大型犬のアフガンファウンドとサルーキーを、こよなく愛し自分の全人生を犬の幸福の為に捧げた
F女史が9月1日に84才の生涯を閉じた。
今から、かれこれ40数年前、厚木にあった乗馬クラブに行った時の事、馬場を見渡せる高台に建っている
クラブハウスのテラスに頭を高くあげて一頭の大型犬が馬場の方を見下ろしていた。
顔はコリーに似ているが耳と尻尾の毛が異常に長く、又背中の毛は地面に着きそうな程、何とも気品に溢れた
その犬を見た途端、私はどうしても同じ種類の犬を飼いたくなり、早速クラブの経営者にその犬の出処を聞き、
紹介されたのが、F女史だつた。
それ以来、アフガンファウンド犬も何頭か飼ったが現在はサルーキーという大型犬が二頭とトイプードルー匹が
家族の一員として仲良く生活している。
その様な理由で私の犬好きを良く知っている知人から、3年前に軽井沢ペット福祉協会を紹介され、
その設立の動機を聞かされて、御手伝いをするようになった。
国際観光文化都市に指定されている軽井沢では、毎年秋から冬にかけて人間の身勝手な都合で沢山の犬や猫が
捨てられ、保健所に収容された犬達は通常5日間の保護期間を経て殺処分されることになっている。
欧米では安楽死が普通だが、日本では炭酸ガス(二酸化炭酸)による窒息死で、これは決して安楽死と呼べるもの
ではない。
人間に忠実に仕えてきた犬達、何の罪も無い犬達が何故そのように恐怖のうちに苦しみながらその命を絶たねば
ならぬのか。
もっとも、自分の産んだ子供に平気で暴力を加えて殺したり、餓死させる親が後を絶たない御時世だと言って
しまえばそれ迄の話し。
然し、現実に長野県の10箇所の保健所では年間2000頭の犬が保護され、佐久の保健所では去年243頭の犬が
ガス室送りとなっている。
今日本では空前のペツトブームで、それにまつわる関連産業が肥大化する中、毎年30万頭以上の犬や猫が
殺処分されている。
ペットショップやブリーダー(繁殖業者)から、「可愛いいから」「流行だから」と安易に買われて
いった犬や猫が無責任な飼い主の身勝手な理由で遺棄されたり保健所に持ち込まれているのだ。
2009年、環境省は、2017年までに犬猫の殺処分数を半減させるという目標を掲げているが、その具体策は
何ら示されておらず、まして殺すシステムから生かすシステムヘの方向転換への具体策は軽井沢ペット福祉協会
のような動物愛護精神のある慈善団体に任せ切っているのが実情なのだ。
私は軽井沢ペット福祉協会という名前を聞いた時、何故「ペット」という名前をつけるのか、ぺットとは
愛玩動物、愛玩物、又はお気に入りの人や物という意味だから、いやになったり嫌いになると平気で捨ててもいい
と思ってしまうのだ。犬や猫は決してペットであってはいけない、大事な家族の一員として遇するべきだと
言ったが、この名称は既に決定していて変更は不可能との事だった。
然し、動物愛護の精神をもって保健所の譲渡犬猫の里親探しの推進とか、犬猫の飼育放棄や虐待的飼育の
防止活動を積極的に推進するという活動内容に賛同して理事を引き受けることにした。
この8月末軽井沢の町役場公民館で「犬と猫と人間と」という118分間のドキュメンタリー映画を上映し、
多くの人達に観て頂いた。収容施設のオリの中で殺処分される運命を知らない一頭の犬が静かにビデオのカメラを
見つめるシーンで始まるこの映画、捨てられた仔犬を空き地でこっそり育てる子供、持ち込まれた犬の飼い主を
探す愛護団体の奮闘ぶり、映画終了後観客の中から溜息が漏れた。
重ねて言うが、ペットショップやブリーダーによって繁殖に使われる犬猫達の一生は悲惨そのものだ。安易な
気持で衝動的に犬や猫を購入できる状況にある限り飼育放棄する人達を減らす事は出来ない。
多くの先進国では生体展示販売は禁止されており、地域の施設から犬や猫を譲り受けるという
文化が定着していると聞く。
その意味で日本は動物愛護後進国の誇りを免れることは出来ない。
御存じですか“動物愛護法"
一 動物を殺したり傷つけたりすると一年以下の懲役又は百万円以下の罰金
一 動物に水や餌を与えず衰弱させる等の虐待は五十万円以下の罰金
一 動物を遺棄すると五十万円以下の罰金
以 上
【ドキュメンタリー映画「
犬と猫と人間と」のサイトにリンク】