十二夜 蜷川歌舞伎 2007.7.31 W191

15日、歌舞伎座へ「NINAGAWA 十二夜」を見てきました。

主な配役
獅子丸実は琵琶姫
主膳之助
菊之助
麻阿 亀治郎
安藤英竹 翫雀
比叡庵五郎 團蔵
洞院鐘道 左團次
大篠左大臣 錦之助
織笛姫 時蔵
丸尾坊太夫
捨助
菊五郎

「十二夜」のあらすじはこちらです

歌舞伎には珍しい斬新な舞台と、菊之助の清新な3役が大変印象深かった「十二夜」が二年ぶりに再演されました。安藤英竹を演じた松緑が翫雀に替わっただけで、初演の時と全く同じメンバーでの上演です。

幕が開くとそこには全面の鏡にあって客席全体がうつりこむというユニークな演出は、ほの暗い客席の赤い提灯が映えとても綺麗で、舞台の後ろに照明が入ると鏡が透明なガラスとなって、舞台の半分を占める桜の大木から花びらがハラハラと舞い散る情景が見えてきます。そこへチェンバロの伴奏で子供たちの歌う中世風の歌が清らかに聞こえてくるというこの出だしはとても魅力的で、あっという間に異空間へと引きこまれます。

つれない織笛姫に恋焦がれる左大臣を演じた錦之助は、最初ちょっと顔が青ざめているようでしたが品のよい華やかさを感じさせ、信二郎のころよりもひと回り大きく見えました。

場面が海に変わると、鏡が真ん中から割れて大きな船が登場。嵐でもみくちゃになる船の上で菊之助が琵琶姫と兄の主膳之助を鮮やかな早替わりで演じていました。嵐の場では大きなオルガンのような音楽が奏でられる中、雷を表す太鼓が激しく打ち続けられていましたがその和洋競演ぶりを面白く感じました。

先月博多で同じメンバーで上演されたばかりのせいか、全員台詞の間がとてもよくポンポンとはずむように芝居が進んでいきます。しかし今回安藤英竹を演じた翫雀は、思い切ったはじけっぷりでは松緑に及ばなかったようです。松緑の明るさ、おおらかさはこの役にはぴったりでしたので、特に丸尾坊太夫を罠にかける場面でその違いがはっきりと顕れました。

前回は坊太夫と、罠にかけようと企む四人、麻阿、洞院鐘道、比叡庵五郎、安藤英竹の五人の五重唱のようでとても面白く感じたのですが、今回は菊五郎の坊太夫と四人のバックコーラスのようでした。菊五郎の存在が大きく全面に出ているように感じられたわけです。亀治郎の麻阿は賢くてちょっと意地悪で小生意気なところにますます磨きがかかり、時には芋虫のような匍匐前進までやって大いに笑わせていました。

菊之助は獅子丸になりすましながらも、思わず琵琶姫に戻ってしまうところが、本当はこの人は男性なのか、女性なのかわからなくなるくらい自然で見事でした。男性と女性の間を自由に行き来する菊之助は、現代の女形として一つの典型を作り上げたように思えます。

時蔵の織笛姫も以前よりかわいらしさが出てよかったと思います。菊之助の吹替えに今回もお面をかぶった役者さんがでてきて、くぐもった台詞を一言しゃべっていましたが、横を向いた時の不自然さがどうも私にはなじめませんでした。

菊五郎の捨助が皆に見送られて花道を引っ込んで行くところは、まさに大団円という言葉がぴったりでした。

前回より15分短くなった「十二夜」、整理されてずっとわかりやすくなったようで、初めて見た時の新鮮な驚きはなくなったかわりに、ウイットに富むすっきりと洗練された舞台を見せてくれました。

この日の大向こう

この日は会の方はおひとりいらしていて、一般の方2〜3人と主に出と引っ込みに声をかけていらっしゃいました。女形の麻阿に普通あまりない見得が何度かあって、声がかかっていたのが印象的でした。麻阿と仲間たちが花道を引っ込むところには、この日一番多くの声がかかっていました。

歌舞伎座7月公演演目メモ
「NINAGAWA 十二夜」
 菊之助、錦之助、亀治郎、左團次、團蔵、時蔵、、松也、菊五郎

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