〜 The Trans Alaska Pipeline 〜


 アラスカに無くてならないものを一つあげるとすると、パイプラインと答える人が多いかと思います。 アラスカ繁栄の歴史の中で、石油にまつわるビジネスは1968 年に北極海に面した街、Prudhoe Bay において石油が発見されたことに始まります。 その後、1970 年代に8つのオイルカンパニーにより、北極海からアラスカ湾まで、アラスカを南北に縦断するパイプラインが建設されました。 わずか3年足らずで、総距離 800 mile(1280 km)にも及ぶパイプラインが、おおよそ1000 人の労働者により建設されました。

 パイプラインは、アラスカのほかではロシアに数本建設されていますが、距離ではこのアリエスカ・パイプライン (Alyeska Pipeline) が世界最大のようです。 このパイプラインは、永久凍土地帯、川、山脈等、様々な地形の上を這い、時に土壌の中に埋設され、アラスカ湾に面した街、Valdez を目指します。

 南北を縦断するこのパイプラインは、Dalton Highway や Richardson Highway でよく見ることが出来ます。 特に、Richardson Hwy 沿のアラスカ山脈を越えるパイプラインは中々圧巻です。 Fairbanks 近郊の町、Fox では、観光用としてちょっとした施設を設けてパイプラインを紹介しています。 上の写真は、施設の様子です。 施設では、無料でアリエスカ・パイプラインのパンフレットを配布され、パイプの構造を説明するために使用済み(?) パイプが展示されています。 北部の永久凍土下に埋設されたものは、凍土の融解を誘発させない様、また、伸縮・膨張によりパイプが壊れない様になど様々な工夫がされており、寒冷地工学として研究されています。 ちなみに、パイプは日本製だそうです。

 昼間のパイプラインも、それはそれで良いのですが、写真好きの私としては夜のパイプラインに一段と魅力を感じます。 夜に関しては施設が閉まっているため、他の観光客はおらず、ただ黙々と写真を撮るだけなのですが、 月の光にライトアップされるパイプラインと雪とのコントラストは、非常に綺麗です。 一般にパイプラインといえば、アラスカ山脈や北極圏といった一般人が到底、間近まで接近することが出来ないような所を走っています。 それに比べるとFox のこの施設は、非常に難易度が低く、街明かりも比較的届きにくい場所にあるためオーロラと一緒に写真に収めることも容易です。 上の写真は、月明かりの日に撮影したパイプラインの夜景です。左のものは、微かにオーロラが写っています。 右の写真の奥に移る赤い光は、Fairbanks の街明かりです。

 左は、パイプライン直上に輝く月です。このパイプの中には、北極海の原油が流れています。 Prudhoe Bay の石油も確実に枯渇が近づいており、石油に代わる資源として天然ガスの産出が始まっているそうです。 その為、今のパイプラインに変わり、天然ガスを運搬するためのパイプラインプロジェクトが水面下で進行しているようです。 Prudhoe Bay からカナダに通し、東海岸につなげるこのパイプラインプロジェクトが、本格的に動き出せば、再び、Fairbanks がにぎやかになるらしく、 2004 年現在、街はそれを見越して新規のスーパーの建設等が始まっています。 建設費はもちろん、寒冷地工学、環境アセスなどの様々な研究予算もこのプロジェクトに割り当てられ、Fairbanks は近く潤うことになるでしょう。