肺高血圧症とは、肺に血液を送る肺動脈の血圧が高くなる状態を指します。通常は「安静時の肺動脈の平均血圧が25mmHg以上」と定義されています。
肺動脈に血液が流れにくくなると、そこに血液を送り込んでいる右心室に負担がかかります。右心室はもともと高い圧力に耐えられるように出来ていません。このような負荷のかかった状態が続くと、右心房を含む右心系の機能が障害され、右心不全という状態になり、全身の血液の循環に障害がでてきます。
肺高血圧症の原因で多いのは心・肺疾患です。これに対して、慢性肺血栓塞栓症、原発性肺高血圧症、膠原病などでは、肺血管自体が障害され、肺血管抵抗が増加することが、肺高血圧症の原因となっています。
心・肺疾患、膠原病の場合は肺高血圧を合併する前から基礎疾患の診断がついていることがほとんどですが、慢性肺血栓塞栓症、原発性肺高血圧症では、肺高血圧症をみつけだしてから、診断していくことになります。
肺高血圧症は、原因となる疾患により程度の差はあるますが、肺でのガス交換機能の低下と右心負荷の両者を併せもつことが基本的臨床病態です。
肺動脈圧の上昇が急激でなければ右室は適応でき、心拍出量が減少する時期はかなり遅れます。安静期にも心拍出量が低下して状態が悪化しはじめると、以後の進行は通常急速であり、予後を予測する最も重要な血行動態指標は、肺動脈圧そのものではなく、右室拡張期圧や右心房圧から導かれる右心機能の良否です。
最初に病院を訪れるきっかけとなった症状の中で最も多いのは、動いた時の息切れですが、この症状だけで肺高血圧症を疑う医師はいません。そこで検査が必要となります。
肺高血圧症をみつけだすには、心電図、胸部X線検査が有用です。さらに心エコー検査を行えば、肺動脈圧の推定ができます。
■ 症 状
肺高血圧症には特有の症状はありません。検査(心電図、胸部X線、心エコー)につながることが大切です。
【注意】 医学の教科書には、下肢のむくみが生じるほどであれば体重も増えると書いてあります。下肢のむくみが続いているのに体重が増えないのでたいしたことはないと考え検査をしない医師には、検査を依頼するか医師を見限るかどちらかが必要です。下肢のむくみがあっても食欲がないと、初めの頃は体重は増えません。体重が増えた時には腹水(腹囲の増大で気づく)も認め、重症になっています。
■ 検 査 所 見
肺高血圧症をみつけだすには、医師が知っていなければならない必須の検査所見です。
1. 胸部X線写真
【その他】末梢血管が細く、肺野が明るい、という記載もありますが、撮影条件による差を考えればこれを有意の所見と捉えることは困難です。
2. 心電図
正常の心電図を知っていること及び右心負荷所見(右房負荷、右室負荷、右室肥大)をすべて知っていることが必要です。
3. 心エコー・ドップラー検査
心エコーを、ルーティン検査として行うことが重要と思います。出来の悪い医師ほど検査をしませんから。
【注意】 心尖部での収縮期雑音を聴取するまで、全く診断が出来ていない医師は、心尖部での収縮期雑音が三尖弁逆流を意味するとは判断できません。しかし心雑音を聴取したのですから、心エコー検査を依頼しましょう。そうすれば肺高血圧症をみつけだすことが可能です。
<参考文献>
特集:慢性肺高血圧症,Heart View,8:2004
難病センターからの回答