原告第2準備書面


以下は、2003年1月30日に提出した準備書面である。機種依存文字の丸付き数字は[ ]付き数字に、固有名詞は必要に応じてイニシャルとした。

 第1 被告準備書面(2)について

 第2 被告準備書面(2)に対する反論

 第3 β遮断薬の投与について

 第4 亡E子が侵害された自己決定権について

 第5 亡E子の死亡原因について


第1 被告準備書面(2)について

1. 被告は、準備書面(2)第2項「肺高血圧に伴う右心不全について(1〜4頁)において、平成10年12月15日以降の外来診断及び入院後の治療は不適切であるとはいえないと主張している。
そこで、原告はこの被告の主張に対し、本準備書面(第二)の第2及び第3項において、詳細にその間違いを指摘した。また、第4及び第5項において被告らの設問に答えている。

2. 被告準備書面(2)別紙の外来・入院診療経過と、平成14年10月15日被告より提出の外来・入院診療経過一覧表を比較すると、次の3項は削除されている。
(1) 平成11年6月15日 浮腫不変のため、心疾患に浮腫を否定する目的で心臓超音波検査を予約(6月29日)。
(2) 平成11年6月29日 心臓超音波検査のため来院。
(3) 平成11年6月29日 経食道超音波検査(7月14日)を予約。

3. 被告準備書面(2)2頁には次の間違いがある。
(3)項 6月29日に心エコー検査、心電図検査を行ったのは、脳外科S教授の下肢だけでなく顔の浮腫も目立っているとの指摘(乙A1号証342)によってである。
(4)項 12月12日は12月15日の間違いである。6月19日は6月29日の間違いである。

4. 病理解剖で得られた所見を、入院時承知の事実のごとく述べることは大きな間違いであるが、本件の場合も次の事項が当てはまる。
(1) 入院経過表 平成11年7月30日の診療経過3〜5行目に記載されている認識は入院当時は全くなかった。
(2) 肺血栓塞栓症について特に「慢性」と付け加え主張、説明していること。
  ・被告準備書面3頁(上から7行、下から6及び5行)
  ・入院経過表 平成11年7月30日と平成11年8月6日

第2 被告準備書面(2)に対する反論

1. 肺高血圧症の診断について

 肺高血圧症とは、「肺高血圧」が存在する病態の総称で、原因は種々様々である。

 肺高血圧症の診断は、肺高血圧症の存在診断と種々の原因の鑑別診断の二段階を経て行われる。

 肺高血圧症の存在診断は、患者の訴え、症状、胸部X線写真では心胸郭比の拡大や肺動脈の拡大、心電図での右心負荷所見を認めれば、肺高血圧症の存在を推定することはさほど困難なことではない。

 さらに、心エコー検査で右心系の拡大所見から容易に右心負荷の存在を認識でき、またドプラー法を用いれば、右心カテーテルを用いなくても、非侵襲的に肺動脈圧の半定量評価も可能となる。

 肺高血圧症の存在診断は、前述した方法で早期に右心負荷を発見することが重要となる。

 肺高血圧症の存在が確認されれば、専門施設での速やかな鑑別診断と治療法の検討が必要である。

 なぜなら、原発性肺高血圧症に対してはプロスタサイクリン持続静注法、慢性肺血栓塞栓症に対しては肺動脈血栓内膜摘除術など、治療を実施できる施設が限られているからである。

2. 本件における肺高血圧症の存在診断について

 被告医院が治療の実施できる専門施設ではない以上、被告医院では肺高血圧症の存在診断が問題となる。被告Sが肺高血圧症の存在診断が全く出来なかった事実は次の通りであった。

(1) 肺高血圧症では、労作時の息切れ、動悸はほとんどの患者たちの主訴であり、亡E子も主訴として循環器内科を受診した。しかし被告Sは、息切れ、動悸を主訴に受診された閉経後の女性の大部分は、はっきりとした原因はないという単純な判断で、息切れ、動悸を無視し、初診日以降、息切れ、動悸についての問診は行わなかった。

(2) 亡E子の頻脈については、既に投与されていたカルシウム拮抗薬によると被告Sは判断したが、これは間違った判断である。この間違った判断によって、β遮断薬を投与したのである。

 平成10年12月26日には、アーチスト(β遮断薬)服用中にもかかわらず、亡E子は動悸、息切れで救急外来をしており、心電図でも洞性頻脈(乙A1号証334)を認めており、頻脈はカルシウム拮抗薬(エマベリンL)が原因でないことがわかる。

 更に、平成11年1月4日には、テノーミン(β遮断薬)服用中にもかかわらず心臓がドキドキすると訴えている。

 平成11年1月19日、被告Sは上記と同じ間違いを繰り返した。頻脈の原因について、カルシウム拮抗薬(エマベリンL)による影響が考えられる経過など全くなく、被告Sは頻脈の原因を究明することは一度もなっかた。

(3) 平成10年12月15日(循環器内科初診日)、亡E子は胸部X線写真で肺動脈が拡大していた。これは、肺高血圧症を示唆する所見である(甲B1)。この所見は胸部X線写真読影の常識である。

 心胸郭比は58.7%で、中等度の心拡大である。

 心電図所見では、原告準備書面(第一)12〜13頁で既述したが、肺性P波を見落としていた。肺性P波は右房負荷を示唆する所見である。肺性P波はその後の心電図所見でも見落としていた。

 従って、被告Sは、初診日から肺高血圧症、右心負荷を示唆する所見を見落としていた。この時点で、肺高血圧症を疑い、検査をしなければならなっかた。

(4) 平成10年12月26日、亡E子は救急外来に行った。

[1] 平成10年12月26日の心電図では、12月15日に比べて異常が急激に進んでいて、急激な右心負荷を起こしていた。循環器内科T医師がカルテに記載した心電図所見は次の通りであった。

     ・洞性頻脈
     ・ II、III、aVFの小さなq波
     ・ III、aVFの陰性T波

外来経過表には、胸部誘導の陰性T波の記載があるが、カルテに記載なく、循環器内科T医師の見落としである。原告準備書面(第一)12頁で既述したように、肺性P波も見落としていた。胸部誘導の陰性T波は、右心負荷を示唆する所見である。胸部誘導の陰性T波は、急性肺血栓塞栓症において高頻度に認められる所見である。この時点で急性肺血栓塞栓症を疑ったとしても不思議ではないが、被告医院ではそうはならなかった。これは急性肺血栓塞栓症も診断できないことも示している。
心電図では、12月15日(初診日)、12月26日(救急外来)共に、右心負荷所見を見落としていた。
[2] 簡易的に行った心エコー検査では、観察不良(乙A1号証334)であったにもかかわらず、心エコー検査の所見を心電図変化より重要視したことは重大な過ちである。
心エコー検査について、画像写真はなく、ビデオテープにも記録されておらず、循環器内科T医師が右心に注目していたかは不明である。
[3] 血液検査でも、12月15日に比べてGOTは23→82、GPTは23→89と上昇していた。
[4] 下肢浮腫↑とカルテに記載してある(乙A1号証333)。
[5] 以上の検討結果からすれば、亡E子は精査する必要があり、入院する必要があった。しかし、循環器内科T医師は亡E子を帰宅させ、薬はアーチストからテノーミンへ変更したが、共にβ遮断薬であった。
急激な異常が起こった原因は、12月15日以後服用したβ遮断薬の所為である。

(5) 平成11年4月20日外来時、被告Sは、下肢浮腫↑及び心尖部収縮期雑音+とカルテに記載している。
 心尖部収縮期雑音について、被告Sは高血圧症の患者にはしばしば認められるものであるというが、心尖部収縮期雑音の記載は初めてであり、しかも+とまで記載している。
 平成11年4月20日突然、心雑音を聴取したことは異常であり、この時点で心エコー検査を施行するのが普通である。
 心尖部収縮期雑音は、三尖弁逆流によって聴かれるようになる。

 胸部X線上の所見は、心胸郭比60%(前回は58.7%)と拡大しており、右の第2弓の突出が軽度ながら存在していたと被告Sは述べていた(甲A2)。
これらの所見も三尖弁逆流によって生ずる所見であるにもかかわらず、そのように判断することはなかった。

 三尖弁逆流は右心不全のほぼ全例に認められる。
 従って、下肢浮腫は右心不全の症状であることが分かる。被告Sは、下肢浮腫について特発性浮腫の可能性を考えたというが、上述したように、この被告Sの判断は間違っていた。

 4月20日の所見に限って判断しても、心エコー・ドプラー検査は必要だった。胸部X線写真では、初診日(平成12月15日)から肺動脈は拡大しており、肺高血圧症を示している。

 心エコー・ドプラー検査を施行すれば、肺高血圧症、右心不全の診断は確実にできた。
これは、原告準備書面(第一)13〜14頁に既述している。

(6) 下肢浮腫については、平成10年12月26日(救急外来)、循環器内科T医師がカルテに下肢浮腫↑と記載している(乙A1号証333)。
 被告はこの事実を知っていながら、被告準備書面(2)では持ち出さず、無視している。
 被告Sは、T医師の記載に注目しなかったのである。
 下肢浮腫からは、心疾患の原因として右心不全は必ず疑わなければならない病態の一つである。しかし、被告Sの場合は上述のように判断しなかった。

(7) 従って、被告らが主張するように、肺高血圧症、右心不全を疑わせる所見がなかったのではなく、被告Sが循環器内科初診日からこの所見を見落とし、4月20日には右心不全を示唆する所見の判断を誤ったのである。
 被告は、6月29日まで心エコー検査を行わなかったことは遅くはない、と主張するが、医学常識では遅すぎることは明らかである。

3.肺高血圧症の治療について

(1) 亡E子に対し利尿剤の投与は、3月16日からラシックスを開始し、7月6日にはアルダクトンAを追加している。
 過度の利尿剤の投与は低血圧をもたらし、心拍出量を低下させるが、低心拍出量の指標である血清尿酸値(UA)は、7月21日脳外科での血液検査で9.2mg/dlと高値を示していた(訴状9頁)。これは、下肢浮腫についての判断を誤り、浮腫自体を治療の対象とし、利尿剤だけで対処していた影響があると考えられる。

 被告は、入院後はドブタミン(強心薬)を投与していると記載している。右心不全対策として、利尿薬で十分な臨床症状の改善が得られない場合には、強心薬の投与が必要となるが、ドブタミンの投与は8月10日からであり、亡E子は入院した7月29日には右心不全が高度であった。従って、ドブタミンの投与はあまりにも遅すぎた。

(2) 肺高血圧による二次的な血栓形成を防止する目的で、抗凝固療法としては、ワーファリンが主に用いられているが、被告医院では、亡E子には入院中終始ヘパリンが投与されていた。しかしながら、亡E子には右肺動脈A4に二次血栓が生じている。ヘパリンを長期間投与していると、突然にヘパリン誘導性の血小板減少症を起こす危険性があるため、1週間位を目安としてワーファリンに切り替えるのが通常であるが、被告医院ではそうしたことは行われなかった。
 従って、被告医院の抗凝固療法は間違っている。

(3) 平成11年8月6日被告医院の医師らは、「肺血栓はなさそうである。ウロキナーゼは必要ないであろう。ドルナーで血管拡張させる」と診断した(乙A3号証35)。ウロキナーゼは血栓溶解剤であり、血栓溶解療法は必要でないとの判断であった。
 血栓溶解療法については、被告は血栓溶解療法は有効でないと主張するが、被告医院の医師らの認識は必要か否かであり、有効か否かの問題ではなかった。

(4) 平成11年8月7日、原告K子に被告医院の医師らは以下の通り説明した。

 肺血栓塞栓症の可能性は低い。可視範囲の太さの血管には血栓が認められなかった。細すぎる血管につまっている可能性は否定できないが、可能性としては少ない。
 原発性肺高血圧症の可能性もあるが、今はまだ診断できない。全部の原因を否定しないといけないから。
 昨日の血管造影の結果は肺血管はきれいに造影された。これから肺血管を広げる薬を使う(乙A3号証36及び訴状15〜16頁)。

 被告は、被告準備書面(2)の第2-2-(2)項(3)頁で、この肺高血圧症については、原発性のものか慢性PTEか否かの明確な診断はできなかった、と主張しているが、別紙入院経過表の平成11年8月6日の項では、慢性肺血栓塞栓症による肺高血圧症は否定的で原発性肺高血圧症に一致する所見との記載があり、内容が違っている。

 上述したように、被告医院の医師らは、肺血栓塞栓症の可能性は低いと考え、8月7日以降、原発性肺高血圧症の可能性を考え、治療を始めたのである。肺血栓塞栓症(PTE)について「慢性」と付け加えたのは病理解剖以後のことである。

 被告は、第2-2-(3)項では、慢性PTEの治療について述べているが、亡E子入院中、被告医院の医師らが慢性PTEについて触れることなど一度もなかった。

(5) 被告は、プロスタサイクリン(PGI2)持続注入について、「被告医院でも行おうとすれば行える治療法である」と主張しているが、これは実態を無視した強弁以外の何ものでもない。
 亡E子入院中、プロスタサイクリン(PGI2)持続注入について、循環器内科は呼吸器内科に一任した(乙A号証33)。呼吸器内科は「使用経験がないため実施する場合は、国立循環器センターへ行きます(甲A7)」と原告らに言った。
 この治療は、循環器動態モニター下での投与量の調節が必要であり、本療法に熟練した施設での施行が必要であること及び平成11年4月より入院患者に限り保険適用となったこと(乙A3号証107)は、訴状43頁で既述した。
 従って、被告の主張は無茶苦茶である。

 ドルナー(PGI2経口薬)が亡E子に効果が認められなかったのは、肺高血圧症の発見が遅れに遅れ、右心不全が進行していたのが原因である。

 治療では、ドルナー(PGI2経口薬)とプロスタサイクリン(PGI2)持続注入の使い分けが必要である。しかし、被告医院ではドルナーしか選択肢がなく、亡E子を被告医院に入院させたことが間違いである。

(6) NO療法は、被告医院では肺高血圧症に対して初めてである。15分位で終わる(訴状19頁)との説明が、1時間かかっていた。CCUで施行されたので、その時の様子は原告らには不明である。NO療法も使用経験がないから、本来なら専門施設で行うべきであった。病状がここまで進行する前に行うべきであった。

(7) 外来での発見の遅れを認めず、鑑別診断がなされている間にも右心不全が進行していたことを認めず、右心不全対策としての強心薬の投与が遅すぎたことも問題とせず、ドルナーやNO療法開始の日を無視して、治療の効果について語るのは本末転倒の論理である。

第3 β遮断薬の投与について

1. 亡E子に対し、β遮断薬(アーチスト、テノーミン)が処方されたのは、1月19日までではなく、1月19日以後もである。また、1月19日には被告Sは「できればβ-blockerを使用したいところです。」まで述べている(脳外科カルテに被告Sからのメモが貼付)。

2. 1月26日に、亡E子が「この薬に慣れるまで体がもたない」と訴えて、被告Sが薬を変更したのである。

3. 下肢の浮腫について、被告は、亡E子が外来で訴えた3月16日を持ち出し、下肢の浮腫の原因をβ遮断薬に求めることができないと主張している。しかし、β遮断薬の投与は、被告Sが平成10年12月15日(初診日)から始めている。そして、亡E子が救急外来をした平成10年12月26日に、循環器内科T医師が「下肢浮腫↑」とカルテに記載している(乙A1号証333)。
従って、被告の主張は誤りである。

4. 第2の2-(4)項で既述した通り、β遮断薬の投与で急激な右心負荷が起こり、平成10年12月26日の救急外来時に亡E子は精査、入院を必要としたが、循環器内科T医師は亡E子を帰宅させ、引き続きβ遮断薬を投与した。
亡E子はその後も、朝起きた時気分が悪い、心臓がドキドキする、頭がフラフラすると訴えた。しかし、平成11年1月5日の循環器内科外来時、被告Sは心電図検査も心エコー検査もまったく施行しなかった。結局、1月26日、亡E子が「この薬に慣れるまで体がもたない」と訴えて、被告Sはβ遮断薬の投与をやっとやめた。この時は、肝機能検査のための血液検査さえ行わなかった。

 平成10年12月26日の救急外来以降、β遮断薬の服用による悪影響は激しくなった。亡E子の訴えの表現も激しくなった。アーチスト服用中にも、12月26日は息切れ、動悸で救急外来を受診し、また、テノーミン服用中にも、1月4日には心臓がドキドキすると訴えており、β遮断薬が頻脈の改善になっていないことが分かる。亡E子の訴えの内容を吟味すれば、β遮断薬の投与が原因で亡E子に異常が起こったことはよく分かるである。

5. β遮断薬は肺高血圧による右心不全のある患者に禁忌である。
循環器内科初診日、肺高血圧症、右心負荷を示唆する所見を見落としていたことは既述した。
β遮断薬の投与によって急激な右心負荷が起こった後も、β遮断薬は投与され続けた。β遮断薬の投与は、亡E子にとって浮腫の原因であり、右心不全状態を悪化させた要因であり、死亡の原因である。

第4. 亡E子が侵害された自己決定権について

 亡E子は、被告Sと脳外科S教授(当時院長)の説明義務違反(訴状42〜43)によって、次の自己決定権を侵害され、死亡に至ったものである。

1. 平成11年6月29日の心エコー・ドプラー検査の放射線科医師の所見によって、肺高血圧症、右心不全が判明したことにより、これまでの外来時診断が間違っていたことを知り、爾後の行動を決定する権利。

2. 被告Sの診断が初診日よりことごとく間違いであったことを知ることによって即座に被告Sを替える権利。

3. 亡E子が的確な診断と適切な治療を受けるために、被告医院から専門施設へ即座に転院をする権利。

第5 亡E子の死亡原因について

1. 亡E子死亡の原因確定は次の通り明らかである。

(1) 肺高血圧による右心不全のある患者である亡E子に禁忌であるβ遮断薬を投与した。これによって、急激な右心負荷が起こり、平成10年12月26日に救急外来をした。その結果、精査・入院を必要としたが、亡E子を帰宅させ、引き続きβ遮断薬を投与し続け、右心不全を悪化させた。

(2) 亡E子の主訴である労作時の息切れ、動悸、また症状である下肢浮腫について単純な判断を繰り返し、ことごとくそれらの判断が誤っていたこと。
 循環器内科初診日(平10年12月15日)より、肺高血圧症、右心負荷を示唆する所見を見落とし、右心不全を示唆する所見の判断を誤った結果、肺高血圧症、右心不全の発見が遅れに遅れ進行した。

(3) 肺高血圧症、右心不全の存在が判明した平成11年6月29日、被告S及び脳外科S教授(当時院長)はこの事実を隠蔽し、医療情報の提供も一切せず、亡E子を即座に専門施設に転院させなかった。その結果、右心不全が一層進行した。

(4) 平成11年7月29日、亡E子は検査目的で入院した。亡E子の右心不全は高度であったが、治療の開始は8月7日からであり、右心不全対策の強心薬の投与は8月10日からであり、あまりにも遅すぎた。

(5) 被告医院が治療のできる専門施設ではないのに、亡E子を入院させたこと。

(6) 以上から、本件は、被告医院における外来診療、隠蔽及び入院診療すべてが亡E子死亡の原因であると確定することは容易である。訴状34頁で既述したように、最終的に予後を決定するのは、右心不全に基づくうっ血所見と低心拍出状態である。まさに、この右心不全の発見の遅れと治療の開始の遅れが亡E子にとって致命的な結果となった。被告S及び被告医院の医師らの右心不全に対する診断能力不足と認識不足が原因である。

2. 従って、肺高血圧症の存在が疑わしい時点、即ち、遅くとも平成11年1月初旬に専門施設へ転院する必要があった。

以 上


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