第7回 軽いキッスなら ある日の読売新聞記事に、ロマンス小説の出版社「ハーレクイン」の 意識調査の結果が掲載されていた。 記事による調査内容は 「人前で恋人同士の愛情表現はどこまで許されるか?」 調査対象は日本、米国、イタリアなど23か国の男女約6600人。 結果は、スペインやアルゼンチンでは、 8割前後が情熱的なキスや愛撫も許容範囲。 さすがはラテン諸国のお国柄の面目躍如というところですか。 一方の日本人は、約92%が手をつなぐが限度。 調査対象と構成にもよりますが、 深夜放送の若い世代のあけすけな告白や乱痴気騒ぎを知っている身には、 思わず「ホント?」と疑いたくなる数字であります。 軽いキスとなると60%がダメと考えているから、 裏を返せば、40%が軽いキッスならOKということになる。 さらに、男女の温度差も見られた。 日本男性の7割近くが人前でのキスはご法度なのに対して、 女性の半数以上は許容範囲との結果が出た。 昨今のイケイケ状態の女性の風潮からしても納得がいく数字でしょうか。 ハーレークイーン社の分析結果によると、 日本の男性は建前重視、女性は自分に素直としている。 なるほど・・・ そこでつらつら思い出すのは、様々な国の旅行先での恋人風景。 旅行の場数を踏んでいるわりには外国映画で見かけるような、 路上や駅頭でのラブシーンにはいまだに遭遇していない。 運が悪かっただけなの? たまに公園の芝生や街中で軽く戯れ合っているのに遭遇しても、 日本でも見かける程度のもので、 オモシロクもなんともありませんでした。 たったの1回きりだけれど、 「これぞラテン」の場面に巡り会わせたことがある。 ところはスペインのマドリッド、朝のラッシュ時の地下鉄。 わたしの外国の旅の目的はその国の庶民の暮らしぶりの観察だから、 朝の出勤風景は生活ウオッチングには、またとない良い機会である。 かなり無理をして早起きをしては、 地下鉄に乗ったりカフェに出向いたりする。 つまり、物好きでもあります。 山手線の朝のラッシュの殺人的な状況はニュース映像でもお馴染みですが、 その日のマドリッドは、駅員の押し屋さんこそいなかったけれど、 こちらもすごかった! 手足が他人の間に挟まったままの人質状態の電車の中で、 それは始まった。 しかも、すぐお隣である。 ブチュツ、ブチャー、ブニュツ 不思議なことに、人が折り重なるように詰まった箱の中でも、 まるで人の気配が失せたように車内はシーンと静まり返っている。 満員電車でも、墓場のように静まり返った車内。 そんな経験の覚えがアナタにもありませんか? そのときの車内の様子は、 電車の轟音とそれに張り合うようなキスの熱烈音だけであり、 恐らく同じ車両に乗り合わせたすべての人の耳に、 ものすごい吸引音や摩擦音はイヤでも届いていたはず。 息がかかるほどの至近距離から発せられる生々しい音に、 身を揉むほどの恥ずかしさに打たれながら、 「なんで、わたしが恥ずかしがらなくちゃいけないの?」と思うことで、 自分の恥ずかしさを打ち消そうとしたけれど、無駄だった。 まったく、どうしてなんでしょうね? こんな場合は、恥ずかしいのはアチラのはずでしょ? 早く次の駅に着くことをひたすら願いながら、 この国の人の反応は・・・と 辛うじて自由になる首をわずかにもたげて周囲の様子を盗み見すると、 誰もがあらぬ方向の一点を見据えながら、 「見ない、聞こえない」を装っていました。 しかし、その表情には隠しきれない間の悪さがありありと浮かんでいましたよ。 へぇ、ラテンの国でも、やっぱりこんな状況は ちょっとは気恥ずかしいものなのですか? 早起きした甲斐がありましたよ。 とても良いお勉強をさせていただきましたから。 ところで世界の70%は軽いキッスならOK。 日本の43%は23の調査国中で最下位でした。 この数字、多いか少ないか、 あなたはどう思われますか? HOME TOP NEXT |