タルカ tarca,tarka

 木製の縦笛で、息を吹き込めば音が出ます。大小2種類があり、等間隔に6つの穴があいています。そのため西洋音階では表すことのできない不思議な音階をつくり出しているのです。また大と小では完全5度離れていて、一緒に吹くとそのえもいわれぬハーモニーがあなたを魅惑の世界へと誘います。そんなタルカが民音の中でマイナーな存在になってしまっているのは、タルカが主に「アウトクトナ」と呼ばれる伝統音楽に用いられ、現代的な曲にはほとんど用いられないためです。しかし、タルカの妖しい魅力にとりつかれる人は確実に増えています。あなたもいかがですか?

ギター guitarra

 ユニークなものが多いフォルクローレの楽器の中で、この何の変哲もないクラシックギターが楽器の一つとして数えられることに驚きを覚える人がいるかも知れません。
 フォルクローレにおけるギターの役割は、ストロークによってリズムを刻んだり、ベースやアルペジオ、爪弾きなどをこなしたり様々ですが、ケーナやチャランゴといったフォルクローレの花形楽器の裏に隠れてなかなか目立つことができません。また、ギターを手にとった始めの頃は、汚い音しか出せない、指が早く動かない、指が痛い、などの壁にぶつかることでしょう。また、フォルクローレ独特のリズムを会得するのも大変です。
 しかし、そんな苦労の多そうに見えるギターも、慣れてくれば色々な曲をこなせるようになり、その楽しさといったらたまりません。初心者向きでありながら奥行きも深く、いちばんよく使われているクラシックギターだけに、工夫次第では一つの曲でも千変万化の表現が可能です。
 さあ、とりあえずギターを手に取ってみて下さい。辛いながらも、少しでもその魅力を見い出せたなら、あなたも近い将来、きっと演奏の屋台骨を担う影の技巧師となれるでしょう。

チャランゴ charango

 南アメリカ大陸を征服したスペイン人が持ち込んだギターを、現地のインディオがまねして作った楽器がチャランゴです。しかし形はギターというよりもウクレレなどに似ていて、小さく可愛らしいものです。元々胴の部分はアルマジロの甲羅で作られていました。
 チャランゴは非常に張力の強い弦が2本1組で5組、計10本張られており、上からソドミラミという音で並んでいます。音域は高くギターの開放弦の最高音がチャランゴの最低音と同じでその上の2オクターブをカバーしています。音の出し方はギターと同じで、すべての弦をジャランと鳴らすコード奏法が主体です。フォルクローレにおいて、チャランゴはリズム楽器としての性格が強く、演奏者には正確なリズムキープが要求されます。コードによる演奏の他にも激しくかき鳴らしたり、弦を一本ずつ爪弾いたり、アルペジオのような繊細な演奏方法があったりと、バラエティー豊かな楽器なので、おもしろいだけでなく、演奏者の個性が表れやすいともいえるでしょう。それでも物足りないという人は弦楽器だけの曲を聴いて自分だけの弾き方を見つけてみるのも良いかもしれません。
 チャランゴは見た目通り結構もろい楽器です。上で書いたように弦の張力が非常に強いため、共鳴板と弦を結ぶコマがバーンと飛んだり、ひどいときには共鳴板ごと取れてしまったりということがあるそうです。あちこちぶつけたり落としたりしないよう注意して扱いましょう。
 ケーナやサンポーニャのように主旋律を弾くことはあまりありませんが、音が高いので、演奏中も比較的よく音が聞こえますし、フォルクローレにはちゃんとチャランゴだけの見せ場を含む曲が多いので、練習しがいがあります。一通りのコードとリズムを覚えてしまうと、演奏できる曲があっという間に増えるのでがんばりましょう。

ロンロコ&ワライチョ ronrroco & walaycho

 2つともチャランゴに似た楽器で、ロンロコはチャランゴよりも一回り大きく、ワライチョは一回り小さいものです。
 ロンロコはチャランゴと同じように調弦されますが、弦によってオクターブ違いの弦があり、深みのある音が出せます。ボリビアのカルカスというグループが考案した楽器で、彼らの曲に多用されていますが、それ以外ではあまり用いられていないようです。
 ワライチョはチャランゴよりも高く調弦され、曲に応じてチャランゴの3度上や5度上にするそうですが、普段の演奏では滅多に使いません。

ボンボ bombo

 和太鼓に似た太鼓です。上面と底面にはリャマというラクダの仲間の皮が張ってあります。側面の紐で皮の張り具合を調節し、一方の面の真ん中を叩きます(もう一方の面は皮を張ることができません)。肩に担いで叩いたり、置いて叩いたりします。一つ一つのリズムに基本の叩き方のようなものがあって、それに装飾をつけて曲感を出したりします。弦楽器や管楽器に比べると目立たない存在ですが、結構奥が深く、また曲の出来にも大きな影響を与えます。

 上の文章について、12期の矢野泰紀さんから、ボンボの皮は、リャマではなくてチーボ(山羊)の皮が一般的だという情報をいただきました。

チャフチャス chajchas

 フォルクローレで使われるパーカッションのなかでは、ボンボのつぎによく使われる楽器です。チャフチャスはリャマの爪をたばねたものです。チャッ、チャッ、という音がします。ただ、音は小さいのでほとんど目立ちませんが、曲によってはボンボを使わないものもあり、このチャフチャスがリズムをリードすることもあるようです。
 鳴らし方は、ふつうは振り下ろすのですが、からだに打ちつけたり、足などにつけてならすこともあります。
 値段は3000円から4000円くらいとおてごろなので、自分のチャフチャスを持つのもいいのでは?

マトラカ matraca

 始めてこれを見て、すぐに楽器だとわかる人は結構少ないのではないでしょうか。無理もありません。音を聞いてみたって、そうは思えないくらいですから。この音は、箱の中に住む悪魔の叫びではないかと、僕は思うのですが、真面目な人は、中にあるヘラのようなものが、取っ手を回すことによって鳴るのだといいます。手元で雑布を絞るようにしてリズムを刻んだり、頭上で振リ回したりします。モレナーダ(「リズムのお話」参照)系の音楽で良く使われます。東大にあるのはかなりうるさいのですが、他の団体には静かなものもあるようで、材質も木製から、アルマジロの胴(!)で作られたものまでさまざまです。

ギロ güiro

 洗濯板のようなこの楽器、見たことがある人も多いでしょう。僕は小学校の時工作で作りました(簡単でした)。胴に刻まれた溝を棒でこすって音を出します。こする強さや向き、棒の太さによって音に変化をつけます。パーカス棚にある千枚通しのような棒が、いちおう本物のバチですが、硬い音がするので個人的には好きではありません。今は菜箸を愛用していますが、もっと細かくてしなやかな棒の方が、粘っこい音色が出て良いでしょう。

マプト mapto

 息を吹き込むと中にはいっている玉が震えて音が出るという笛です。左右の穴を押える加減で、音を変えられます。なぜ、これが打楽器のところで紹介されているかは、僕の知ったことじゃありません。(編注:リズム楽器だからかな?)

マラカス maracas

 誰でも知っているでしょう。振るとチャッチャッと音がするやつです。誰が見たのか知らないけれど、中にはビーズがはいっているそうです。たかがマラカス、されどマラカス。うまい人が刻むリズムはひと味違います。

ボンゴス bongos

 小さなたいこが二つセットになっています。座って足の間に挟んでたたきます。二つのたいこは大きさが違っていて、当然音も違います。見ため以上に妙に味のある楽器です。


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