【今後の展開予想】…不定期更新(^_^;)

2004年8月

 これまでの作品の流れから節目を見直すと、
1.殺生丸&鉄砕牙登場[第2巻]
2.桔梗復活[第5巻]
3.弥勒登場[第6巻]
4.奈落登場[第7巻]
5.珊瑚&琥珀登場[第9巻]
6.りん&天生牙登場(殺生丸の転機)[第14巻]
7.鋼牙登場[第14巻]
8.神楽&神無登場[第15巻]
9.犬夜叉別れを決意〜かごめ想いを自覚[第18巻]
10.妖犬暴走〜犬夜叉父親越え[第19巻]
11.鬼蜘蛛復活(無双登場)〜再吸収[第21巻]
12.七人隊登場〜全滅[第24巻〜28巻]
13.奈落新生〜桔梗死亡!?[第29巻]
14.奈落の赤子(白童子)登場[第30巻]
15.聖さま登場〜桔梗再復活[第32巻]
16.父の墓標で最後の欠片争奪戦[第33巻]
17.魍魎丸登場[第34巻]
18.御霊丸登場[第35巻]
19.犬かご絆を確信[第36巻]
が挙げられます。現在、いよいよラストスパートに向けて加速中です。

 「人間のゆがんだ想い・妄執をつなぎとして集まった妖怪の集合体」である奈落ですが、一方で桔梗を慕う心が邪魔をして行動を制約します。桔梗抹殺のために時間を稼いで人間の心の部分を赤ん坊の形で分離したものの、その赤ん坊もまた分断されて白童子が誕生。残った赤子こそが奈落の心臓で、神無によってかくまわれた後に魍魎丸という鎧を手に入れました。

 犬夜叉一行が初代宝仙鬼から譲り受けた最後の四魂の欠片は、奈落にとってかわろうと企んだ赤子が魍魎丸の体に取り込みました。奈落が汚れた四魂の玉を完成させることにこだわるのはやはり完全な妖怪になるためで、残る欠片は鋼牙の足、琥珀の背中と在処がわかっているから、桔梗の抹殺を優先する戦略ですね。既に叛意を明らかにした白童話は切り捨てられ、神楽も琥珀も裏切りを見抜かれてタイトロープ状態。
 奈落にとっては心臓の赤子が鎧をまとい、自分に逆らおうとした白童子を葬って見せしめにした今、怖いのは桔梗ただ一人。犬夜叉一行や殺生丸によっていくら体を砕かれても、魍魎丸さえ隠しておけば問題ないわけです。

 殺生丸は奈落を仕留めるには心臓を殺す以外ないと気付いており、魍魎丸を一度逃がしていますから、今度出会ったら斬り捨てるまで退かないでしょう。奈落としては魍魎丸を殺生丸に会わせるわけにはいかないので、何らかの手を打つでしょう。

 一方桔梗がかごめに委ねた矢は、結界を介して白童子に命中した時に、心臓である赤子に何らかの接点を作っていたと思われます。邪気を追っていた桔梗がいきなり赤子に出くわしたのがそれでしょう。鏃に塗られていた鬼蜘蛛の洞穴の土は、白童子と赤子に奈落に対する叛意を「思い出させた」ようにも思えます。その白童子が風穴に消えた今、残った赤子はどうするでしょうか。しかし奈落の狙いはあくまで桔梗であり、彼女さえいなくなれば、心臓を自分の体に戻すつもりなのでしょう。

 奈落を仕留めるのは誰なのか。この作品の流れを振り返ると、最近は「誰も奈落を完全に滅し去ることはできないのではないか」と思えてきました。つまり邪悪なる本体や鎧である魍魎丸が四散しても、心臓の赤子はそのまま人間として成長するのではないかと…となれば奈落の復活やその悪行を封じ込める手段は何であるのか? そこにコミックス第1巻のかごめの独白‘日暮神社の由来’が絡んでくるのではないかと思えるのです。

 奈落の天敵が桔梗であるなら、その魂を受け継いだ形で戦国時代にやってきたかごめは、やはりこの物語のキーパーソンです。桔梗が恋心を寄せ、無惨に仲を引き裂かれ、限りない怒りと哀しみを背負って封印した半妖の少年・犬夜叉とかごめの出逢いと冒険の日々は、自分は死を選ばざるをえなかった悲劇の巫女・桔梗の‘願い’だったのでしょう。果たしてかごめは、前世の自分・桔梗の無念を晴らすことができるでしょうか。

 ところで現在少年サンデーで『からくりサーカス』を連載中の藤田和日郎氏の前作『うしおととら』は掛け値なしの名作大河ロマンです。特にクライマックスになるコミックス最終巻には、それまで物語に登場したほとんどすべてのキャラクターが勢揃いして、それぞれの立場と性格をしっかり主張しながら、ラスボスである白面の者との最終決戦を鮮やかに盛り上げていました。その徹底ぶりは漫画史に残すだけの価値のあるものでした。

 これまで膨大な数の方々が話題にされている『犬夜叉』の最終回を想像するにあたって、『うしおととら』のケースが参考になるかどうか、とふと思います。藤田氏のファンの方はしばしのご容赦を(^^;)。

 『犬夜叉』のこれまでの短期シリーズに登場したゲストキャラといえば、第3巻の武田信長、第5巻のなずな、第10巻の名主の息子、第11巻の夢心、第12巻の地念児、第15巻の小春、第20巻のサツキ、椿、第22巻の紫織、第23巻のお祓いばあさん、第24巻の猿神さま、第26巻の聖島近くの村の少年…もっぱら普通の人間か法僧、悪役の黒巫女、穏健な性格の半妖もしくは地神さまです。

 基本的に奈落は、『うしおととら』における白面の者のようなとてつもなく強大な大妖怪ではありませんし、そういうタイプになろうという野心があるようにも感じられません。

 また鉄砕牙はストーリーの進捗に沿って少しずつレベルアップしていきますが、『うしおととら』における獣の槍のように膨大な人間や妖怪の因縁が絡んでいるアイテムではありません。むしろそれは四魂の玉の方で、奈落一派がずいぶんご執心のようですから最後まで重要な意味を持ち続けるのは確かでしょう。

 作品の基本構造の違いからいっても、ゲストキャラ達の性格や能力からいっても、『犬夜叉』の最終回シリーズに、過去のゲストキャラが勢揃いするようなシチュエーションはいささか考えにくいですね。

 『うしおととら』の最終回は、ラスボス・白面の者が最期に「人間の赤ん坊」のビジョン(望み?)を表して死亡、主役の片方(とら)が死亡(消滅)、獣の槍はもう一方の主役(うしお)を人間に戻して命を与えるために消滅、という印象的なラストでした。赤ん坊といえば、奈落の方は既にずいぶんとヒネた性格の分身を生み出していますし、高橋氏の作品を愛読してきた者としての直感では、犬夜叉とかごめが、うしとらコンビのような別れ方をするようには思えません。

 連載開始当初に、一部で『犬夜叉』は『うしおととら』のパクりではないのかという意見がありました。連載第1回で一方の主役が封印されていたもう一方の主役を開放し、コンビを結成して妖怪たちと戦うことになる、というのが共通だったためですね。ただ
1.両者の性別が違う(とらは前世からしてやはり性別は男とみるべきでしょう)
2.封印していたアイテム自体はあっさり消滅した(獣の槍は最終回まで超重要アイテム…いや立派に”一人のキャラクター”であり続けた)
3.桔梗や殺生丸にあたるキャラはうしとらワールドには存在しなかった(とらは単独の妖で血縁者をもたなかったし、うしおは同性で、三角関係を形成するような女性キャラも出なかった。二人とも妖や人間の女にずいぶんモテたけど^^;)
あたりはまったく様相が異なります。

 こうしてみると作品論として、最終回を盛り上げる手法で『うしおととら』のケースはちょっと適用しにくいようです。藤田氏のファンも高橋氏のファンも「当たり前だ。一緒にするな」とお怒りかもしれませんが、「どこかで見た話」にしないことこそ創作家のオリジナリティーの証ですから、まあ一介のファンのたわけた比較…程度にとらえてご容赦くださいm(_ _)m。名作『うしおととら』に負けない盛り上がりと感動をもたらしてくれることを期待しています。
戻る