海の贈物

光が爆ぜ返ってゐる朝だ
今、俺は深海の魚巣から
黒砂を蹴って、海草林を蹴って
日本海の濤聲に和して
曙海の贈物を新鮮な魚籠に盛って
陸地の住民!
君達に今送り届けよう

島島は海亀のように背を干して
海面一帯朝の光が流れ
パッチンパッチン 爆ぜ返ってゐる朝だ

ああ 両腕は
海苔のやうに黒澤に光り
頭髪は
海草にもつれて、海女のやうに赤茶毛に染まり
手足は
貝殻の爪を絡ったが
心象は晴れて明るい曙の海
海の紺碧の大空に向かって
限りない健康な深い大気を吸ひこめるああ魚簇となって
溶けるにきまってゐる。