S.T.D.(性感染症)

 性感染症(いわゆる性病)を漠然と、いやな病気、恥ずかしい病気と考えている方が多いと思います。しかし、性感染症は、皆さんが思っている以上に女性の身体に影響を及ぼすのです。

 治療法は少しづつ確立されてきたとはいえ、AIDSはやはり、命にかかわる重大な病気です。日本でも、次第に数が増えてきました。

 また、クラミジアは日本でもっとも女性に多い性感染症です。クラミジアに感染すると、不妊症や子宮外妊娠の原因になります。また、感染に気がつかずに妊娠すると、流・早産の原因になりますし、出産時に赤ちゃんに感染する可能性があります。さらに、男性に比べて症状が軽いことが多いのですが、その分、気がつかないうちに重症化しやすいといわれています。

 尖圭コンジローマのウィルスと同じ型のウィルスに感染すると、子宮頸癌になる可能性が高くなるといわれています。子宮癌検診で感染を診断することはできますが、治療法はありません。

 ヘルペスに感染すると、薬をきちんと内服しても、完全に治らずに、ずっと症状が繰り返すことも少なくありません。

 「性感染症にかかっても、治療法があるから、かかった時に治せばよいわ。」と、考えている方。それは、あまりにも安易過ぎます。

 今まで抗生剤がよく効くと言われていた淋菌にも耐性菌(抗生物質が効かない菌)が発見されています。

 また、ヘルペスやコンジローマといったウィルス感染に対しては、完全に治す薬はありません。

 クラミジアも薬を服用することで8割は治りますが、あとの2割の方は再発に苦しむことになります。

 性感染症に一度かかると、今だけではなく、将来にわたって身体をむしばまれ続けることになります。そして、女性の場合は、特に、妊娠に影響を及ぼすことになるのです。

症状 硬性下疳(痛みの無い潰瘍) 全身の湿疹(バラ疹) 扁平コンジローマ(外陰にできる表面が平らなイボ)数年経つと感染は脳(中枢神経)まで達し麻痺性痴呆を起こし、死に至る。

梅毒トレポネーマという原虫の感染によって起こる。妊娠中に胎盤を通して胎児へ感染する。先天梅毒といわれ、顔面の異常や骨軟骨炎・黄疸などの異常を起こす。妊娠初期に梅毒検査は必ず行うので、先天性梅毒は非常にまれとなっているが、成人の梅毒感染は、最近増加傾向にあるといわれている。

ペニシリン系・セフェム系抗生剤を注射や内服で10〜30日投与する。 

梅毒

症状 外陰部にできるカリフラワー状のイボ 痛みがあることもある

ヒトパピローマウィルスの感染によっておこる。ひどいものは電気メスで焼灼したり冷凍凝固術を行ったりする。一部の抗がん剤の軟膏が有効といわれているが、保険適応はない。完全に治療する方法は無いので、再発することも多い。

尖圭コンジローマを起こすウイルスと同じタイプのウィルスが、子宮頸癌の原因となることが知られている。同じタイプのウィルスなので同時に感染している確率が高い。子宮頸癌検診をすることで感染細胞を診断することはできるが、治療の方法は無い。

分娩時に症状が強く出ている場合は、帝王切開をして新生児への感染を避ける必要がある。

尖圭コンジローマ

症状 外陰部の疼痛(激痛) 外陰にできる多数の水疱・潰瘍

ヘルペスウィルスの感染によりおきる。初感染のときは発熱が起こり、外陰部の激痛が1週間くらい続く。自然に治癒するが、再発することが多い。

アシクロビルの内服・軟膏で治療するが、完全に治療することはできない。症状はおさまっても、ウィルスは細胞内に潜んでおり、体調をくずした時に再発する。分娩時にヘルペスの症状が出た場合には、帝王切開が必要となる。

外陰ヘルペス

症状 おりものの増加・色や臭いの異常 継続する下腹部痛 クラミジアに症状が似ている

現在、日本の男性に一番多く見られる性感染症。男性の場合は排尿痛や尿道から膿が出てくることで気がつく。クラミジアと同様に卵管や卵巣に炎症を起こし、不妊症の原因となりうる。また、気がつかずに妊娠すると児への感染の原因となる。新生児の髄膜炎の原因となることもある。

ペニシリン系、セフェム系の抗生物質を7〜10日内服し、治療を行う。比較的再発は少ない。ただし、パートナーと同時に治療することは必要である。また、ニューキノロン系やペニシリン系抗生物質に対する耐性菌が発見されているので、治療が難しくなりつつある。

淋病

症状 おりものの増加・色や臭いの異常 継続する下腹部の鈍痛 重症化すると腹膜炎をおこす

現在、日本の女性に一番多く見られる性感染症。不妊症の原因の2割はクラミジア感染といわれている。子宮外妊娠の3〜5割にクラミジア感染が関与している。流・早産の原因になるといわれている。分娩時にクラミジアの感染があると、児への感染が見られる。肺炎や結膜炎の原因となる。

マクロライド系、ニューキノロン系の抗生剤を2週間内服し、治療を行う。パートナーも同時に治療しないとお互いにやり取りをして(ピンポン感染)なかなか治らない。きちんと薬をのんでいても、2割くらいは再発すると言われている。

クラミジア

症状 黄色くあわ立ったようなおりもの。痒みが強い。

トリコモナスという原虫の感染。性感染症のひとつ。痒みやおりもの以外に膀胱などに感染することがあるので、膣洗浄だけでなく内服治療が必要。

メトロニダゾールの内服及び膣錠を使った治療を10日間程度行う。 

トリコモナス膣炎