第219回  消費税の階段

以前、奥田さんがトヨタの会長をしていた当時の消費税階段説は衝撃でした。
消費税を段階的にアップさせようという案でしたが、
1年に1パ−セントずつで最終的には16%!

現在の5パーセントでさえ毎日嘆いている身には
16パーセントの世界はシュミレーションでも不可能の世界ですが
不安だけは確実に募ります。
 
「諸外国には20%、30%もある」

消費税アップの推進者はことあるごとに外国の例をあげますが
数字だけをあげて日本の消費税の低さを引き合いにするのは
いかにも狡猾な説得方法ではありませんか。

国民の中には純情で素直な人がいて政府に同情するあまり
「諸外国がそんなに高いのならそのくらいはしかたがないわね」と、
これまでのように政府の言いなりの国民性に連れ戻されてしまうかもしれません。

こちらにはアップしていませんが、他の消費税関連のコラムでも触れていますが
高い消費税をかけている国は国民がそれなりに納得している状況の上になりたっています。
生活必需関連の衣食住は低い税率にする、食関連には消費税はかけないというように。
決め手は、それだけ高い消費税を払っても、
つまり、お金を使っても将来の生活に不安を感じないから。
消費税の使われ方が健全であると国民が日常の生活を通じて理解出来るからです。

残念ながら、日本の消費税はこのどれもクリアしていません。
消費税がどのように使われているのかがさっぱり見えてこないのでは
国民が不安を覚え理解できないのも無理からぬこと。

消費税の不正流用額が六百数十億円(当時)にものぼり、
企業が消費税として国民から預かったお金を設備投資等の経営資金に流用してしまうのは問題です。
不正流用ではないけれど、売上が低い業者の消費税は国庫に納めなくてもよいというのも
税金として支払った国民には理解し難いものです。

テレビのニュースを見ながらわたしは言いました。(ニュースが流れた当時のものです)

「奥田さんは自動車を売る会社の会長さんよね。
 消費税をあげたらいちばん影響を受けるのに困らないのかしら」
「困らんからブッたんだ!」
「困らないの?」
「困らない!」
「どうして?」
「理由がある!」
「どんな?」
「知らん!」

「やっぱりトヨタの会長さんよ。考え方が立派だわ。
 一企業の将来より日本の将来を見据えているのね」
「甘いっ!」
「どうして?」
「理由がある!」
「どんな?」
「知らん!」

夫が言いたいのは、企業が自分の利益を抜きにした政策をブツわけがない。
そこには必ず理由が存在するけれど、その理由がわからないらしいのです。

毎年1%という数字が気になりました。

消費税率の変更は日本の津々浦々まで影響します。
ようやく慣れたばかりの税率がコロコロ毎年変わるのは
考えるだけで大変な手間と経費と消費者へも迷惑がかかります。
そのような手間と経費を要してまでなぜ毎年1%でなければならないのか?

その理由はなんだ? 

当初は国民に急激なショックを与えないためと思い込んでいましたが、
もっと深い理由が見えてきました。

もちろんネット姫のお家芸の独断と偏見ではありますが。

5%を来年から8%にすると言われたら国民は一斉に買いだめに走るでしょう
(もう、走っちゃった?)

その結果一時的に売り上げは伸びても、その先は反動でガタ落ちする。
そして日本国民の習性をいかんなく発揮して、
以後の消費行動はずっと低迷を続けたまま脱却できなくなります。

しかし、年に1%ずつ上昇するとしたらどうでしょう。

国民はお尻を鞭で打たれて走り続ける競走馬のように
毎年消費税アップの恐怖の鞭に追われ続けることになります。
来年より今年のうちにという買いだめの強迫観念に毎年襲われるわけ。

買いだめに走る一番の理由はもちろん
「なるべく消費税が安いうちに」ということになりますが
それが端的に現れるのが車のような高額製品であるのは明白です。
 
「高い車は今年のうちに」という強迫観念に国民は毎年鞭打たれることになり、
結果として車の売り上げは消費税をアップにしても落ち込むこともなく
むしろ毎年安定した業績を保障されることにもなります。
奥田さんが薄い笑みを浮かべながら16%階段説をブッた理由がわかった!(?)

もちろん政府は毎年1%のアップでは到底やっていけないと思っているはず。
今ではこの16%説はすでに昔のこととなり、最終的には25%くらいまでという声も
聞かれるようになりました。

以前は死刑囚にとって階段を13段のぼった所はこの世との別れの場で、
それゆえ「13階段」は地獄への入り口を意味し恐怖を象徴する数字でした。
消費税の16階段は、地獄よりもさらに3段も上回る恐怖となりますが
その階段はもっともっと上へと延びているようです。

天井知らずの消費税の階段が天国まで続くとしたら
重税に耐えきれなくなった国民にはあの世行きの階段となり、
これではシャレにもなりませんね。


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