30 Minutes NetWorking
No.SW15

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BCMSN

第15回VLAN間ルーティング

■ VLAN間通信

スーパーインター博士

さてさて。STPの前の話、VLANの話だ。
VLANとは何だった? もちろん覚えているよな。

ハイパーネット助手

やだなぁ、博士。いくらなんでも覚えてますって。
スイッチだけで論理的にネットワークを分割する技術、でしたよね。

スーパーインター博士

よしよし、ちゃんと覚えていたな。まぁ、いくらなんでもそんなにすぐ忘れるとは思えないが、なんと言ってもネット君だからな。

ハイパーネット助手

えへへ。

スーパーインター博士

褒めてねぇ

ハイパーネット助手

はぅっ。

スーパーインター博士

今の科白でどこをどう受け取ったら褒められていると思うのだ。
まぁ、ともかくだ。つまりVLANとはスイッチにどう接続されているかと、ネットワークの構成がまったく関連のない形になるわけだな。

ハイパーネット助手

ですね。

スーパーインター博士

ということは、異なるVLAN宛へのデータを送りたい場合どうなるのだ?
念のため言っておくが、VLANとはネットワーク(ブロードキャストドメイン)だぞ。

ハイパーネット助手

異なるVLAN宛? つまり異なるネットワークへ送るわけですから、ルータに中継してもらう必要がありますよね。

スーパーインター博士

うむ、つまり、同一のスイッチに接続されていようがどうだろうが、所属するVLANが異なる場合は、ルータが必要、ということだ。

VLAN宛の通信

[FigureSW15-01:VLAN宛の通信]

スーパーインター博士

AからB宛は同一ネットワーク宛なので、スイッチを経由して届く。
だが、AからC宛は異なるネットワーク宛なので、ルータを経由しないことには届かない。

ハイパーネット助手

あ〜、なるほど。同じスイッチに接続しているのに、VLANが違うから届かなくなってしまうんですね。物理的な接続だけ見れば変な話ですよねぇ。

スーパーインター博士

なんといってもVLANは論理的な接続構成だからな。
つまり、各ホストに対するデフォルトのルートプロセッサが必要になるわけだ。

ハイパーネット助手

るーとぷろせっさ?

スーパーインター博士

ルーティングするプロセッサ、まぁ、ごく簡単に言えばルータ、ルーティングエンジンを搭載した機器だな。

ハイパーネット助手

「デフォルトのルートプロセッサ」というのは、デフォルトゲートウェイのことですか?

スーパーインター博士

まぁ、そうだ。
つまりは、このような構成にしなければならん、というわけだ。

VLAN宛の通信・2

[FigureSW15-02:VLAN宛の通信・2]

ハイパーネット助手

ははぁ、異なるVLAN宛はルータを経由する、と。

スーパーインター博士

そういうことだな。
だが、上の図では簡単に書いたが、実際構成するとなると、そんなに簡単に済ませられる話ではない。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

■ 複数のVLANの通信

スーパーインター博士

複数のスイッチでVLANを構成する場合のことを覚えているか?

ハイパーネット助手

複数のスイッチでVLANを構成する場合?

スーパーインター博士

複数のスイッチでVLANを構成する場合、スイッチ間のリンクにどのようなデータを流すかが問題だった。
それと同様、ルートプロセッサとスイッチ間のリンクでどのようなデータを流すか、が問題になるわけだ。

ハイパーネット助手

どのようなデータを流すか?
普通にデータを流せばいいんじゃないんですか?

スーパーインター博士

普通に、とはどのようなことを指すのだ?
相手はVLANだぞ? VLANを使用している場合、どのVLANのデータかを識別しなければならない。

ハイパーネット助手

タグ?

スーパーインター博士

そうだ、タグが必要、つまりISLかIEEE802.1Qによるタギングを行う必要がある。
そうでなければ、VLANごとにインタフェースを分けてやらなければならない。

VLANごとにインタフェースを分ける

[FigureSW15-03:VLANごとにインタフェースを分ける]

スーパーインター博士

VLANごとにインタフェースを分けた場合の例だな。
スイッチのeth0/0ポートはVLAN1に所属しており、eth0/1ポートはVLAN2に所属している。

ハイパーネット助手

は〜。この場合、タギングは必要ないですよね?

スーパーインター博士

ない。論理的には以下のような図と同じ意味だからな。

FigureSW15-03の論理構成図

[FigureSW15-04:FigureSW15-03の論理構成図]

ハイパーネット助手

ですよね。

スーパーインター博士

この場合、VLANごとにスイッチ、ルートプロセッサにインタフェースが必要ということで、効率も悪いし、拡張も大変だ。

ハイパーネット助手

無駄じゃないか?って奴ですよね。
そういえば、複数のスイッチでVLANを構成するときも同じ話しましたよね。

スーパーインター博士

うむ。その解決法も同じということはわかるよな。
タギングだ。

タギングを使った接続

[FigureSW15-05:タギングを使った接続]

ハイパーネット助手

ルートプロセッサとスイッチ間のリンクをトランクリンクにするんですね。
それによるタギングで、どのVLAN宛のデータか識別する、と。

スーパーインター博士

そういうことだな。このタギングを使った方式では、1つポイントがある。
それはルートプロセッサがISLかIEEE802.1Qを理解できなければならないという点だ。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

もちろんだ。それは、そうだな。動きのある方がいいだろう。

[FigureSW15-06:タギングを使ったVLAN間ルーティング]

ハイパーネット助手

は〜。そうか、トランクリンクから送信する時はタグをつけなきゃ駄目なんですよね。
なので、ルートプロセッサもタギングを知ってなければいけない、ということですね。

スーパーインター博士

まぁ、もちろん、IEEE802.1QのネイティブVLANはタグをつけなくていいが。
それ以外の場合、タグをつけなければトランクリンクでわからなくなってしまう。だからルートプロセッサがタギングを知らなければならない、ということだ。

ハイパーネット助手

なるほどです。

■ ルートプロセッサの種類

スーパーインター博士

さて、ルータではなく、わざわざルートプロセッサといったのは、もちろん理由がある。
ルーティングする機器としてルータともう1つありえるからだ。

ハイパーネット助手

ルータ以外にルーティングする機器がある?

スーパーインター博士

うむ。まぁ、実際はルータと変わらないが。
まずルータをルートプロセッサとして使用する場合、それは外部ルートプロセッサと呼ばれる。

ハイパーネット助手

外部? どこの「外部」なんですか?

スーパーインター博士

うむ、「スイッチの外側」という意味で「外部」だ。
さきほどの図などのように、スイッチと、さらに個別のルータを用意する場合だな。

ハイパーネット助手

「スイッチの外側」?
じゃあ、スイッチの内側にルータがある場合があるってことですか?

スーパーインター博士

そうだ。その場合、内部ルートプロセッサと呼ぶ。
スイッチのボックス内部にルートプロセッサが存在するのだ。

ハイパーネット助手

スーパーインター博士

簡単に言えば、内部にトランクリンクを持つボックスにスイッチとルータを設置した感じだな。

内部ルートプロセッサ

[FigureSW15-07:内部ルートプロセッサ]

ハイパーネット助手

は、はぁ。それはずいぶん大きな箱になりそうですね。

スーパーインター博士

いや、そうでもない。外見上は普通のスイッチとなんらかわりない。
これにより、スイッチとルータという2つのものを配置する必要もないし、さらにいちいち接続する必要もないわけだ。

ハイパーネット助手

なるほどです。

スーパーインター博士

この内部ルートプロセッサだが、これも2種類ある。
つまり通常のルータと同様の機能を持つ拡張カード・モジュールをスイッチに追加する場合と、レイヤ3スイッチとして設計されたもの、の2種類だ。

ハイパーネット助手

拡張カード・モジュールか、レイヤ3スイッチ…。
拡張カード・モジュールってどんなんです?

スーパーインター博士

うむシャーシにとりつけるモジュールとして、RSMがある。
一方で、スーパバイザエンジンにとりつけるドータカードとして、RSFCがある。

ハイパーネット助手

は、はぁ。

スーパーインター博士

Catalyst5000シリーズのスイッチはRSMとRSFCだが。
Catalyst6000/6500シリーズだと、MSMMSFCと呼ばれる。

ハイパーネット助手

は、ははぁ。

スーパーインター博士

これにより、Catalyst5000/6000/6500シリーズスイッチは、マルチレイヤスイッチとなるわけだ。

ハイパーネット助手

は、はははぁ。

スーパーインター博士

どうした、ネット君?

ハイパーネット助手

さっぱりです。

スーパーインター博士

それはいつものことだ
だがまぁ、わかりやすいよう表にしておこう。

スイッチモジュール・カード特徴
Catalyst5000RSM800Mbps半二重のポートを持つルータとして認識される
Cisco7500ルータと同等
RSFCスーパバイザエンジンIIGまたはIIIGに接続される
Catalyst6x00MSM4つに1Gbps全二重ポートを持つルータとして認識される
MSFCスーパバイザエンジンIAまたはIIに接続される

[TableSW15-01:内部ルートプロセッサ]

スーパーインター博士

まぁ、基本的にはスイッチ内部でルータと接続している、と考えればいい。
いちおうRSMをちょこっとだけ説明しておこう。

ハイパーネット助手

あ、はい。

スーパーインター博士

RSMのインタフェースは2つのチャネルを持っていて、作成されたVLANはそのどちらかのチャネルを使ってRSMと通信する。

ハイパーネット助手

ちゃねる?

スーパーインター博士

そうだな、物理的な回線を論理的にわけている、と考えると簡単かな。
ともかく、まずデフォルトでCatalystスーパバイザエンジンと通信するためのVLAN0と、管理VLANのVLAN1が作成され、それがそれぞれチャネル0とチャネル1を使う。

ハイパーネット助手

は〜。

スーパーインター博士

RSMは2つのMACアドレスを使用する。1つはVLAN0専用。もう1つは512個のMACアドレスから任意に選ばれたアドレスで、他のVLANが使用する。

ハイパーネット助手

512個持っていて、1つしかつかわないんですか?

スーパーインター博士

そうだ。通常はVLAN0は使えないから、1つのMACアドレスを持つルータとしてRSMは使われるわけだな。
ともかく、RSMはこんな感じだ。

ハイパーネット助手

はぁ。そういえば、レイヤ3スイッチってのはどんなんです?

スーパーインター博士

基本的にはスイッチ内部にルータを持つスイッチ、つまりRSMやRSFCをつけたスイッチと変わりはない。

ハイパーネット助手

基本的には?

スーパーインター博士

基本的には、だ。
ただし、RSMやRSFCはあくまでも「ルータ」を内部に持つのだよ。

ハイパーネット助手


レイヤ3スイッチも「スイッチ内部にルータを持つスイッチ」なんでしょ?

スーパーインター博士

そうだが、RSMやRSFCの「ルータ」はソフトウェアベース。つまりソフトウェアでルーティングを行うルータだ。
一方のレイヤ3スイッチが内部にもつ「ルータ」はハードウェアベースだ。

ハイパーネット助手

ハードウェアベース?

スーパーインター博士

ブリッジがソフトウェアベースでレイヤ2処理を行うのに対し、スイッチはハードウェアベースでレイヤ2処理を行う。それはASICで行うことにより高速になったわけだ。

ハイパーネット助手

あ〜、なんか昔聞いたことがあるような。

スーパーインター博士

それと同様、ASICを使ってルーティング処理を行うのがレイヤ3スイッチについているルータなのだよ。なのでRSMや外部ルートプロセッサに比べ高速化されている。

ハイパーネット助手

は〜。つまりRSMでルーティング機能をもったスイッチと、レイヤ3スイッチは、ルーティングができるスイッチという点では一緒ですけど、実質的には別物、ということですか。

スーパーインター博士

ま、基本的にはな。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

さて、今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

次回は今回の話を踏まえた上での話だ。

ハイパーネット助手

了解ッス。
30分間ネットワーキングでした〜♪

ルートプロセッサ
[Route Proccessor]
RSM
[Route Switch Module]
スーパバイザエンジン
[Supervisor Engine]
Catalystスイッチ内で、データ転送の制御などを行うエンジンカード。
II 〜 IVまでのバージョンが存在する。
ドータカード
[Daughter Card]
それ自体もカードであるスーパバイザエンジンに取り付けるカードのため、ドータカードと呼ばれる。
RSFC
[Route Switch Feature Card]
MSM
[Multilayer Swich Module]
販売終了商品らしいです。現在はMSFCでMSMと同じことを行います。
でもそんなこといったら、Catalyst5000スイッチ自体がそうですが。
MSFC
[Multilayer Switch Feature Card]
ASIC
[Application Specific Integrated Circuit]
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • VLAN間で通信するためにはルーティングが必要
  • 外部に別個にルータを用意する方法と、スイッチ内部にルータを持たせる方法がある。

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