五濁悪世(ゴジョクアクセー)
(2006年11月号)

何かおかしい、どうも変だ、何か世界中を揺るがすような大事件が起きそうな気がする。
 私は近頃漠然とそのような事を考えることがある。
 毎年、しとしとと降っていた梅雨は一極集中の豪雨となり、土石流は家屋を押し流し容赦なく人命を奪ってゆく。
 記録更新はスポーツの世界なら大歓迎だが、夏や冬の気温は極端から極端で毎年その記録を更新しつつある。
 そして地震大国を誇っていた日本を遥かに凌ぐ大地震が世界各国で発生し、その地震によって引き起こされた津波は 東アジア諸国を襲い多くの犠牲者を出し、日本語の「ツナミ」は遂に世界語となってしまった。

かと思うと、この日本では母親が我が子を橋の上から投げ捨て、我が子を集中治療室と称する勉強部屋に閉じ込め、 その結果その子供は家に火をつけて母親と弟妹を焼き殺す等子殺し、親殺しは日常茶飯事となり、主義が違うといって 政治家の家に火をつけた男がいたかと思えば、教祖や教師はその地位を利用して信者や生徒を犯すしまつ。
 オレオレ詐欺や振り込め詐欺が大流行で、疑うことを知らない子供達に「人を見たら泥棒と思え」・「大人を見たら 誘拐犯と思え」とまず疑うことを教える親や教師達。
 総てにおいて疑心暗鬼になると人は追いつめられて二進(ニッチ)三進(サッチ)もいかなくなるというのに。
 人間が疑うことを知らずに生きて行けたらこんなに幸福なことはないとつくづく思う。
 皆で渡れば怖くないと赤信号を無視する歩行者や、電車内で傍若無人に声高に携帯電話で話すビジネスマンや若者達、 この日本にルールはないのか、どうやらこの国では規則は破るために存在するものらしい。

然し、この傾向は何も日本ばかりとは限らない。私達の今生きている現代はあまりにも「虚偽」に満ちている。油断も 隙もない時代なのだ。
 従って、私達は総てにおいて自己責任で対処する以外に道はなくなってしまった。
 いち早く核を持った国々は、それぞれ自国の核はそのまま他国が核を持つことを禁じ、世界で唯一の核被爆国日本は 核廃絶は唱えても核保有国への核の放棄を迫ったことは唯の一度もない。核保有国の核廃棄を伴わない核廃絶運動等 ナンセンスだと思うのだが辻棲の合わない「平和の為」と称して殺戮を繰り返し他国の富を奪おうと虎視眈眈と その機会を伺い、何か口実をみつけては戦いを仕掛ける大国、その結果戦争をする力のない国はテロとなって大国に 対抗するがテロの撲滅は力によっては不可能にちかく、この争いは未来永劫続くことだろう。
 その上人類を幸福にするはずの宗教は、産地限定に止めておけば良いものを、他の宗教を批判し、邪教呼ばわりする から喧嘩になるのだが、これは今に始まったことではない。

以上まつたく思いつくまま取り留めもなくいろいろと書いてみたが、実はこれらのことは今から2500年前にお釈迦様が 「法華経」の中でいみじくも予言していたことなのだ。
 即ち法華経には「五濁の悪世には、ただ諸欲に楽著(おかされていること)せるをもって……」とあり、又私が何かに つけて唱える「仏説阿弥陀経」にも五濁悪世という言葉が出てくるが、この五つの濁りとは、
一.劫濁(コージョク)…… 天変地異・戦争・疫病等により時世の汚濁が生ずる。
一.見濁(ケンジョク)…… 悪徳思想、例えば○○ファンドに代表されるお金第一主義や良心の欠片(カケラ) もない役人や政治家の税金の無駄使い等により邪見が盛大になり世を濁乱し末世となる。
一.煩悩濁(ボンノージョク)人々が貧眞痴(トンジンチ)の、むさぼり、いかり、 おろかさの三悪に加えて慢のおごり、疑(仏・法・自分をも疑う)の五つにひたり様々な罪を犯すようになる。
一.衆生濁(ショージョージョク)幼児誘拐や幼児虐待・殺人等で社会全体が濁る。
一.命濁(ミョージョク)…… 様々な濁りによって人の寿命が短くなる。
死亡率の低下により長寿国世界一を誇っている我が国も医療制度の改革によって老人や貧困者は死んでしまえとばかり 収入のない老人や職のない者は高額化する健康保険料を納めないと病人は患者にもなれず医療から見放され、政治家 は銀行や高利貸し肩を持って金持ちには安い金利で金を貸し貧乏人には高利で多重債務者の自殺率の珊加を謀り、 その上飽食・飽飲のつけがまわって男性の平均寿命は確実に下がりはじめている。
 以上五つの濁りによって悪世となり、まさに「末世」の時代になると予言しているのだ。
 この末世という言葉も前記「五濁」によって世界中がおかされた時のことで、即ち「世も末」の 「末」とは仏教でいう正法(ショウボー)像法(ゾーボー)末法(マツボー)の末法の事で正法は釈迦滅後 五百年〜千年の間をいい、像法は正法に続く千年の問で、末法はその像法に続く一万年の間のことを言い、 仏法が衰退する末法の時代は世の中が乱れ、天変地異がおこるということらしい。

釈迦の生存年代には種々異説があつて確定しがたいが、およそ前五世紀の人と推定されるから、2006年の今年は まさにその末法の時代に入ったことになり、お釈迦様の功徳も種切れとなり、仏教の信者以外のキリスト教・ イスラム教・ユダヤ教は曾てオスマントルコ帝国では共存していたこともあったのに、今や互いに (イガ)み合い戦争の火種を作り続けている。
 きっとお釈迦様は、これらのことを遠い昔にはっきりと見透かしていたのだろう。
 地球の温度がセ氏で4度上昇すると地球上の総ての生き物は死滅するというが、急激な地球温暖化や核戦争等 によりそのような事態にならないことを祈るばかりである。                               桑原、桑原


 「仏説阿弥陀経」に出てくる五濁悪世(画像を左クリックすると拡大します)