純正ウェイトローラーの加工
< 能書き >
アドレス110の純正ウェイトローラーは20.0g(排ガス規制モデル)と
このクラスには稀に見る重量です。
社外品で軽量の物を購入しようとすると、デイトナ製の14.0gが一番重く
14.0以上はスズキ車の一部で使用されている15.0〜18.5gの物の流用と
なってしまいます。
チャンバー等の装着で、エンジンが高回転型になっていれば
社外の軽量ウェイトローラーの選択肢も広がりますが、
ノーマルマフラーでウェイトローラーを軽量化しようとすると、
非常に選択肢が狭くなる傾向にあります。
< 目 的 >
そこで、私9640は、一番重い純正のウェイトローラーを削ることにより
理想の重量配分を作り上げる事にしました。
「誰でも出来る」様な事とは思いませんが、その記録を
紹介いたします。
< 内 容 >
< 工程 1 >
「ウェイトローラーを削る」と言っても、
外寸を変える訳にいかないのでド真ん中に穴を開けます。
その開ける穴の大きさがミソです。
まず、純正ウェイトローラーを用意します。
まず黄色い矢印部。外側の樹脂部を外します。
< 工程 2 >
水色矢印の方向に割り箸のような
金属部より柔らかい物で押し出します。
この時、ドライバーなどで作業しがちですが、
金属部を変形させてしまう恐れがあるので、お勧めできません。
< 工程 3 >
ここからがメインイベントです。
まず取り出した金属部と樹脂部の重さを量ります。
すると金属部が19g。樹脂部は1gです。
< 計 算 >
穴を開けるのは金属部ですので金属部の体積から比重を割り出し
理想の重量にするにはどのくらいの穴を開けたら良いか算出します。
金属部の直系は14mm、高さは11mm。
体積=半径×半径×円周率×高さです:7×7×3.14×11=1692.5
≒1.6925cm3になります。
求めた体積より比重を算出します。
19g/1.6925cm3≒11.22 となります。
材質は鉛でした。(鉛の比重11.36)
と、言っていても仕方ないので割り出した比重を利用して
開ける穴の大きさを考えます。
ドリル芯は0.5mmから0.1mm刻みにそろっていたのですが、
とりあえずザックリと0.5mm刻みで計算します。
計算方法は至って簡単です。
ドリル芯の半径×半径×円周率にウェイトローラーの高さを計算した
体積が穴の開いた事で削られる体積なのですから・・・。
<穴あけデータ>
計算表はこんな感じです。
(公表しちゃって良いのかな・・・?)
ノーマルWR
加工データ総重量 中身 外身 中身
外形中身
高さ中身
体積比重 開ける穴 -体積 減重量 材料
重量g g g mm mm g/cm3 mm g g 20.0 19.0 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 0.0 0.0 0.0 19 20.0 19.0 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 0.5 0.0 0.0 19 19.9 18.9 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 1.0 0.0 -0.1 19 19.8 18.8 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 1.5 0.0 -0.2 19 19.6 18.6 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 2.0 0.0 -0.4 19 19.4 18.4 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 2.5 0.1 -0.6 19 19.1 18.1 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 3.0 0.1 -0.9 19 18.8 17.8 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 3.5 0.1 -1.2 19 18.4 17.4 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 4.0 0.1 -1.6 19 18.0 17.0 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 4.5 0.2 -2.0 19 17.6 16.6 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 5.0 0.2 -2.4 19 17.1 16.1 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 5.5 0.3 -2.9 19 16.5 15.5 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 6.0 0.3 -3.5 19 15.9 14.9 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 6.5 0.4 -4.1 19 15.3 14.3 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 7.0 0.4 -4.8 19 14.5 13.5 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 7.5 0.5 -5.5 19 13.8 12.8 1.0 14.0 11.0 1.692 11.23 8.0 0.6 -6.2 19
欲しいウェイトローラーの総重量と開ける穴の
クロスしたところがドリル芯のサイズです。
しかし、普通のドリルでウェイトローラーのド真ん中に穴開けるなんて神業です。
今回は「精密高速旋盤」なる旋盤マシーンにて切削いたしました。
< 工程 4 >
まずは、旋盤のチャックに裸のWRを噛ませ、
センタードリルであける穴のセンター出しをします。
< 工程 5 >
こんな感じです。
< 工程 6 >
センター出しが完了したら、
穴を開けたいサイズのドリル芯を選び、本番です。
< 工程 7 >
当然ながら、旋盤なのでチャックで押さえたWR側が回ります。
ゆっくりと貫通するまでドリル芯を入れていきます。
< 完成 >
< 完 成 >
そして・・・
この通り完成です。 重さを量っても狙いの0.03g以内の誤差で
ウェイトローラーが完成しました。(写真は15.1g仕様)
< 注意事項 >
ただし、一つ不安材料があります。
強度です。とりあえず7.5mmの穴では私が使用した限り、
問題は無さそうですが、無加工より強度が弱い事は確かです。
最悪は「ウェイトローラー大破」⇒「プーリーから流出」⇒
「ベルトorクラッチ部に進入」⇒「後輪ロック」⇒「転倒」の原因となります。
もし、同じ加工をするのであれば、大きい穴の開けすぎにお気をつけ下さい。
*あくまでも予測です!保障出来ません!
< 使用する材料 >
・SUZUKI純正ウェイトローラー(SK-1用)
品名:ローラ、ムーバブルドライブ
品番:21650-16F00
値段:390円/個
< 使用する工具 >
・精密高速旋盤
・ドリル芯
・センタードリル
< 使用するケミカル >
・工業油
・パーツクリーナー
< 参考文献 >
・特になし
< インプレ >
この技により究極のウェイトローラーセッティングが可能になります。