〔11〕『今日における社会主義の可能性』大野忠男訳、創文社、1977。

 最初『資本主義と社会主義』と題して、シユンベーターの六つの論文を邦訳出版したものに、後に二つの論文を加えて右のように改題したシユンベーターの論文集である。旧題からも明らかのように、本書に収録されている論文は、いずれも資本主義と社会主義ないしは資本主義から社会主義への移行とその経過にかかわる内容のもので、『資本主義・社会主義・民主主義』の姉妹編と位置づけることができる。
収録されている論文は次のとおりである。「資本主義」(1946)、「戦後世界における資本主義」(1943)、
「英国経済学者と国家管理経済」(1949)、「今日における社会主義の可能性」(1920)、「英国ならびにわが国における社会主義」(1924)、「共産党宣言の社会学と経済学」(1949)、「私的企業の将来」(1946)、「社会主義への前進」(一九五〇)。
 これらの中で一番古いものは一九二〇年で、新しいものは彼の没年(1950)に発表されている。この三十年の間に『資本主義・社会主義・民主主義』が置かれているが、分析の鋭さ、洞察の深さにおいてはいずれもすぐれたもので、シユンベーターの問題意識の下に統一的に展開されており、彼の経済学の体系ないしは社会科学論を知るうえからも格好の論文集である。