30 Minutes NetWorking
No.SW12

30Minutes NetWorking

BCMSN

第12回STP(4) VLANとSTP

■ CST

スーパーインター博士

ここまでSTPの説明を3回続けたわけだが。
まだまだSTPの話が続く。

ハイパーネット助手

は〜。長いッスね。

スーパーインター博士

そうだな。さて、ネット君。
STPはもちろんブリッジ・スイッチで実行されるわけだな。

ハイパーネット助手

あ、はい。ですよ。

スーパーインター博士

うむ。では、スイッチといえば、何かね?
あぁ、もちろん、今まで説明してきた中での話だ。

ハイパーネット助手

いままで説明してきた中で?
今まで説明してきたことといえば、キャンパスネットワークとVLAN…。VLAN?

スーパーインター博士

まぁ、STP以外では事実上VLANしか話していないわけだから、VLANなのだが。
スイッチとブリッジの最大の違いと言えば、VLANを構成できるかどうか、という点がある、という話だ。

ハイパーネット助手

ははぁ。そういわれればそうですね。

スーパーインター博士

もともとSTPはブリッジのころからあったモノだ。
なので、VLANが構成できるスイッチが登場すると、ちょっと問題になる事が発生した。

ハイパーネット助手

問題?

スーパーインター博士

例えば、こうだ。

[FigureSW12-01:CST]

ハイパーネット助手

あらら。なんかずいぶんと遠回りしますね。
VLAN11があるのは、SW-CとSW-Dだけなのに。

スーパーインター博士

うむ、確かに遠回りだな。
何故こうなる?

ハイパーネット助手

ん、ん〜っと。……、VLANとSTPが関係してないからですか?

スーパーインター博士

そうだ。VLANの構成とSTPが無関係に存在するからだな。
つまり、VLANがどうあれ1つのSTPツリーだけで冗長構成をとっているからこうなる。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

このようなSTPをCSTという。

ハイパーネット助手

しーえすてー。

■ PVST

スーパーインター博士

さて、CSTで起きたような遠回りを防ぐにはどうすればよい?

ハイパーネット助手

え〜っと。STPをやめる

スーパーインター博士

ネット君?

ハイパーネット助手

はい?

スーパーインター博士

あいもかわらずシンプルかつ明確な答えだな。
現状を打破しようという発想が微塵も感じられない

ハイパーネット助手

えへへ。

スーパーインター博士

褒めてねぇ

ハイパーネット助手

はぅっ。

スーパーインター博士

ともかくだ。つまりSTPとVLANに関連をもたせればいいわけだな。
VLANの構成にあわせてSTPを構築すればいいわけだ。

ハイパーネット助手

VLANにあわせて、STPを設定…。具体的にはどのように?

スーパーインター博士

簡単に言えば、VLANごとにSTPを構築すればいい。
それがPVSTだ。

ハイパーネット助手

ぴーぶいえすてー。
VLANごと(Per VLAN)のスパニングツリーですか。まんまですね。

スーパーインター博士

CSTも共通(Common)スパニングツリーだから、そのまんまな名前といえばそうだな。
ともかくだ。VLANごとにルートスイッチ、プライオリティ、コストなどを設定し、個別のSTPを構築するのだ。

[FigureSW12-02:PVST]

ハイパーネット助手

は〜。完全に別のSTPが作られるってわけですね。

■ CSTとPVST

スーパーインター博士

さて、このCSTとPVSTだが、どちらを運用するか決めるかというと、トランクで使うプロトコルで区別する。

ハイパーネット助手

トランクで使うプロトコルで区別ってことは。
ISLとIEEE802.1Qですか?

スーパーインター博士

そうだ。まずIEEE802.1Q。
IEEE802.1Qでは、BPDUはVLAN1(Native VLAN)上を流れる。つまり?

ハイパーネット助手

ネイティブVLAN上を流れる?
ネイティブVLANを流れるってことは、タグがつかないってことですよね。

スーパーインター博士

うむ。なので、どのVLANのBPDUか区別する方法がない。
よって、IEEE802.1QはCSTになる。

ハイパーネット助手

は〜。
一方のISLは必ずタグがつきますよね。どのVLANのBPDUか識別できるってことだから…。

スーパーインター博士

そうだ。ISLではPVSTということになるわけだな。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

このCSTとPVSTだが、どちらも一長一短がある。
PVSTのVLANごとにSTPを計算するということは、逆にいえばVLANが多いとスイッチにSTP計算の分負荷がかかるということだし。

ハイパーネット助手

でもCSTのように1つのツリーだけでは、最適なSTPになるとは限らず、遠回りばっかりするVLANが増える場合だってあるわけですよね。

スーパーインター博士

うむ。さらに、CSTではどうしてもすべてのスイッチのことを考慮して考えなければならないため、コンバージェンスが遅くなるという点もある。まとめてみよう。

 CSTPVST
プロトコルIEEE802.1QISL
ツリー1つVLANごとに1つ
消費帯域STPが1つのため少STPごとにBPDUが必要なため大
計算量
最適パス場合によっては不可可能
ツリー規模

[TableSW12-01:CSTとPVST]

スーパーインター博士

と、こうなるわけだ。

ハイパーネット助手

へ〜。ほんとに一長一短というか、裏表なんですね。

■ PVST+

スーパーインター博士

ただ、やはり最適なパスで運用するという点を考えると、PVSTの方が優れている、と言えるだろう。
なので、やはりISL + PVSTという形になる、わけだが…。

ハイパーネット助手

わけだが?

スーパーインター博士

ISLはやはりCisco独自。現在の主流のVLANタギングプロトコルはIEEE802.1Q、IEEE標準なのだよ。

ハイパーネット助手

でも、IEEE802.1QではCSTしか使えないんでしょ?

スーパーインター博士

うむ。なので、CiscoとしてはIEEE802.1QでもPVSTを使いたい、と考えたわけだ。
その結果生まれたのが、PVST+だ。

ハイパーネット助手

ぴーぶいえすてー・ぷらす?

スーパーインター博士

そうだ。PVSTを拡張し、IEEE802.1Q環境でもPVSTを使用可能にしたわけだ。
PVSTとCSTの下位互換として運用される仕組みになっている。

ハイパーネット助手

下位互換ってことは、PVST環境でも、CST環境でも使えるってことですよね。

スーパーインター博士

ISL環境ではPVSTとして動作し、IEEE802.1Q環境ではPVST+として動作するわけだ。
動作を簡単に説明すると、まずVLAN1、つまりネイティブVLAN上ではCSTが動作している。

ハイパーネット助手

CSTが動作している?

スーパーインター博士

うむ。CST BPDUと呼ばれる、1つのSTPを作り出すためのBPDUが交換されているわけだ。
このBPDUはVLAN1のみ、CSTで作られたツリーはVLAN1専用のツリーとして扱う。

ハイパーネット助手

VLAN1専用…他のVLANは?

スーパーインター博士

他のVLANでは、タギングされたPVST BPDUをトランク上で流す。
PVST BPDUにより、VLANごとのツリーが作成されるわけだ。

ハイパーネット助手

は〜。

スーパーインター博士

と、このようにIEEE802.1Q環境でもVLAN単位にSTPを構築するわけなんだが。

ハイパーネット助手

わけなんだが? まだ問題があるんですか?

スーパーインター博士

問題があるわけではないな。
IEEEの方でも、VLAN単位にSTPを構築せねば〜と、MSTというのを作った、という話がしたかったわけなんだよ。

ハイパーネット助手

まるちぷるすぱにんぐつりー?
スパニングツリーがマルチなんですか?

スーパーインター博士

マルチに存在、複数存在するスパニングツリーというわけだ。
これに関しては、まぁ、BCMSNの範囲からはずれるので、省略だな。 ▼ link

ハイパーネット助手

省略ッスか。

スーパーインター博士

うむ、PVST+はツリーを複数持ちすぎる、という弱点を抱えてしまっている。
MSTではこれを解消している、というのが特徴だな。

ハイパーネット助手

はぁ。

スーパーインター博士

ま、ともかくだ。
CST、PVST、PVST+。それぞれの特徴を覚えておけばいい。

ハイパーネット助手

そういうもんですか。

スーパーインター博士

そういうもんだ。
さて、今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

あい。

スーパーインター博士

まだまだ次回もSTPだ。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

CST
[Common Spanning Tree]
PVST
[Per VLAN Spanning Tree]
CST BPDU
宛先としてIEEE標準STP用の、01-80-c2-00-00-00のアドレスが使用される。
PVST BPDU
こちらはCiscoのSTP用、01-00-0c-cc-cc-cdがアドレスとして使用される。
MST
[Multiple Spanning Tree]
IEEE802.1s。
RSTP(Rapid STP)を前提とした、VLAN対応のSTP。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • IEEE802.1Qがトランクとして使用されている場合、CSTが使用される。
    • VLANとは関係なく、1つだけツリーを持つ
    • VLANによっては最適なパスを使用できない。
  • ISLがトランクとして使用されている場合、PVSTが使用される。
    • VLANごとに1つのツリーを持つ。
    • ツリーの数が多くなりすぎて、負荷がかかる場合がある。
  • IEEE802.1QでもPVSTが使えるように拡張されたのがPVST+。

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