3.経済学史 中山伊知郎・東畑精1訳、岩波書店、1950、岩波文庫、1980

シュンペーター主な著書と解説

ドイツで学界の総力を結集して企画された『社会経済学大綱』第1巻の執筆者の一人として、 シユンベーター
がマックス・ウェーバーに指名され「学史」を担当した。ところでそれまで学説史に関する業績のないシユンベー
ターに、一部では危惧の念を抱く者もいたが、彼は見事にその大任を果たすことができた。たとえばハーバラー
は、専門家にのみ十分に評価されうる深遠にして成熟せる一編の傑作と称賛し、シユナイデーは、巨大な豊科
についての最も精通した知識と、まったく稀にみるほどの成熟した判断とを基礎にして、経済思想についてのか
ような歴史を書くことが、どうして三十歳を出たばかりの少壮学者に可能であるのかと驚嘆しているほどである。
シュンペーターは晩年、この『学史』の英訳改訂版を書くべく準備をしており、それが大冊『経済分析の歴史』として結実するのであるが、その意味でも本書は『経済分析.の歴史』とまったく同じ意図の下で書かれていると考えられ、そして、そこに展開される経済学の歴史は、まぎれもなく科学としての経済学の発達史にほかならな
いのである。したがって本書は『経済分析の歴史』を理解するための格好の書物という位置づけも可能である。
 取り上げられている範囲は『経済分析の歴史』より狭いものであるのは止むを得ないとしても、構成は十分に
それを予定しうる内容となっている。とりわけ読者が注目すべきは、第一章「社会経済学の科学への発展」 である。というのは、この部分が『経済分析の歴史』の第一編「序論−範囲と方法」、論文「社会科学の過去と未来」および「科学とイデオロギー」とともにシユンベーターの方法論を示すものだからである。
いずれにしても、「若きシユンベーターの成熟せる一編」は、熟読に値するものといえよう。