『寄せられた「体験」奇妙にこわい話』(光文社文庫)
■ひかり■
この作品集では、阿刀田さんは選者という立場にいらっしゃいます。
『寄せられた「体験」』となってはいるものの、小説仕立てのものも多数選ばれています。
さて……この「ひかり」とは、ハムスターの名前です。
金色とあるので、おそらくはゴールデンハムスターなのでしょう。
はじめは、「そうそう、ハムスターってこんなとこが可愛いよね〜。わかるわかる」
などとのんきに読んでいたのですが、そこはそれ、「こわい話」。
陳腐な感想ですが、ひとつの物事についてあまりにも思いつめすぎると
ろくなことになりませんです(苦笑)。
主人公の陽子さんには、『Dr. 野村のハムスターに関する100問100答』を
ぜひ読んで欲しかったな〜。
『寄せられた「体験」奇妙にとってもこわい話』(中公文庫)
■優しい人■
「とっても」という形容詞ががくっついて、話の数も少々増えた続編です。
こわい話が好きなので、また買ってしまいました(笑)。
さしずめ筒井康隆さんならこれ、『優しいひと』って表記になさるかな。
あのですね。微妙にネタばれなことを書いてみます。
その1:非現実世界のものどもは、出てきません。「お化けより人間のほうが怖い」という
一面の真理を語っていて、そこらへんもこの作品が好きな理由のひとつになってます。
その2:『家族八景』読まれた方ならご存知だと思いますが……「紅蓮菩薩」だったかな。
すこぶる品がいいので有名な奥様が(脇役で)出てきますが、町じゅうに「あの奥様は上品だ」
って知れわたるようにするには演技がハデである必要がある、とかなんとか。
……ということで皆さん。ものすご〜く「優しい人」には、くれぐれもお気をつけて……(苦笑)。
『雨降りお月さん』(中公文庫)
■花のある話■
エッセイ集です。
”花がある”という言葉について、私も思わず真剣に考えてしまいました。
もうひとつの趣味として、ビーズでアクセサリーを作っているのですが
最近つくづく思うのは「自分の作品には花はあるのかなあ」ということです。
阿刀田さんにいわせれば、この場合の「花」とは「わけもなく人をひきつける力」であり、
量は少なくてもその魅力が鮮やかに映って見えれば、その人には「花がある」……とのこと。
自分自身については、とてもとても「花がある」タイプではないのでして(苦笑)。
このエッセイを読んだからといって、”花のある”アクセサリーが作れるということでは
ないのですが……スランプになったらなぜかこの手のエッセイを読んでしまいます。
無意識のうちに、心を落ち着かせているのかもしれません。
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