。同社の有機無機ハイブリッド材料である「コンポセラン」の従来持っていた高耐熱性、高い耐溶剤性などの特長に加えて、硬化物の寸法安定性や厚膜化が可能となったことより、液晶ディスプレイなどに使用されるガラス板やプラスチック板の機能性コーティング剤や液晶パネルのシール剤として、その他にも従来のプラスチックレンズや透明基板の代替など、広範囲にわたる用途への応用が期待される。

・グリセリン基を有する新規ビニルモノマー 1PC40  日本油脂 筑波研究所 姜 義哲ら euichul_kang@nof.co.jp
新しい水溶性ポリマー原料として開発。分子内にウレタン結合と2つの水酸基を有する水溶性グリセリンモノマー。2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とイソプロピリデングリセロール(IPG)を反応させ,下図に示すイソプロピリデングリセロール-1‐メタクリロイルオキシエチルウレタン(IPG-MOU),これを酸触媒で脱ブロック化したグリセロール-1-メタクリロイルオキシエチルウレタン(GLY-MOU)。
 これらの材料は,光重合開始剤添加で,アクリルエステルとほぼ同等のUV硬化性を示す。水性UV硬化材料など新しい展開が期待できる。

・耐摩耗性を有するトリアジンチオール蒸着膜の光重合方法 1PC58  岩手工技センター 鈴木一孝ら  
    ksuzuki@pref.iwate.jp
 金属表面へ高分子ナノ薄膜を付与して機能化を狙う手法として,蒸着と光重合を組み合わせた。高分子としてはトリアジンチオール化合物を用い,ステンレス鋼板表面に,真空蒸着でパーフルオロアルキル誘導体トリアジンチオール化合物を被膜を形成。その後高圧水銀ランプでUV照射,塗膜を架橋重合する。得られた膜の耐久性評価例などを報告。UV照射条件(真空中,大気中)のコントロールによって耐摩耗性の向上が図れることを示した。

・環境調和型酸発生剤の開発 保土ヶ谷化学工業 樽本直浩ら(共同研究 千葉大学工) taru@hodogaya.co.jp
 化学増幅レジストは,酸発生剤とポリマーを組み合わせることで,KrFエキシマレーザー,ArFレーザーなど短波長領域に感光性を示し,超微細科工レジストに応用されてきた。化学増幅型レジストで作成する膜特性が良好なことから,短波長光だけでなく,超高圧水銀灯からの長波長光領域でも利用したいという要求がある。また,環境に配慮した材料への期待も大きい。ここでは,環境に配慮し,安全性が高い色素を用いた405nmレーザー,アルゴンレーザーに感光するオニウム塩系酸発生剤を開発した。基本骨格をアニオン部変換により様々な露光光源に対応できるオニウム塩とし,アニオン部には安全性の高い色素とした。医薬部外品染色用色素Pyranineを用いたヨードニウム塩PC-DPI,食用色素であるAcid Red 52を用いたヨードニウム塩AR52-DPIの2種。その感光特性,熱安定性,変異原性試験,酸発生量子効率などを紹介した。


本レポートの図版の一部は,第14回ポリマー材料フォーラム予講集(高分子学会)より引用しました。

2005 ポリマー材料フォーラムレポート(2) はエレクトロニクス材料などを予定しています。 請うご期待

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