30 Minutes NetWorking
No.SW07

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第7回VLAN(4) VTP 概要

■ VLANの管理

スーパーインター博士

まだまだVLANの話のわけだが。
ネット君、VLANは複数のスイッチにまたがって存在することが可能なわけだな。

ハイパーネット助手

です。
トランクリンクで複数のVLANを運んで、複数のスイッチ間でVLANを存在させるんでしたよね。

スーパーインター博士

うむ。この場合、複数のスイッチそれぞれでVLANの設定をするわけだが。
いろいろと問題が発生する場合があるわけだ。

ハイパーネット助手

問題? 例えばどんなのです?

スーパーインター博士

例えば、違うネットワークを同じVLAN名で設定してしまったり。

ハイパーネット助手

そうすると繋がっちゃいますね。

[FigureSW07-01:VLANの設定ミス]

スーパーインター博士

繋がる、というとちょっと誤解を招くな。異なるネットワークのフレームを流してしまう、ということになってしまうわけだ。

ハイパーネット助手

ですです。
設定ミスってよくありますよね?

スーパーインター博士

うむ、特にネット君が設定すると多発するな。

ハイパーネット助手

うぐぅ。

スーパーインター博士

他にもいくつか問題はあるが、要はVLANの統一した管理が行われればいいわけだ。
もちろん、動的な管理が望ましい。

ハイパーネット助手

動的ってことは、自動化するわけですね。手動でなく。

スーパーインター博士

そうだ。つまり、ルーティングプロトコル同様、スイッチ間でVLANの情報を交換し、それを共有することができればいいわけだな。

ハイパーネット助手

ルーティングプロトコルは、ルータ間でルート情報を共有する……。
じゃあ、VLAN情報を共有するためのルーティングプロトコル…じゃなくて、VLANプロトコルみたいなのが必要ってことですね?

スーパーインター博士

うむ、珍しくするどい。
それが今回説明する、VTPだ。

ハイパーネット助手

ぶいらんとらんきんぐぷろとこる?

■ VTP管理ドメイン

スーパーインター博士

そうだ。これはCisco独自のVLAN管理用プロトコルだ。

ハイパーネット助手

ははぁ。またもCisco独自ですか。

スーパーインター博士

うむ。CCNPだからな。
ともかく、VTPを使うことにより、一貫性のあるVLAN設定が可能になるわけだ。

ハイパーネット助手

ふむふむ。

スーパーインター博士

さて、VTPだが。動作のイメージとしてはやはりルーティングプロトコルがわかりやすいだろう。
ルータがルート情報をアドバタイズするように、スイッチはVLAN情報をアドバタイズする

ハイパーネット助手

VLANの情報をアドバタイズ。
確かにルーティングプロトコルっぽいですよね。

スーパーインター博士

ルーティングプロトコル、特にIGRPやEIGRPが同じAS番号のルータにしかアドバタイズしないように、VTPも同じ組織内にしかアドバタイズを送らない。これをVTP管理ドメインという。

ハイパーネット助手

管理ドメイン?

スーパーインター博士

そうだ。この管理ドメインを同一にしたスイッチ間でしか、アドバタイズは転送されない。

[FigureSW07-02:VTP管理ドメイン]

ハイパーネット助手

なるほど。VLANの情報を共有する範囲がVTP管理ドメインなんですね。

スーパーインター博士

そういうことだな。各スイッチは1つのVTP管理ドメインに所属することになる。

ハイパーネット助手

1つのってことは、複数のVTPドメインに所属することはないってことですか?

スーパーインター博士

そうだ。あくまでも1つだ。
このVTP管理ドメイン内にアドバタイズを伝播させるわけだが、どのように伝播させるかは、スイッチのVTPモードを知る必要がある。

ハイパーネット助手

もーど?

■ VTP動作モード

スーパーインター博士

うむ。そのスイッチがVTPドメインで果たす役割のことをVTP動作モードと呼ぶ。これには3種類ある。

  • サーバモード(デフォルト)
  • クライアントモード
  • トランスペアレントモード
ハイパーネット助手

さーば、くらいあんと、とらんすぺあれんと?

スーパーインター博士

そうだ。まず、サーバとクライアント。
これはVLANの設定変更が可能なサーバと、変更結果を受け取って自身の設定を変更するクライアントだ。

ハイパーネット助手

スーパーインター博士

つまり、変更可能なサーバと、変更不可能なクライアント、だ。
クライアントスイッチはサーバからのアドバタイズメントでだけ、VLANの情報を変更できる。

ハイパーネット助手

え、え〜っと?

スーパーインター博士

あぁ、わかったわかった。図で説明しよう。

[FigureSW07-03:スイッチの動作モード]

ハイパーネット助手

ははぁ。クライアントモードは、ホントにクライアントなんですね。
サーバからのアドバタイズメントを受け取って、それで設定を変えるだけ。

スーパーインター博士

そういうことだ。

ハイパーネット助手

で、え〜っと。クライアントモードのスイッチは設定をNVRAMに保存しない?

スーパーインター博士

そうだ。なので電源を切るとVLAN情報が消えてしまう。
その場合、サーバからアドバタイズを受けてまた設定しなおすわけだな。アドバタイズの流れについては後で説明する。

ハイパーネット助手

はい。
で、もう1つがトランスペアレント? 透過?

スーパーインター博士

うむ。もう1つの種類がトランスペアレントモードだ。トランスペアレントモードのスイッチはVTP管理ドメインのVLAN情報に関与しない

ハイパーネット助手

関与しないって。関与しない?

スーパーインター博士

そうだ。自分のVLAN設定をアドバタイズしない。サーバからのVLAN情報で自分の設定を変更しない。独立したVLAN情報を持つスイッチだ。

ハイパーネット助手

う、うう?

スーパーインター博士

つまり、こういうことだ。

[FigureSW07-04:トランスペアレントモード]

ハイパーネット助手

アドバタイズを通過させるから、トランスペアレントなんですか?

スーパーインター博士

そういうことだな。

ハイパーネット助手

はは〜。ドメイン内で独立して、他に影響しない・されないスイッチなんですねぇ。
でも、なんでこんなのが必要なんですか?

スーパーインター博士

そうだな。例えば、下のようなネットワーク構成があるとする。

トランスペアレントスイッチの存在

[FigureSW07-05:トランスペアレントスイッチの存在]

スーパーインター博士

中央のSW-AにあるVLAN100・110はそのスイッチにしかなく、今後も他のスイッチにあることない。さらに、SW-Aは他のスイッチで使われているVLANが今後も使われない状態だとする。

ハイパーネット助手

…だとすると、SW-Aは他のスイッチから独立した存在ですよね。

スーパーインター博士

だろう?
ならば、クライアントモードにしたり、サーバモードにしたりするよりは、トランスペアレントにした方が有効だと思わないか?

ハイパーネット助手

なるほど。

■ VTPアドバタイズメント

スーパーインター博士

さてさて、このVTPで使われるVLAN情報、つまりVTPアドバタイズメントだが。
まず、すべてのスイッチはVLAN1に所属しているものとする。

ハイパーネット助手

VLAN1に?

スーパーインター博士

そうだ。通称、「管理VLAN」と呼ばれるVLANだ。つまり、VLAN1宛のフレームは、そのスイッチ宛のフレームだ、ということだな。スイッチに管理用に割り振られるIPアドレスなどもすべてVLAN1に所属しているものとする。

ハイパーネット助手

ははぁ。管理VLAN。
スイッチがVLANに所属…。

スーパーインター博士

そうだな。スイッチの中に管理用のコンピュータがあると考えてみるとわかりやすいかもな。
その管理用のコンピュータは、そのスイッチのVLAN1に接続されていると考えるんだ。

ハイパーネット助手

スイッチの中にコンピュータ…それがVLAN1…なんとなくわかります。

スーパーインター博士

うむ。VTPアドバタイズメントは、VLAN1宛にトランクリンクでマルチキャストされる

ハイパーネット助手

まるちきゃすと。

スーパーインター博士

そうだ。さて、このVTPアドバタイズメントだが、これも3種類ある。

  • 要約(サマリ)アドバタイズメント
  • サブセット アドバタイズメント
  • アドバタイズメント要求
スーパーインター博士

そして、このアドバタイズメントの最重要キーワードは設定リビジョン番号だ。

ハイパーネット助手

設定りびじょん? revisionは「改訂」とかの意味ですよね?

スーパーインター博士

そうだ。つまりVLAN情報の変更回数を示す値だ。VLAN情報が変更されると大きくなる
リビジョン番号が大きい情報のものが最新の情報という意味になる。

ハイパーネット助手

ははぁ。つまり、アドバタイズメントで送られるVLAN情報の新しさ、ってところですか?

スーパーインター博士

そういうことだな。各スイッチはアドバタイズメントのリビジョン番号と自分のVLAN情報と比較することにより、最新のVLAN情報を入手するわけだ。

ハイパーネット助手

なるほどです。

スーパーインター博士

さて、実際の動作だが。このような形になる。

[FigureSW07-06:VTPアドバタイズメント]

ハイパーネット助手

は〜。要約→要求→サブセット、の順番ですか。

スーパーインター博士

うむうむ。要約アドバタイズメントは、VLANの修正時と300秒(5分)間隔で送信される。

ハイパーネット助手

イベントトリガ + 定期アップデートですね。

スーパーインター博士

そうだな。
くどいようだが、VTPアドバタイズメントはすべてトランクリンク上で送られる。ということはつまり?

ハイパーネット助手

つまり?

スーパーインター博士

つまりなんだね、ネット君?

ハイパーネット助手

つまり…………すごい?

スーパーインター博士

何がだ
いつも言ってる通り、考えることを忘れるな

ハイパーネット助手

うぅぅぅ。

スーパーインター博士

つまり、ISLもしくは、IEEE802.1Qでカプセル化・タギングされた(イーサネット)フレームだ、ということだ。
データ部にVTPアドバタイズメント情報が入っている、ということだな。

ハイパーネット助手

あ〜。なるほど。

スーパーインター博士

まったく。
さて、これぐらいで今回は終わりにしよう。

ハイパーネット助手

はいはい。

スーパーインター博士

次回もVTPの話だ。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

VTP
[VLAN Trunking Protocol]
アドバタイズ
VTPでアドバタイズされる情報を、「VTPアドバタイズメント」と呼ぶ。
NVRAM
[Non Volatile RAM]
不揮発性RAM。Ciscoルータ・スイッチでは設定ファイル(startup-config)が保存されている。
管理VLAN
設定を変更することにより、VLAN1以外でも可能。
STPのBPDUなどもすべてこの管理VLANでやりとりされる。
通常、管理VLANには通常のPCを所属させない。
マルチキャスト
もちろん、VLANはレイヤ2レベルですので、レイヤ2マルチキャストです。
宛先MACアドレスは「01-00-0c-cc-cc-cc」。
設定リビジョン番号
[Configure Revision No.]
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • スイッチ間でVLAN情報の動的な管理を行うためのプロトコルがVTP。
  • VTP管理ドメインを作成し、同じドメイン名を持つスイッチのみで情報を共有する。
  • VTPのスイッチは3つの動作モードで動く。
    • サーバモードはVLANの変更が可能で、他スイッチにアドバタイズメントを送る。
    • クライアントモードでは設定変更不可で、サーバからの変更を受け取る。
    • トランスペアレントモードは、独立していて、他スイッチからの影響を受けない。
  • VTPアドバタイズメントも3種類ある
    • サーバは変更時もしくは定期的に要約を送る
    • クライアントはリビジョン番号を確認し、新しいものなら要求を送る
    • 要求を受け取ったサーバは情報の入ったサブセットを送る

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp