【談話サロン-第1回補足−ゲスト明都氏の慧眼について−】

  この談話サロン、色々考えた末に思い立って第1回を今から5年前に掲載しましたが、その後ものの見事に企画倒れというか、どなたからもゲストの申し出がありませんでした。(まああれだけ「身内」に値するネット界、個人サイトを批判したら引かれるのも当然だったかもしれません^^;)。
 しかしこの補足は、あの判断が間違っていたとか反省とかのために書くのではありません。その逆で、明都氏の感じ方と予想が見事に的中していたことを改めて讃えるためです。

 談話サロンで、明都氏はアニメ劇場版第二作「鏡の中の無幻城」に関してこう述べておられました。

>原作者が劇場版に関与しているという事、それをファン側にアピールしたかったんでしょう。
>キスシーンについても、わざわざ高橋氏の了解を得たということは、
>そうした描写を入れることが二次創作者にとって‘禁忌’を侵すことであると十分理解していたからだと思います
>心情的繋がりの描写をこれまでずいぶん省き捻じ曲げてきたアニメが、
>原作をさし置いてキスシーンを入れさせてくれだなどと、よくもまあ申し出られたものだと感心してしまいます(笑)。
>アニメ制作サイドの安易な客寄せ姿勢には高橋氏もきっと落胆したんじゃないでしょうか。
>あの頃おぼろげに思ったことは、これで原作での犬かごキスシーンの可能性は一気に減少してしまったなってことでした。

 明都氏がおっしゃったとおり、原作では最後まで犬かごのキスシーンが描かれないまま終わったわけです。

>桔梗、犬夜叉、かごめの3人の関係に目くじらを立て批判する一方で、
>七人隊の行ってきた残虐行為には目を瞑る事のできる人――
>そればかりか自分の作品の中で七人隊の美形とヒロインを無理やりくっつけ、
>いちゃつかせて喜ぶことのできるような人は、まず間違いなく‘歪んでいる’わけで、
>当然かごめや犬夜叉側の人間ではなかったのだということなんですね。
>実際、そんな二次創作物に対して気分を害されたり、落胆されたりしている方々は、
>きゃあきゃあ言って賛美する人の数の比ではないんです。
>それこそ無責任に騒いでいるだけの‘熱し易く冷め易い妄想族’の声って、
>少数派でもやたら声が大きくって目立ちますからね。
>それを多数派の意見と勘違いして‘人気作家’気取りで恥知らずな作品を作れば、
>周囲から軽蔑されるのは自分なのだということを十分肝に命じておいてほしいものです。

 当時、いわゆる「同人的要素」と称して「男性キャラ同士」や「ヒロインと悪役七人隊キャラの絡み」等を小説化して書きまくっていた犬サイトは、アニメ終了と共に急速に消えていった感があります。まさに明都氏のおっしゃる‘熱し易く冷め易い妄想族’だったことを自ら証明したわけです。(まあ一般的に同人萌え層というのは作品から作品へ渡り歩く人種で、あの時期にはたまたま【犬夜叉】の特定カップリングに乗っかっていたけれど、ほんの数ヶ月ですぐ飽きて飛び去っていっただけ、ともいえるのですが^^;)

>今一度‘原作の犬かごはキスすらしていない間柄’であるという原点に立ち戻って、
>その意味、又は意義を考えてほしいですね。
>高橋氏も心からそれを望んでいるはずと思いますし、
>その作品の端々にもそうしたメッセージは込められているように思えるからです。

 談話サロン第1回を本サイトに掲載した約2ヶ月半後にあの第355話「かけらを使う」の回が少年サンデーに掲載されました。あれほど明確でわかりやすいメッセージは初めてで、結局アニメ犬夜叉はあの回の原作なぞりで最終回となったのでした。その数ヶ月後に劇場版第四作「紅蓮の蓬莱島」が公開されたのですが、ほとんどわかっちゃいなかった(-_-;)。
 それ以降4年間、【犬夜叉】は劇場版やTV放映はおろかOAV化の話すら聞こえてきませんでした。(高橋留美子原画展の会場限定OAVという話はあったようですが…)やはり原作ファンは皆ソッポを向いてしまい、一時期騒いでいたアニメファンは雲散霧消したのです。

>本当のファンなら最後まで作者を信じ、原作世界の素晴らしさを尊重し、
>作品を見守ることができるはずと信じています。
>【犬夜叉】という作品を本当に愛し、キャラ達を大切に思うというのは、
>彼らにお説教を繰り返すことでも、無節操にベタベタいちゃいちゃさせることでもないはずですよね。
>彼らの置かれた立場や想いに心を沿わせ、その生き方を尊重してあげられることだと思います。

 その後の原作の展開は、まさに本物の読者層にこそ理解できるものだったのです。
 弥勒は第487話で「生き方を選ぶ」と語りましたが、命を粗末にしたら珊瑚が許しても俺が許さないと釘をさす犬夜叉にありがとうと返します。桔梗は犬夜叉とかごめだけでなく、弥勒、珊瑚、琥珀それぞれの命懸けの奮闘に接して考え方を変え、最終的には琥珀の命を繋いで彼らに後を託したわけです。

>私の考えるキャラ達の幸せとは、誰かと誰かがくっついてラブラブなんてものではないんですよ。
>私は高橋氏のお人柄を考えるにつけ‘長い間付き合ってきたキャラ達に対して、
>それぞれ温かい視点で幕を閉じてくれるだろう。居場所を用意してくれるだろう’
>――それを強く感じているんですね。
>人が生きるためには何が一番必要なのか、
>そうした‘優しい視点’で物語の終幕を迎えてくださるように思うんです。
>例えそれが恋愛視点のみで物語を楽しんできた読者の人達にとって不満の残る終幕であっても、
>キャラ達それぞれが安らげる‘揺るぎない場所’を見つけてくれたら…
>それが私の一番の願いでもあるんです。

 ここなど読み返す度に唸らされます。原作【犬夜叉】の最終回は、まさにそういうものだったからです。
 登場したキャラ達は誰もないがしろにされることがなく、ストーリーの展開過程で死亡した神楽、桔梗、神無や「身を引いて去った」鋼牙も、それぞれ説得力のある退場ぶりを丁寧に描かれました。悪役サイドの白夜やラスボス奈落もああいう末路で、考えさせるものを残しました。最終回で描かれた「3年後のキャラ達」は皆、「少しずつ変わっていく日常」を元気に生きていました。連載12年の大作は、生き残ったキャラ達それぞれの“居場所”を描写されて完結したのです。

…改めて思うに、明都氏のようなファンこそがサイレントマジョリティだったのではないでしょうか。
 私の知人には「何かの対象を好きでい続けたいなら、ネット界や掲示板などには近づかない方がいい」と言う人がいますが(^^;)、これはある意味当たっています
 漫画やアニメや映画に限らず、文句や悪口を書く者の声=負のエネルギーの方が目立つうえに、蔓延して伝染する頻度が高いからなんですね。
 しかしそんな酷い人達ばかりでは決してない。ちゃんと見る目を持った素晴らしい読者もファンもいたのだと覚えておきたいものです。コミックス最終第56巻を読み終えた今、改めて明都氏の先見の妙と慧眼ぶりに敬意を表します
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