子どもの権利 レバノンにおける
パレスチナの子どもの権利
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 レバノン政府は1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」実施に関して、1998年に「レバノンにおける子どもたちの状況」 と題する報告をまとめましたが、レバノンでパレスチナ人の為に働く NGOの連合体が2001年5月に政府の報告書を補うものとして作成し、 国連の「子どもの権利委員会」に提出したのがこの「レバノンにおけるパレスチナの子どもの権利」 (Rights of the Palestinian Child in Lebanon)と題された報告書です。

目次
 T.パレスチナ難民に関わる法律的問題
   ・国際法のもとでのパレスチナ人の地位とその集団的、個人的権利
   ・レバノンのパレスチナ難民に関する国内法と手続き
   ・結び
 U.レバノンに住むパレスチナ難民の状況
   ・人口と分布
   ・貧困レベル
   ・職業と収入レベル
 V.UNRWAと教育を受ける権利
   ・UNRWAより提供されるサービス
   ・UNRWAの教育プログラム
     ・一般教育
     ・教師育成教育
     ・職業教育
   ・教育を受ける権利
     ・学校の退学率と欠席率
     ・識字率
     ・学校・教室の過密(狭く貧しい学習環境)
 W.健康と福祉に関する権利
   ・子どもたちに見られる深刻な健康問題
     ・子どもの罹病率
     ・栄養失調
     ・生活水準
 
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T.パレスチナ難民に関わる法律的問題
■ 国際法のもとでのパレスチナ人の地位とその集団的、個人的権利
 1947年,国連総会でパレスチナ分割決議が採択された結果、イスラエルが建国され、 もとからそこに住んでいたアラブ人が故郷を追われて難民となったので、 国際社会はパレスチナ難民の問題に対してはその発端から責任を引き受けてきました。

 50年以上にわたり国連はパレスチナ人の民族的権利や政治的権利、 そして人道的支援に関して数々の決議を採択してきましたが、 その中でも最も早い時期に採択されたのがパレスチナ難民の故郷へ帰る権利(帰還権) とこうむった損失の補償を受ける権利を認めた1948年の総会決議第194です。 難民に関する国際的な協定と決議194が違うのは、難民法の主眼が補償と再定住にあるのとは逆に、 決議第194ではパレスチナ人の自らの国への帰還が力点となっているところです。 パレスチナ難民の最も大きな願いは祖国へ帰還を許されることです。

 パレスチナ難民には帰還権とともに、さらに多くの民族的諸権利が誰にも奪うことの出来ないものとして与えられています。 というのも彼らはパレスチナ民族全体の一部であり、他から干渉されることのない自決権を持っているからです (国連総会決議3236、1974年)。

 1949年にはパレスチナ難民の帰還権を損なうことなく人道的支援を行うために国連パレスチ難民救済事業機関 (UNRWA=アンルワ)が設立されました。その責務は決議194と結びついています。 UNRWAはパレスチナ難民が住んでいる各国政府の同意のもとで、彼らの救援の為に数々の任務を国際社会に代わって行うものです。
しかしほとんどのパレスチナ難民には国籍がありません。彼らはUNRWAの援助を受ける限り1951年に国連で採択された 「難民条約」やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の保護からははっきりと除外されています。 UNRWAにはパレスチナ難民の保護を保証するような権限はなく、 また、UNRWAが持つようなその機能を述べたはっきりした規則もありません。 UNRWAの機能は、例えば1982年のイスラエルによるレバノン侵攻といったこの地域の政治情勢に左右されながら発展してきました。

 国際的な保護の仕組みに入れないので、パレスチナ難民は特別に弱い存在となっています。 というのも、民族としての集団的権利は国際的には認められているものの未だに実現されてはいないところで、 個人としての権利の享受は民族としての集団的権利とは相容れないもの、それを否定するものとしてみられているからです。 このことはレバノンにおける彼らの法的地位にも反映しています。パレスチナ難民が公的社会的権利を持つことは事実上 彼らをレバノンに強制的に定住させることになると見られていて、パレスチナ難民にはそのような諸権利が拒否されているのです。

 パレスチナ難民に唯一公的権利を認めているのは,1965年にアラブ連盟が定めたカサブランカ議定書です。 この議定書はパレスチナ難民に市民権は別として、彼らの住むアラブ各国の国民と同じ扱いを受ける権利を与えています。 レバノンはカサブランカ議定書を修正と留保付で批准しましたが、その完全な実施には至っていません。

■ レバノンのパレスチナ難民に関する国内法と手続き
 カサブランカ議定書はパレスチナ人の民族としてのアイデンティティを認めつつ、 パレスチナ人の住むアラブ連盟各国で彼らに労働許可、雇用,移動の自由、居住権を認めるように求めています。 しかし、この議定書は各国の移民法や市民権法と調整されることなく、 議定書が国内法と対立する時は必ず国内法が優位にたちました。

 このためレバノンの法制度のなかで、パレスチナ人ははっきりと規定された法的身分[アイデンティティ]を持っていません。 パレスチナ難民はUNRWAに登録している限りレバノン政府のパレスチナ人局に登録することが出来ますが、 1956年以降レバノンに入ったパレスチナ難民を登録することがUNRWAには許可されていません。 登録難民は外国人として位置付けられ、レバノンの法律のもとでは彼らの公的,社会的、経済的な基本的諸権利は否定されています。 特例措置としてパレスチナ人局が身分証や旅行書類を発行することはあります。 他の外国人と同じくパレスチナ人住民も労働許可に基づいて就業することができますが、 数多くある職業のほとんどから締め出されています(現在、70数種類もの職業を禁止されています:事務局注)。 外国から来た他の賃金労働者と違うところは、パレスチナ人は各種の補償や社会保障の掛け金を給料から天引きされているにもかかわらず、 それらのサービスや補償を受けられないということです。レバノンの労働法は他の国でレバノン市民の受ける待遇に対応して、 その国から来た労働者を扱うという互恵の考えに基づくので、国のないパレスチナ人は他の国から来た労働者より認められる権利、 特典は少ないのです。

■ 結び
 レバノンにはパレスチナ難民を管轄する機関が二つあります。 パレスチナ難民の公的権利についてはレバノン政府が主に責任を持つ一方、健康、教育、 救援に関する権利はUNRWAが代表する国連の主たる責任となっています。 重なり合う分野も多くありますが、レバノンの法律やレバノンとUNRWAとの合意のなかにこれらを調整する仕組みがあります。
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U.レバノンに住むパレスチナ難民の状況  
■ 人口と分布
 2000年12月31日の時点でUNRWAに登録されているレバノン内のパレスチナ人は総計380,072人でした。 彼らはUNRWAに登録されている難民総人口の10%を、またレバノンの推定人口の11.1%を構成しています。 登録済みパレスチナ人の人口の過半数(198,369人)が、UNRWAの管理下におかれている12のキャンプで暮らしています。 それらのキャンプは人口過密で水や電気、衛生施設などの基本的設備が不十分です。 更には建設に関して厳しい規制に晒されており、そうした規制事項はキャンプ入口に置かれている軍の バリケードにより執り行われています。
 UNRWAはキャンプの境界内には14,615人もの未登録者が住んでいると概観しています。 UNRWAによる供給を受けていない非公式キャンプは14か所にも及び、推定32,000人が住み、 彼らは標準以下の環境のもとに苦しめられています。

■ 貧困レベル
 1992年にUNRWAはレバノン内のパレスチナ難民の60%が貧困ライン以下の生活を営んでいるであろうと発表しています。 1996年に纏められたデータによるとその比率はほとんど80%にも及ぶことが分かります。 UNRWAから特別な援助を受けているレバノンの最貧困層は人口の10.76%を占めています。 (約20,000人の子どもを含む約10,363世帯)それに対して、UNRWAの全活動地域内の最貧困層の総計は5.54%です。 これらは3,688人の未亡人を含み、彼女達の多くは世帯主です。

■ 職業と収入レベル
 レバノン内で働くパレスチナ人のうち、恒常的な仕事を持つ労働者は5%しかいないといわれています。 またその中の0.16%のみに労働許可が与えられています。 残りの人々はUNRWAやNGOに雇用されるか、許可が必要とされないキャンプ内での農業、畜産業または零細企業で働いています(1996年の調査)。 他の全てのパレスチナ人労働者は農業や建築業で日雇い労働者として働いています。 平均して一月の労働日数は15日で、収入は一ヶ月あたり44US$から58US$です。 またパレスチナ人の7歳から14歳の子どもの2.4%が働いていると推定されます。 それに対してレバノン人の子どもの1.6%が働いています。
 パレスチナ人失業者の大半を女性が占めており、UNRWAの統計によると、成人女性の80%から92%が失業者です。 注意しなければならないのは、UNRWAは季節労働者を含む広い定義での雇用を指しているという点です。 働く女性の三分の一は家長であり,通常幾つかの収入源に頼る平均的なパレスチナ人の世帯の26%と比べると、 女性の世帯主の69%は最低賃金しか得ていません。


出典:"Rights of the Palestinian Child in Lebanon" Second Supplementary Report/2001,
by The Coordination Forum of the NGO's Working Among The Palestinian Community.
UNRWA: 国連パレスチナ難民救済事業機関 活動対象地域は中東一帯

UNRWAによるレバノン内キャンプ人口調査
2000年12月31日現在
地 域 キャンプ名 UNRWAに登録された人数 UNRWAに登録されていない人数
家族数 人の数 赤ん坊の数 人の数 人数合計
赤ん坊を含まず
ベイルート
市内
マールエリヤス 174 617 793 1,410
合 計 174 617 793 1,410
ベイルート
郊外
ブルジ・バラジネ 3,398 14,596 121 4,327 18,923
ディクワネ 2,049 8,970 36 8,970
ドゥバイエ 1,063 3,989 11 236 4,225
シャティーラ 1,779 7,727 74 4,750 12,477
合 計 8,289 35,282 242 9,313 44,595
サイダ
地域
アイン・エル=ヘルウェ 9,587 42,096 564 1,150 43,246
ナバティエ 1,479 6,725 72 6,725
ミーエミーエ 1,031 4,239 47 650 4,889
合 計 12,097 53,060 683 1,800 54,860
スール
地域
アル・バス 2,001 8,651 94 972 9,623
ラシディーエ 5,204 23,688 291 383 24,071
ブルジュ・エル=シェマリ 3,829 17,308 198 470 17,778
合 計 11,034 49,647 583 1,825 51,472
トリポリ地域 ナハル・エル=バレド 5,627 27,220 395 132 27,352
バダウィー 3,191 14,578 153 637 15,215
合 計 8,818 41,798 548 769 42,567
ベカー高原 ワーベル 1,572 7,088 70 115 7,203
合 計 1,572 7,088 70 115 7,203
UNRWA職員や難民で登録されていない相手と結婚した女性 2,462 10,877 94 10,877
レバノン国内合計 44,446 198,369 2,224 14,615 212,984
 ※なお、この統計にはUNRWAが設置したキャンプ以外の非公式キャンプ及びキャンプ外に住んでいる人は含まれません。
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V.UNRWAと教育を受ける権利
 パレスチナの子どもたちを保護し、援助するためにレバノン国内ではUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、 PRCS(パレスチナ赤三日月社)やいくつかのNGOが働いています。 なかでも教育分野で最も大きな責任を担っているのがUNRWAです。 今回と次回はUNRWAが行っている教育に焦点をあてて、その仕組みや問題点を見てみました。

■UNRWAより提供されるサービス
生命への権利、生存・発達の確保(子どもの権利条約 第六条)

第6条 1.締約国は、すべての子どもが生命への固有の権利を有することを認める。
     2.締約国は、子どもの生存および発達を可能なかぎり最大限に確保する。

 パレスチナ難民およびその子どもたちは、あらゆる国際的な保護から疎外されているため、極度に弱い立場に置かれている。 しかしながら、UNRWAのサービスにより、パレスチナの子どもたちが、子どもの権利条約に示された多くの権利、 とりわけ教育と健康についての権利を享受することが出来たことは疑うべくもない。 UNRWAが直面する課題は慢性的な財源不足である。そのため、ここ数年、通常のプログラムに悪影響をもたらしている。 とりわけ基礎教育プログラムはUNRWAのサービスでの最大のプログラムであり、その予算は全体予算の52%を占めるため、 パレスチナの子どもたちにとっては大きな不利益となっている。緊縮財政の結果、教師や医師の雇用も制限され、 一クラス当たりの生徒数増加や、看護スタッフに対する患者数の増加にもつながっている。また、入院手当ての削減、 大学奨学金の凍結、難民収容施設修復のストップともなった。こうしたパレスチナの子どもたちへの費用削減の影響については、 以下の関連項の中でも記載されている。しかし、状況がこのまま続けば、UNRWAのサービス適用範囲や、 その質に深刻なダメージが及ぼされ、パレスチナの子どもたちにとっても、手の届く範囲での限られた権利さえ、 それを享受することが難しくなるおそれがある。

■UNRWAの教育プログラム
 UNRWAはパレスチナ難民の教育に変わることのない貢献を果たしてきた。 そのためパレスチナ難民は、大多数のアラブ諸国での一般的教育水準よりも高いレベルの教育を受けることができた。 このことは女性の間での識字率増加によって裏付けられている。レバノンにおいては、 45歳から60歳までのパレスチナ人女性の非識字率が78%であるのに対して、15歳から19歳までの女性の非識字率は13%と減少している。 UNRWAには一般教育、教師育成教育、および職業教育という3つの教育プログラムがある。

・一般教育  基礎教育プログラムは6年間の初等教育(36校)、3年間の中等教育(35校)、そして2年間の高校教育(3校)からなる。 高校教育の私立校については費用がかさむため、レバノンだけで提供されている例外的なサービスである。  1997教育年度(注A)の調査では、初等教育を受ける者として登録されているパレスチナの子どもの就学率は62.7%であり、 中等教育では74.9%、高校教育では21.8%であった(表4参照)。UNRWAは、レバノンにおける教育の主要提供者であり、 パレスチナ人の全就学児童生徒のうち、78%がUNRWAの学校で学んでいる。一方、3%の子どもたちがレバノン政府の学校で学び、 9%が私立校で就学している。1960年代 、UNRWAは中東において男女共学を実施した最初の教育機関であった。 2000年6月時点で、女子の就学率は全体の半分を超えている(50.6%)。

・教師育成教育
 UNRWAは、高校教育修了者を対象に、教師を目指すための2年間研修プログラムを提供している。 同プログラム修了者は、2年修了の教員免状資格を受けることができる。 1999教育年度は105名(うち女性75名、男性30名)がこの教育を受けた。  また現職の教師を対象としたトレーニング・コースも提供しており、1999教育年度には49名が受講した。

・職業教育
 この教育プログラムは、シブリン研修センターを中心に提供され、中等教育修了者を対象に2年間の様々な職業教育が行われている。 1999教育年度は494名の男子と125名の女子が受講した。
注@ 出典:”Rights of the Palestinian Child in Lebanon” Second Supplementary Report/2001 by the Coordination Forum of the NGO’s Working Among the Palestinian Community 注A レバノンの教育年度は9月に新学年が始まり、6月に学年末を迎えます。 1997教育年度は1997年9月から1998年6月までの期間にあたります。

■教育を受ける権利
・学校の退学率と欠席率
 レバノンのキャンプやその周辺に住んでいるパレスチナ人の教育状況の最新調査は、教育水準が低下してきていることを述べていて、 以前の多くの調査を再確認している。特に女性と若い人たちにその傾向が著しく、 7歳から18歳までの子どもたちの学校欠席率は21%で、重大な問題である。出席率は11歳から急速に落ち始め、 特に少年たちにその傾向がはっきり表れている。5歳から9歳までの子どもたちの出席率は、 レバノン人の同じ年齢層とほぼ同じであるが、15歳から24歳の年齢グループになると、レバノン人の出席率の半分に落ちてしまう。 多くの生徒たちは経済的理由、または学習する動機を失って、学ぶことを止めてしまう。 初期段階における学校退学率の4分の1は、学習する動機のなさ(学習目的ややる気の喪失)、 学習への興味を失うこと、学習での失敗の繰り返しによっておきると考えられる。経済的理由による退学も増えており、 教育水準の向上問題と共に重要な課題である。

・識字率
 子どもの識字率に関しては確実な数値は把握されていないが、NGO団体によれば下降の一途を辿っていると言われており、 非識字率の割合は現在、17.2%から7.7%であると予測される。
・学校・教室の過密(狭く貧しい学習環境)
 UNRWAの学校では、生徒を詰め込みすぎの教室(生徒多人数教室)が深刻な問題になっており、 学習の質(内容)や教師と生徒間の人間関係に悪い影響をもたらしている。 一教室を占める平均生徒数は1999年から2000年には39.5人だったが、そのうち18.1%の教室は48人以上の生徒を収容していた。 教室の生徒最大人数が1994年から1995年は44.7人、1997年から1998年には46.3人を超えなかったことと較べてみても、 現在の教室の過密は急速に悪化していると思われる。 このような状況は、UNRWAの財政難およびレバノン政府による建築制限によって生じたものと考えられる。 建築資金が用意できても、レバノン政府はキャンプの境界を越えた所に学校を建てることを許可しないからである。 このような状況は、子どもたちが成長し発達する権利(第6条2項および第29条1項(a))を侵しているが、 レバノン政府による政策の変化を待つしかないのが現状である。レバノン政府は建築制限やパレスチナ人の居住制限の政策を採っている。(我々はこの問題に取り組み、数回、改善を勧告している) 増加していく困難な生活条件、様々な制約、過密を極める学校施設、縮小していくUNRWAのサービス、 不確かな(希望のない)未来などから生じる道徳心の低下は、生徒・教師・親の態度そして考え方を調べた報告書によく表れている。

・学校生活の規律と教育の質について(学校生活の規律と教育内容の向上)
 ユニセフ後援の最近の調査によると、学校を退学した生徒の大多数は、その理由が学校に関係しているため、そのまま放置されている。 学校生活での失敗、学習への動機づけの欠如、荒っぽい扱われ方などを理由とする退学が少年の場合67.5%、 少女の場合57.6%に達し、それ以外に経済的理由によるものが、少年の場合19.6%、少女の場合16.6%になっている。 教師の言葉による虐待や手荒い扱いはしばしば報告されており、広い範囲でおこなわれているようである。 今のところ親や子どもはそれに対処する気はないようであるが。 UNRWAは体罰や言葉による虐待を禁止しているが、学校生活の規律を維持するために、詳細な指導方法を示す必要を認めている。
 
レバノンにおいて就学しているパレスチナ難民の生徒数
     (教育レベル及び学校設備設置機関別)
教育レベル 設置機関 就学生徒数 登録されている
パレスチナ人の
生徒数/相当す
る年齢層
就学率
(%)
初等教育 UNRWA 25,932 - -
公立 692 - -
私立 2,629 - -
合計 29,253 46,627 62.7
中等教育 UNRWA 12,544 - -
公立 461 - -
私立 2,812 - -
合計 15,817 21,121 74.9
高等教育 UNRWA 649 - -
公立 506 - -
私立 3,665 - -
合計 4,820 22,061 21.8
*公立及び私立学校への通学者全てがUNRWAに報告されている訳ではないので、
 これらの学校への正確な就学人数は不明となっている(UNRWA報告)

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W.健康と福祉に関する権利
 パレスチナの子どもたちを保護し、援助するためにレバノン国内ではUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、 PRCS(パレスチナ赤三日月社)やいくつかのNGOが働いています。 なかでも教育分野で最も大きな責任を担っているのがUNRWAです。 今回と次回はUNRWAが行っている教育に焦点をあてて、その仕組みや問題点を見てみました。

■子どもたちに見られる深刻な健康問題
 厳しい経済状態、不健康な住環境、そしてレバノン居住のパレスチナ人に対する限られた財源の結果、 障害児への援助が削減されたため、障害児間における伝染病感染率は非常に高く、また栄養失調の障害児も高い割合で見られる。

・子どもの罹病率
 生活環境上の理由から、レバノンに居住するパレスチナ人の子どもたちの間では、伝染病の感染率が高くなっている。 家族が多く、換気設備が整っていない家庭では、5歳以下の子どもの44%が、咳や風邪、もしくはその両方に苦しんでおり、 また25%は熱や呼吸困難といった呼吸器系の伝染病に近い症状に悩まされている。1996年の調査では、 呼吸器系の疾患を持つ子どものうち78%が併発症として下痢に苦しんでいることが判明している。  PRCS(the Palestine Red Crescent Society:パレスチナ赤新月協会)は、子どもによる発症率が最も高いとされる疾患は、 肺炎、気管支炎、インフルエンザだとしている。貧困の激しい家庭では湿気と換気の悪い住環境が原因で、 子どもたちのリューマチ発症率も増加している。

・栄養失調
 FAFO(ノルウェーの研究機関)による初期の調査によると、1歳から3歳までのパレスチナ人幼児の5%が栄養失調である。 これに対し、ヨルダンのキャンプで生活する同年齢幼児の栄養失調率は1%となっている。 また、同年齢における病弱な幼児の割合は、ヨルダンの2%に対して、レバノンでは4%となっている。 さらに、ユニセフはレバノン居住で登録されているパレスチナ人の子どものうち30%が空腹、 もしくは栄養が著しく不足している状態にあると指摘している。

・生活水準
 1950年代の設立以来、UNRWAによる難民キャンプは極度の人口増加に直面している。 キャンプ居住世帯全体で下水道設備を備えている世帯はわずか58%で、多くの世帯は狭い家での生活を余儀なくされている。 パレスチナ難民がレバノンに移動してから人口が3倍に増加、またその間、 公式の難民キャンプ敷地面積が五分の一に減少したにも関わらず、UNRWAキャンプ内での住居建設には制限がしかれている。 その結果、レバノン戦争で破壊された3つのキャンプ(Tel El Zaatar、Jisr El Basha、Nabatiyeh)はいまだ再建の見通しが立たず、 その代替となる場所も見つけられていない。1995年、レバノン当局とUNRWA間で新しいキャンプの建設計画が立案されたが、 衆知の政治論争を引き起こした結果、直ちに中止されることとなってしまった。
 住居の深刻な状況は、レバノンの戦後復興計画によって一層複雑な問題となっている。 UNRWAは、多くのキャンプ内にある何百もの家屋が取り壊されるとの通告を受けており、最も新しい通告には、 TyreにあるAl Bussキャンプ周辺にハイウェイを建設するため、同キャンプ内にある250戸以上の家屋を取り壊すとの内容が記されてあった。
 ユニセフが実施した最近の調査によると、UNRWAキャンプ内外のパレスチナ人の子どものうち79%以上は、 6人以上の大所帯を家族に持つ。パレスチナ人の一世帯平均人数は4.8人であり、 ごくわずかな例外を除き、一部屋平均13.5u、一家屋2〜3部屋という避難所のような生活を送っている。 また、6人から10人家族の世帯のうち、約8.3%は一部屋だけの家屋で生活している。
 UNRWAに登録されているパレスチナ難民の幼児死亡(16%)の3番目の要因として呼吸器系の伝染病が挙げられているのは、 上記を原因としている。なお、この16%という数値には、不法居住地区に住んでいる未登録難民の子どもは含まれておらず、 このような地区では換気や下水道設備がほとんど見られず、水不足にも悩まされている。
 子どもの健康と密接に関係しているこの実状は、1996年に実施された難民キャンプと不法居住地区に対する調査によって明らかにされた。同調査によると、 5歳以下の幼児のうち44%が咳(9%)、風邪(10%)またはその両者に苦しんでいた。 また調査実施時には、四分の一の子どもが発熱や呼吸困難に苦しんでいることが判明した。

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