● ビオチン
(biotin) とは、ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンの一種で ビタミンB7とも呼ばれ、 1935年、オランダのケーグル(F.
Kogl)により卵黄中から発見されました。 酵母の増殖に必要な因子ビオス (bios)
の1成分として研究されたため、ビオチンの名がつきました。
● また、古くには、マウスを用いた動物実験で、生卵白の大量投与によって生じる皮膚炎症を
防止する因子 として発見されたことから、ビタミンH( Hは皮膚を表すドイツ語Hautから )
と呼ばれ、皮膚病の治療に 効果があると
いわれてきました。 また、生体内において果たす役割から補酵素Rと呼ばれたりもします。
● ビオチンの化学構造は、du
Vigneaudら(1942)によって決定され、天然に存在するビオチンはD型です。 ビオチンは無色の針状結晶であり、
水に可溶で、熱水やアルカリ溶液には良く溶けます。 エタノールにも溶けますが、アセトンなどの有機溶剤には不溶です。 中性、酸性、アルカリ性、酸素、光には安定ですが、
熱には不安定です。
● ビオチンの化学合成は、Harrisら(1946)によって完成され、ピメリン酸やシステインを原料とした方法が 知られています。 現在使用されている合成法としては、
D-グルコースからアジド糖を経て、立体特異的に D型を得る方法があります。 一方、ビオチンの生合成経路については、B.
sphaericusや大腸菌で確立 されています。 ピメリン酸からデチオビオチンまでは酵素レベルで解明されており、デチオビオチンから ビオチンの反応過程も解析されつつあります。
● ビオチンと
化学構造が 類似した化合物としては、
ビオシチン オキシビオチン ビオチンスルホキシド などが知られています。 ビオシチンは、ビオチンにリジンがアミド結合したものですが、卵白中のアビジン との結合性があります。 また、オキシビオシチンも、
D-ビオチンと比べ、50%の活性を持っています。
◆ ビオチンの働き 生理機能 ◆
● ビオチンは、パントテン酸と共に 酵素を作り、脂肪酸や コレステロールの 代謝をしながら
エネルギーを
作り出す
働きをしています。 ブドウ糖のリサイクル、脂肪酸の合成、アミノ酸の代謝に関わる
酵素カルボキシラーゼ と呼ばれる 酵素の機能を補助する
補酵素構成成分として重要な働きをします。
その中間成分の 代謝に、大きく
関与します。
● ビオチンは、生体において
4種類のカルボキシラーゼ の補酵素として、カルボキシル化反応の触媒作用
をしています。 これらの酵素反応は糖新生、分岐鎖アミノ酸、脂肪酸合成、エネルギー代謝に関連しています。
@ Pyruvate
carboxylase:PC, 糖新生・エネルギー代謝
A Acetyl-CoA
carboxylase:ACC, 脂肪酸合成
B Propionyl CoA-carboxylase:PCC,
分岐鎖アミノ酸・奇数鎖脂肪酸・エネルギー代謝
C β-Methylcrotonyl CoA
carboxylase:MCC ロイシン分解
● またタンパク質およびRNA合成にも間接的に関与します。
DNAの成分である
核酸の生成に関わる 酵素の 補酵素としても働き、核酸の合成を促し、
性ホルモンの合成にも働き、 細胞の合成 成長を
促進させます。
● ブドウ糖の エネルギー生産の過程で 燃えカスとして 発生する乳酸は、肝臓に運ばれ、
まず ピルビン酸
に変えられ、→さらにオキザロ酢酸 へと変化して、 →再びブドウ糖 へ
と 再合成されます。 これが 糖新生( 糖のリサイクル
)です。
● ビオチンはピルビン酸からオキザロ酢酸へと変換される際に働く酵素の補酵素としてその機能を補います。
ビオチン不足は
乳酸からの糖新生がスムーズに進まなくなり、筋肉痛や疲労感といった症状がでてきます。
● ビオチンは 皮膚や 神経組織を 神経や
皮膚組織・生殖器官 を 維持し 健康に保ち、
また甲状腺・生殖器官 を 正常に働かせるために 必要な
ビタミンです。
● ビオチンは
皮膚炎予防因子として発見されたのがその始まりで、古くから皮膚病の治療に効果がある
といわれてきました。現在では
アトピー性皮膚炎の治療などにビオチンが用いられています。
別名 皮膚のビタミン
とも呼ばれています。
● その他には ビオチンは皮膚の真皮にある基底細胞の下の毛細血管を太く拡げて血流を上げる
ことが確認されており、基底細胞に十分な栄養補給と老廃物の排泄を行うとされています。
お肌のターンオーバーを正常にする働きがあり昔から皮膚病改善に使われてきました。
頭皮の調子を整える働きもあり、毛髪の発育機能
を 高める効果が期待できるビタミンでもあります。
● ビオチンは 体内で ガンマリノレン酸の生産を行い
ガンマリノレン酸が炎症抑制のプロスタグランジンを
作っていることから ビオチンは 炎症体質を改善する ビタミン成分に
分類されます。
ガンマリノレン酸は 食事からは ほとんど摂取することができず 体内において使われる
ガンマリノレン酸は ほぼ全量を
ビオチンが リノール酸から 作り出しています。
● また、チリや ダニ
花粉をはじめとしたアレルギー物質が体内に侵入すると、ある特殊な細胞が刺激されて、
アレルギー反応を引き起こす化学物質ヒスタミンが放出されます。 ヒスタミンには皮膚の炎症を
引き起こす特徴があります。 ビオチンは
このヒスタミンの元 ともいえるヒスチジンを
体外へと排出して、
アトピー性皮膚炎の原因となる 物質を減らす 働きがあります。
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