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  星野 るい    天保11年(1840.3.13.)2月10日〜昭和11年(1936)12月13日
 明治期のキリスト教伝道者。

 上野国渋川に、苗字帯刀を許された名主・石坂七左衛門と栄子の二女として生まれた。
 るいが14歳のころ、家の使用人がるいの父、すなわち主人の留守中に誤って家宝の名器をこわした。使用人は主人からの咎めを恐れていたが、主人が帰宅するや、るいが即座に父の前にひざまづいて、留守中自分の非で愛用の家宝をこわしたことをわびた。その石坂家の使用人は、4年ののち、沼田藩の御用達で名字帯刀を許されていた名主の星野家に仕えていた。そのころ、星野家では宗七の縁談が話題になっていた。るいの恩を深く感じていた使用人は、るいの美しい人柄を語り、それが縁で星野家に嫁ぐことになった。

 安政3年(1856)、星野宗七と結婚した。六男五女を神から与えられ、賑やかな家族構成となった。
 長男・銀治は沼田貯蓄銀行の創設者で県会議員として社会に貢献した。その息子・星野宏は群馬県のボーイスカウトに貢献した。次男・光多、三男・又吉は牧師になった。五女・あい津田塾大学学長になった。

続柄 なまえ 生年月日 受洗年月日 授洗者 備 考
宗七 天保9年(1838) 明治21年(1888)1月26日 杉田潮 「星野屋」主人
るい 天保11年(1840) 明治17年(1884)3月 稲垣信牧師 キリスト教伝道者
長男 銀治 明治21年(1888)1月26日 杉田潮 妻・はま:明治19年(1886)1月10日受洗
次男 光多 万延元年(1860) 明治7年(1874)12月27日 J.H.バラ宣教師 牧師
三男 又吉 (1864) 明治16年(1883) 牧師
四男 喜作
長女 明治5年(1872)8月19日 明治17年(1884)11月9日 稲垣信牧師 大学教授夫人
五男 徳治 明治21年(1888) 指路教会長老
次女 つね 明治9年(1876) 明治22年5月8日 小崎弘道牧師 38歳で召天
六男 明治22年5月8日 小崎弘道牧師 35歳で召天
三女
四女 てる 明治22年5月8日 小崎弘道牧師
五女 あい 明治17年(1884)9月19日 津田塾大学長
              (『星野光多』より作成)


 夫の宗七は、明治元年(1868)に横浜に出て生糸貿易を営む「星野屋」を開業した。2年ほど経って一軒家を建て、沼田から妻・るい、次男・光多、四男・喜作を呼び寄せた。宗七は、まさに働き盛りの35歳であった。るいは、横浜で夫を助けるかたわらヘボン塾に通った。ヘボンの講義を聴くことにより、キリスト教に関心をもち、明治17年(1884)3月、に受洗した。

 ところが、その年の秋、「横浜の星野屋」は、倒産した。るいは、失意の夫を慰め励まして家政を整理し、子どもらと祈りをもって沼田に帰った。五女・あいの誕生は、まさに「神は愛」をもって、試練の最中にも神の御手が差し伸べられていること、希望は決して失望に終わることがないという強い確信と平安を得たことであろう。るいは、この試練によりますます信仰を深め、帰郷して親族縁者に信仰を広めた。ついに夫・宗七も沼田に戻って信仰を受け入れた。

 長女の幸はフェリス和英女学校に通って、明治23年(1890)7月10日の卒業式では全科卒業生として英語のスピーチをした。英文は秀逸で大喝采を浴びた。卒業後は、母校の教壇に立ったが、明治29年(1896)5月21日、東奥義塾教諭の高杉栄次郎と結婚した。高杉が青山学院教授として赴任したので、幸は青山女学院に奉職する機会を得た。のち、高杉栄次郎は北海道大学教授となった。8男2女に恵まれた。その子らはすべて神の恵みのもとに信仰を同じくする一家となった。

 幸の兄すなわち長男・光多がフェリス和英女学校の教頭として赴任した。やがて、幸が生徒の時代にともに過ごした親友の長谷川みね(22歳)は光多(31歳)と結婚した。光多は昭和7年(1932)に72歳の人生を終えた。三男・又吉は牧会に苦労をしたがいくつかの教会で神と人に誠実に仕えた。

 るいは、六男の健が亡くなる1週間前に、茅ヶ崎南湖病院の病床に見舞い、看護した。健が天に召されたのちしばらく滞在後、次男の光多、五女のあいとともに沼田に戻った。時に73歳であった。
 数え年98歳まで神に地上での働きを与えられたるいは、わが子のほうが先に召されていくことにどのような思いをもちながら天国にわが子を送ったのであろうか。
 
<やりかけ>

出 典 『星野光多』 『キリスト教歴史』  『キリスト教人名』  『女性人名』  『フェリス50年史』
日々の善行 http://www.scout-gunma.org/colum/hibino_zenkou.html
津田塾大学 http://www.tsuda.ac.jp/

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