SOREX ボート14FB ハブベアリング オーバーホール
患者さん紹介
このページでは新車で購入後、1年間使用し定期点検がてらハブベアリングのオーバーホールを行いました。
普段、目に見えない部分を解説します。但し、走行に関する重大な部分なので車に詳しくない方は整備工場に持ち込んだほうが良いでしょう。

今回の解体新書はトレーラーオーナーのハイドラさん、そして実際の作業のほとんどを進んで引き受けてくれた職人ま〜ちゃんの協力で実現しました。
ワタシはつい先日、自分のトレーラーのハブベアリングをオーバーホールして当分グリスに触りたくないので記録係に徹しました。(笑)

一応、断っておきますが恥ずかしながら3人とも整備士免許なんて物を持ってたりします。

まずはベアリングプロテクターをマイナスドライバー等でコジッてはずします。

するとグリスにまみれたクラウンナット(切り欠きの付いたナット)が現れます。
中心に飛び出しているのがグリスニップル。ここからグリスガンで注油します。
このように注油するタイプはあまり無いと思います。SOREXのボート14FB以降のモデルはこの注油方式を採用しています。
私の使用している旧型に比べるとグリス切れによるベアリングの焼付きが減る一方で整備性ではやや難しい部分がありました。

水平方向にゆるみ止めの割りピンが入っているのでニッパーで引き抜いてからクラウンナットを緩めてベアリングを抜き取ります。

左の画像がハブベアリング(テーパーローラー)です。一つの車輪にアウターとインナーの同じサイズのベアリングを2個使用しています。
グリスを灯油や洗浄溶剤(ブレーキクリーナースプレー)で洗い流し、キズや手で回して引っ掛かるような感じがあったら交換です。
また、右の画像のベアリングの当たる面(アウターレース)にキズがある場合もベアリング交換が必要になります。
左の画像がハブスピンドルです。画像手前のネジの切ってある部分に水平方向の溝がありますが、ここに割りピンが通ります。
割ピンの役目はクラウンナットのゆるみ止めです。
右の画像はホイールの裏側です。ハブシール(オイルシール)が切れたりするとここからグリスが飛び散り、ベアリングが焼き付いたりします。
グリスの役目はもちろんベアリングの潤滑が主な役目ですが、その他にベアリングから発生する熱を放熱する役目もあります。
従って、ハブシールが切れたり、劣化してグリスが流出すると水が浸入したり放熱できなくなり、ベアリングが破損して走行中に脱輪して自分のクルマをトレーラーのタイヤが追い越していくという恐ろしいことにもなりかねません。
今回はベアリングを点検した結果、特に異常は無かったものの、後に説明するプレロード調整の段階で思うような結果が得られなかったために、ベアリングを交換することになりました。

左の画像のようにハブに圧入されているベアリングのアウターレースにマイナスドライバーを当ててハンマーで叩いて抜き取ります。(アウター、インナーともに)
次に右の画像のように新品のアウターレースを軽くハンマーで叩きながら圧入していきます。
ハブの上面と同じ高さまで圧入したあと、ハブ内部にある段差に当たるまでドライバーを当てながら、さらに圧入します。
通常の整備工場では油圧プレスで圧入しますが、なにせ私の家の軒下での作業なのでこれしか方法がありませんでした。

ハブ内部にたっぷりとグリスを塗りこみ(ちゃんと放熱できるように)新品のベアリングにもグリスを充填してから元通りに組上げます。
ベアリングにグリスを充填する方法としては手のひらにグリスを盛ってベアリングを手のひらに叩きつけながら充填します。
組上げたら、タイヤを回転させながらプライヤーでクラウンナットを締め付けてベアリングを良く馴染ませます。
この時にレンチ等で締め付けすぎるとベアリングを変形させてしまうので注意が必要です。
次にプレロードの調整を行います。
クラウンナットを一旦緩めて、手で軽く締め付けてから45度から90度ほどプライヤーで締め付けます。
左の画像のように両手でタイヤの上下を持ち、ガタが無いかゆすって見ます。ガタがある場合はもう一度緩めてからプレロードの調整をやり直します。
ガタが無かった場合はタイヤを回転させて回転が重い場合はやり直しです。
ちょうどいいところで右の画像のように割りピンを差し込んでナットが緩まないようにしてプレロードの調整は終わりです。
ベアリングプロテクターを取り付けて、グリスガンでさらにグリスを充填してオーバーホールの完了です。
今回の整備に掛かった費用としては、
ベアリング1台分(4個)とハブシール2個で¥9,500
SOREX指定の耐水グリス¥1,800
ホームセンターで購入したグリスガン¥1,000
といったところでしょうか。