伽羅先代萩 見ごたえある顔合わせ 2009.4.23 W241

2日と21日、歌舞伎座四月大歌舞伎昼の部を見てきました。

主な配役
足利頼兼 橋之助
絹川谷蔵
渡辺民部
染五郎
政岡 玉三郎
八汐
細川勝元
仁左衛門
沖の井 福助
松島 孝太郎
小槙 歌女之丞
荒獅子男之助 三津五郎
渡部外記左衛門 歌六
山名宗全 彦三郎
仁木弾正 吉右衛門

通し狂言「伽羅先代萩」のあらすじはこちらです。

今回の通し上演は玉三郎が「竹の間」の飯たきをカットせずに演じるのが珍しく、昭和63年以来仁木を演じていない吉右衛門の仁木も楽しみでした。

玉三郎の政岡はとても美しく、「御殿の場」の30分ほどかかる「飯たき」も長さを感じさせず、きびきびとした動作が魅力的。柄杓をポンと投げ入れるようにするのはちょっと気になりましたが、あくまでお手前ではなくご飯をたいているという雰囲気をだそうとしているのかな?と思いました。その中で子供たちとのやりとりにも温かみが感じられました。

しかし千松が八汐に殺されクドキになってからは、千松の遺骸から離れて顔をそむけるようにして台詞を言ったりするのが薄情に思え、本当の母親なら死んでいるとわかっていても縋りつかずにはいられないだろうにと感じました。21日に観劇したときは、悲しみの情が初日よりはストレートに出ていたように思います。

「床下」で奈落からせり上がってくる荒獅子男之助の三津五郎は、声も朗々としていて赤っ面の隈どりも立派でよく似あい、短い出ながら歌舞伎の楽しさを存分に味わわせてくれました。

ねずみ役の役者さんが、傾斜した板を使って頭から七三にすべり込みんだあと、すっぽんからせり上がってきた吉右衛門の仁木弾正は、さすがに大きくはあったけれど石川五右衛門のようで、なんとなく鋭さに欠けていると感じました。

初日だったせいもあって、面明かりが一つ消えてしまうというアクシデントがおこり、もう一つの方から火をもらおうとしたものの、うまくいかず、とうとうライターでつけるはめに。そういうドタバタのためか、仁木の引っ込みはとても雲の上をすべるようにはいかず、ギクシャクしていたのは残念でした。

長い間仁木を演じていない吉右衛門、対決の場でも台詞もすっと出てこなかったりで対決の緊張感がそがれました。という具合でしたので、これは後半にもう一度見なければと思いました。

で21日に見た吉右衛門の仁木は、対決の場はずっしりと重みのある声が細川勝元の甲高い声と対照的で問答は大変面白く、一瞬も目が離せないほど見ごたえがありました。ですが「床下」の引っ込みはやはり今一で、一歩一歩が狭いためなのか滑らかさに乏しく、沈み込んでいって伸びあがるという変化もあいまいでした。

とはいえ吉右衛門と仁左衛門、実力伯仲する二人の顔合わせは十分に魅力があり楽しませてくれました。

脇役として欠かせない存在になってきた歌六の渡部外記左衛門、手堅く演じていましたが、「刃傷」の場では屏風の蔭でウンウンうなり過ぎではないかと思いました。歌六は栄御前も演じましたが、権威をかさにきて政岡を追いつめる不気味な存在というよりはお人好しな面が強く出ていました。

ところでどうして栄御前が「千松と鶴千代は入れ替わっていた」と簡単に信じてしまうのか不思議でしたが、今回歌女之丞の女医師・小槙が土壇場で、自分がそう敵方に信じさせたのだと種明かしするのを聞いて、なるほど~と思いました。この件のために小槙はもうけ役にみえました。

仁左衛門は八汐と細川勝元の二役を演じました。八汐は愛嬌がありながらも思いっきりよく憎らしさを出していたのが痛快でした。この思いっきりのよい八汐に対して福助の沖の井がかなり突っ込んだ芝居をしたのが、面白く感じられました。絶えず裏声をまぜる台詞廻しは良いとは思えませんでしたが、存在感のある沖の井でした。

玉三郎の政岡もこの仁左衛門の八汐に対して、ひかえめながらきっぱりと演じていて「竹の間」はとても良かったと思います。

ところで竹の間で八汐が着ていた内掛の松や波の模様が意外にモダンで、新しく作ったのかと思いましたが、大和屋の希望で、昔からあったものを手直ししたのだそうです。

政岡は「竹の間」でいつもの雪持ち竹に雀を着て、「御殿」ではあずき色に金の花丸のような内掛に着替えていました。

仁左衛門の二役目、細川勝元は得意とする捌き役で、高調子での台詞廻しを存分に聞かせました。初日は大詰めでかなり咳をしていたので、体調が心配されましたが、21日に見た時は問題なく爽やかに演じていました。吉右衛門を相手に充分に演じる仁左衛門は芝居を楽しんでいるようにさえ見えました。山名宗全の彦三郎、「そこらあたりの虎殿が・・」と細川にやられるところあたりが絶妙でした。

今回の「先代萩」の通し上演は、当代の人気役者を揃え脇にも若手花形を配し万全を期していましたが、すべてが役にあっていたかというと、ちょっと疑問が残る舞台でした。

この日の大向こう

初日とあって、数えきれないほどたくさんの声が掛かっていました。大向こうさんもパッと見て7人はいらしてましたが、もっといらしたと思います。

「竹の間」では一般の方も交えてたくさん声がかかっていましたが、「御殿の場」ではほとんどかかっていませんでした。特に飯炊きの間は、はっきりと政岡がきまるところ2~3回ほどで、掛ける方も少なかったです。

栄御前を見送った政岡が七三で座り込む場面にも、あまり掛かっていませんでしたが、情況を考えるとここでどっと掛かるのはふさわしくないのかもしれません。八汐が政岡を殺そうと登場すると、とたんに掛け声が復活。「床下・対決・刃傷」には場に見合った声が盛大に掛かっていました。

21日は「竹の間」には数人の方が掛けていらっしゃいましたが、「御殿」になるとほとんど掛からなくなり「対決・刃傷」では二三人という感じでした。最後の方で、小さくてふわっとした尻あがりの声が何度か聞こえたようなのが、気になりました。会の方はお一人いらしていたそうです。

4月歌舞伎座昼の部演目メモ
通し狂言「伽羅先代萩」
花水橋、竹の間、御殿、床下、対決、刃傷
橋之助、染五郎、玉三郎、仁左衛門、福助、孝太郎、歌六、新悟、彦三郎、高麗蔵、松江、吉右衛門、

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