JANK METAL MAD


[とある企業の抗争]



企業ビルのゲートを通るなり怒声と派手な破壊音が聞こえる。
ドリンク用のゴミ箱が転がって、そこから起きあがる奴。
同業者、ジャンク乗りだ。
ここじゃ時々、見る奴だな。
フリーでやっていて最近は北の方でグール狩りをしている。
「どうなんだ!おなじ企業所属として、協力する気はあるのかよ!」
激しい剣幕でつっかかっているのは戦闘派の1人だ。
最近3人ほどでチームを組んだやつだ。
端末を操作してミッション完了の報告をしつつ、話に耳を傾ける。
まあ、派手にやっているので勝手に聞こえてはくるが。
「あなたの言う通りかもしれないが、他企業の妨害ばかりが目的じゃない。」
「まだそんな事を言うのか。今、どれだけ押されているのかわかっているのか!」
「私は私のやり方で企業に貢献している。」
「ジャンクがあるならそれをちゃんと使えってんだ。」
「各地の調査もグールの殲滅もジャンクを使う事だ!」
「そんなんじゃ甘いって言ってるんだよ!!」
そいつに掴みかかろうとした戦闘派の前に数人が立ち塞がる。
「腕力っていうのは頂けない。」
ひとり、ゴツイ奴が拳を構える。
ちょっとしたチームの代表じゃないが、中堅どころの奴だ。
結構、面倒見がいいので名は知られている。
「あんたがなんでそいつをかばう!」
「まあ、待てよ。」
そっちを見ると騒ぎは広がっているらしく、ロビーのジャンク乗りは3つに分かれている。
戦闘派、敵企業のジャンクと積極的に交戦している奴ら。
狩人派、グールの殲滅を主としている者たち。
中立派、まあどちらでもなく、どちらでもある奴ら。
もしくは、俺みたく関わらないか・・だ。
言い合いは続いている。
不毛だ。
俺たちジャンク乗りにはいろいろ仕事がある。このアルター8開拓の。
グールって怪物退治もそうだし、どこかの地域を押さえ、
企業の連中が専属的に調査できるようにするのも俺立ちの役目だ。
当然、他の企業所属のジャンクとは交戦、戦って弾丸で話すことになる。
各地のグール退治も、敵ジャンクとの交戦もリスクは違うが共に企業に貢献することだ。
ごちゃごちゃ言ってそいつが企業を抜けたらどうするつもりだ。
戦闘派の過激な奴は昔からこうやって騒ぎ是を起こす。
何時の時代もどこでも、意見がぶつかることは多いもんだ。
そいつは最近、自分が戦闘不能になってばかりだって話しだ。
憂さ晴らしだろうな。人に当たるなんて嫌だねぇ。
おう。名案。
あんまり関わりたくはないがな。
言い合いは数人を撒きこんで、止まらなくなりつつある。
パンパン!
「ちょっと待て、お前ら。」
大きく手を叩きつつそこに割り込む。
左右を見て両方を止める。
「ごちゃごちゃ言ってないでよ、JMで戦って決めればいいんじゃねえか?」
「馬鹿か、こんな奴に俺が負けるはずねぇだろ。」
「わかんねぇぜ。お前はいいんだな?」
「それでいいなら当たり前だ。」
当然の事ながら交戦派の奴は飛びつく。
もう片方、そっちに歩いていくとちょこちょこと”説得”秘策を話してみる。
そいつは少し考えこんだが、納得している。
「よし。受けよう。ただ私が勝ったら今後文句を言うのはやめろ。
私以外の非交戦派に対してもだ。」

そんなこんなで草原の片隅。
当然、ジャンクに乗ってきている訳だ。
いまの時間帯はまだそんなに戦闘も激しくない。
非交戦派の周囲には8機ほどジャンクが集まっている。
交戦派の方は落ち着いたものですでに準備済みだ。
後ろに仲間が2人、位置している。
『そろそろ始める。』
言い出した以上、俺が立会人だ。
非交戦派の周囲のジャンクが離れていく。
お互い距離は200ほど。
交戦派の方は逆関節脚、マシンガンとミサイル。
非交戦派の方は4脚、ライフルとマシンガン。
『始め!』
そう叫ぶと互いに一気に前進する戦闘派。
ライフル相手でマシンガンじゃうまく距離を詰めないとだめだ。
ライフルの方は無駄弾は撃てない。発射後の硬直を狙われたら終わりだ。
だがライフルの着弾衝撃はでかい。
1発当てれば一気に勝負を決められる。
非交戦派はマシンガンをかなり遠くから牽制にとばらまき下がりつつある。
交戦派は左右にうまく動きながらじりじりと距離をつめる。
そろそろか?
ドカン!
突然、起きた爆発、動きが止まった交戦派。
パシュン!パシュン。ダダダダダダ。
そこにライフルが左右2発、撃ちこまれマシンガンが追い撃つ。
決着はあっさりと。
『そこまで。』
「なんだ今のは!認めねぇぞ。こんな勝負!!!」
交戦派が叫ぶ。
「戦いで決めようって言った奴が、がたがたいうな。
お前は戦場の状況も見えないのか。戦ってて撃破されて文句を言うのか?」
さっき頼んだチームの顔役と中堅、他数名も周囲で立ち会っている。
この時のためだ。
まわりのジャンクからも非交戦派の勝利を称えている。
この数じゃ、さすがにどうにもならない。
最近、あちこち当り散らしていたらしい交戦派。
結構、敵作っていたみたいだ。
しぶしぶ、負けを認めて仲間と下がっていく。
おとなしくなればいいけど。
「まあ、無理か。」
俺はジャンクのソフトを起動する。
『除去を始めるからみんな、どいてくれ。グループ、組んだみんな、頼むぜ。』
まあ今回の仕掛けは簡単。
交戦派の奴が逆関節愛好家なのは知っていたから・・
開始前、非交戦派の周囲にいたジャンクたちが離れつつ順に地雷をしかけていったのさ。
ちょいと値がはるが、それくらいの出費は覚悟したのが非交戦派。
最初の説得、アドバイス、秘策がこれだ。
まあ、地雷探知ソフトなんて最近、誰も使いやしない。
他の地雷が次々、除去されていく。
ま、非交戦派本人が置いたものじゃないということで。
おそまつではあるが。
なによりこんな抗争は無意味。
解散を告げると周囲も戦場に向かう奴、グールを狩りに行く奴。
皆、散っていく。
願わくば、我が所属企業が有利でありますように。
ま、俺は有利な方についていくだけなんだがね。









<あとがき>
掲示板の書きこみをみつつ、まあいろいろな人はいるけど、
アルター8じゃそんなことで酒場とかあれば喧嘩とか起きていそうだということで。
なんとなく。片手間に書いた短編小説。
企業への貢献度っていうのはなかなか難しい問題ではありますね。