べっ甲製品にみる日本人のライフスタイル〜伝統を超えて〜
日本人が、古来からべっ甲製品を好む理由は、べっ甲製品が、日本人のこまやかな心遣いやしぐさ、物腰のやわらかさにぴったりフィットしているからです。
いや、単にそれだけでなく、これらを一層際立たせているのに効果を発揮しており、また、実用的にも優れた物と言えます。例えば、「めがね」の場合、「肌にやさしく、軽く、顔の形状に馴染みやすく、使用感が大変良い。」「素材が冬は暖かく、夏は涼やかで、使う人に安心と満足感を与え、活動的な現代人にぴったりです。」洋装品としてペンダント、ブローチ、ネックレス、イヤリング、指輪、和装品としてかんざし、櫛、帯留、髪留等べっ甲の柔らかなツヤや色の変化は現代女性に潤いと満足感を与えています。母親から娘へ、その子供へと古き良き物(べっ甲製品)が継承され、利用されているのは人類にとっても貴重な財産であるといえます。また紳士用品や、時計バンドも愛用され、特に三味線のバチは音色が代用できない貴重な素材です。
このように、べっ甲製品が現代にも確固として人々の心の中に根付いているのは、これを支える日本の職人の心意気とその技術が評価されていることの証左でもあります。そして、日本人は、この良きライフスタイルを末永く守っていきたいと念願しています。
ベッ甲の歴史
鼈甲の我が国における歴史はかなり古く、中国、ポルトガル等で産み出された技法が奈良時代に伝来されました。かの有名な正倉院の宝物の中にもタイマイ(玳瑁)杖、タイマイ如意、螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ)等が見られます。鼈甲の気品は、古来より高く評価され、鎌倉八幡宮宝物殿の中に、矢たてその他に鼈甲製品が多く使用されております。又江戸時代にも各大名が愛用したものです。明治、大正、昭和、平成にかけてその技法は受け継がれ、各時代に合った装飾品や工芸品が造られています。
海亀の保護と貢献について
東京鼈甲組合連合会(主に都内事業者が加入のべっ甲3団体で構成)は、べっ甲業界を代表する日本べっ甲協会(JBA)と共に、過去各国と協力して海亀の保護・育成に貢献してきました。カリブ海域においては、キューバと連携して、現在、タイマイの各種調査を行っています。日本国内においては、沖縄、名古屋の水族館、石垣島で産卵、孵化、飼育の調査研究を行うなど、海亀保護の観点から実態的な取組みを進めています。また、日本べっ甲協会(JBA)では、財源的措置として別途保護基金を設置して、その資金をウミガメ保護に関して科学者やNGOSが行うプロジェクトに充てることとしています。べっ甲業界としても、今後いっそう海亀の保護に貢献していきたいと思っています。
いつまでも、美しくお使いいただくために。
使ったあとは、柔らかい布で拭き、薄紙に包んで保管してください。動物性の素材ですから、虫に食われないよう、防虫剤を少し入れましょう。たくさん入れると、べっ甲の表面が曇ることがあります。整髪料、化粧品、汗等により表面の劣化、変質、変化の原因となる可能性ありますので速やかにふき取りましょう。また、身につけたまま入浴することのないようにしましょう。超音波洗浄機のご使用は変色、変質の原因となる場合があります。大切にされたべっ甲は、いつまでも愛情にこたえてくれます。
べっ甲製品の特徴/製造過程
日本のべっ甲製品は、一匹のタイマイの甲から一つの製品を製造するのではなく、製作したい完成品のイメージ(色、模様、大きさ等)にあわせ、複数匹のタイマイを選び出し、それを水と熱を加えながら圧力をかけ、甲が何層にも重なった1枚の板(生地)を製作します。その後、裁断、彫刻、組立等を行うといった多工程かつ熟練技術を伴うのが、日本のべっ甲製品の特徴であり、高い品質を支える要因となっております。日本のべっ甲製品は、他国製や他の製品とは異なる特徴を有しております。
べっ甲は東京の伝統工芸品
昭和56年10月1日に制定された「東京伝統工芸品産業振興対策要項」に基づき知事が指定するものが「伝統工芸品」です。江戸鼈甲は昭和57年2月にこの指定を受けました。今日東京は長崎・大阪とともに鼈甲三大産地として半数を上まわる生産額をしめています。製品は帯留め、かんざしなどの和装品からネックレス、ブローチ、などの洋装品、眼鏡枠や撥まで多種多様。天然の原材料を使い伝統的な手作りの技法により作られる製品は本物がもつ独特な味わいがあります。この伝統工芸品は次代へと引き継がれていくことでしょう。
べっ甲製品の国内販について
ワシントン条約は国際取引を規制するものであり、国内では「種の保存法」等の管理のもとタイマイの甲羅を材料とするべっ甲製品の国内販売は規制されておらず、また、禁止されておりません。社団法人べっ甲協会並びに東京鼈甲組合連合会では、国や東京都の援助を得て、ワシントン条約の理念である『持続可能な利用』をめざし、タイマイの資源調査事業、増・養殖・保護事業を展開するとともに、永年にわたり培われてきた貴重な伝統技術の保存・伝承をはかるべく努力を続けてまいります。優れた工芸品の創造により、わが国の社会文化により一層の貢献をめざすべっ甲製品をご愛用くださいますようお願い申し上げます。
EDO BEKKO
TORTOLSHELL PRODUCTS
~History and Characteristics~
The history of bekko is very long.
Bekko ware can be found in Seisho-in Treasure House in Nar,
But the intricate molds only became possible during the Edo
Period (1603-1868) with the introduction of the technique
to combine Pieces together.
Bekko ware made in Tokyo is characterized by ornamentation
using the makie technique (sprinkled picture), sculpture and inlay,
used for items such as spectacle frames.
~Main Areas of Manufacture~
Bunkyo Ward, Taito Ward, Sumida ward, etc.