13.『景気循環分析への歴史的接近』 金指 基訳 八朔社 1991
景気変動に関する論文7本を選んで訳出。
体系的と称される景気理論に対して次の2点で補助的な役割を担うものである。第一は、シユンベーターが終生強調して止まなかった歴史研究を、景気論に関して取り上げたこと。第二は、『景気循環論』においては論じえなかった経済時事的問題を取り扱っていることである。
七本の論文を発表された順にあげれば、次のとおりである。「景気循環の理論」(1931)、「沈滞」(1934)、「経済変動の分析」(1935)、「二〇年代の十年間」(1946)、「経済成長の理論的諸問題」(1947)、
「まだインフレを止める時間はある」(1948)、「景気循環分析への歴史的接近」(1949)、などである。
これらの論文は、いずれも歴史的視点の下に書かれたものであり、現実の問題を取り上げる場合のそうした分析力には、今日においても教えられるところが多い。これらを表していえば、シユンベーターの特徴であった「理論づけられた歴史的記述」ということであり、背後に制度的、時代的な鋭利な分析カのあることを十二分に知ることができる。こうしたことから、たとえ一九三〇年代、四〇年代を取り上げた時事論であっても、決して古さや時代遅れであることを感じさせるものではなく、その意味では、今日われわれは教師としてシユンベーターに、本書において出会うとさえ表現しうると思う。
巻末に詳細な「シユンベーター年譜」がつけられていて、シユンベーターを知るためにまたとない手掛かりを与えてくれる。