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これらは、明るい流星が通った経路上に残る残光のように見えるものです。
ただ、それらの発光原理は違っていますが、確実に識別することが困難な場合が少なくありません。
1. 流星の痕(train)
高速で飛行する明るい流星の飛跡に、薄ぼんやりした光りの帯が残るものが「痕」です。
しし座流星群(11月18日前後,速度:71km/s)、ペルセウス座流星群(8月中旬,59km/s)、オリオン座流星群(10月下旬,66km/s)などの
速度の速い流星群でよく報告されます。
流星の痕は、流星物質と大気が衝突し、それらに含まれる原子が電離したままプラズマとなって長い時間発光するものです。
長い時間プラズマが維持されるためには、大気密度があまり大きすぎてはなりません。
一方、大気がほとんど無ければ、流星物質と大気との衝突がほとんど起きません。
このため、痕の発生する大気密度の条件は限られ、ちょうど上空80〜90km付近が中心です。
電離したプラズマが発生しているため、FM波など特定の波長の電波を反射し、普段聞こえないラジオ放送が聞こえるなどの
現象が起きます。
短痕(train, wake)
ほとんどの痕は、1,2秒で見えなくなってしまいます。双眼鏡で観測すればもう少し長く見ることもできますが、せいぜい数秒です。
電離した酸素の光(558nm)が強く光る場合は、緑色に見えることがありますし、流星物質に含まれるカルシウムや鉄などプラズマが
出す光が観測されることもあります。
持続痕(persistent train)
ほとんどの流星痕が数秒以内に見えなくなってしまうのに対し、時折、数分〜数十分にわたって痕が残ることがあります。
薄く広がりながら上空の風に吹かれて徐々に変形してゆき、見えなくなってゆきます。
多くの場合、赤い色の発光で、この光を作る原因物質について、研究が進んでいます。
2. 流星の尾(tail)
ゆっくり飛行する流星がオタマジャクシのような形に見えたことはありませんか?
涙型などとも表現されることがあるでしょう。
痕と違って、流星本体が消えたときにはもう残っていません。
これは、大気に突入した流星物質が、破砕(fragmentation)し、小さい破片ほど空気抵抗を効率よく受けて
はやく減速し、後に後にと置いて行かれるため、流星そのものの飛跡が長く伸びる、と理解できます。
個々の破片は、それぞれ小さな流星として光っているのですが、地上からは必ずしもひとつずつを見ることはできません。
痕より、低い、より大気密度が高く空気抵抗の大きくなる高度帯が中心になりがちです。
火花(sparks)
多数の小さな破片が散ってゆくのが地上から分解して見える場合、火花として観測できます。
分裂(fragmentation)
流星の分裂が地上から観測できる例は多くはありませんが、特に大きな流星、火球の場合には、
地上からでも目撃できることがあります。
3. 隕石雲(meteoritic cloud)
大規模な隕石落下に伴って希に見られる現象です。
このため、十分な観測が為された例は必ずしも多くありません。
出現する高度は、「尾」よりも更に低い高度で、20-40km程度ではないかと思われます。
これは、蒸発した流星物質が、冷えて10μm程度の球形の「流星塵(micro meteorite)」となったものが、
飛跡に沿って多量に発生したときに限り、地上から雲のように観測されるものです。
もちろん、隕石落下を伴う大火球が消滅した後も、数十分以上にわたり長く残ります。
多くは黒雲ですが、太陽光の当たり方によっては白い雲としても見えます。
それ自身は発光していないため、夜に観測できる機会は少ないと思われ、昼間に見られる現象です。
「つくば隕石」では1トン程度の流星塵が発生し、隕石雲となって観測され、発生熱のため小さなキノコ雲のような上昇運動が観測されました。
その後、上空の風に吹かれて横に広がり薄くなって、日没前後で見えなくなりました。