30 Minutes NetWorking
No.SW04

30Minutes NetWorking

BCMSN

第4回VLAN(1) 概要

■ スイッチドネットワーク

スーパーインター博士

さて、今回からは新しい話をしよう。
もちろん、キャンパスネットワークの話が前提にあっての話だ。

ハイパーネット助手

つまり、WANはあまり関係ないってことですね。
LANメインの話ってことですか。

スーパーインター博士

そうだな。BCMSNはスイッチがメインだからな。WANではBCRANになってしまう。
ともかく、レイヤ2スイッチというのは、かなり強力なLAN制御デバイスだ。

ハイパーネット助手

MACアドレスでのフィルタリング。全二重可能。コリジョンフリー…、って感じですよね。

スーパーインター博士

そう。確かにそれらの特徴から、レイヤ2スイッチはLAN内のトラフィック制御に大きく貢献する。
だが、それらの機能が逆に欠点を生み出してしまう。

ハイパーネット助手

レイテンシ、ですか?

スーパーインター博士

確かにスイッチはハブに比べて、レイテンシを増加させる。
だが、今回話す欠点はそれではない。ネットワークの規模の増大の問題だ。

ハイパーネット助手

規模? レイヤ2スイッチを使うと規模が大きくなる?
それって悪いことなんですか?

スーパーインター博士

うむ。まず、レイヤ2スイッチはイーサネットの距離制限を無効化できる

ハイパーネット助手

イーサネットの距離制限って、ハブの接続数のことですか?

スーパーインター博士

そうだ。

ハブの段数制限

[FigureSW04-01:ハブの段数制限]

スーパーインター博士

もともと、このイーサネットの距離制限はコリジョンの検出から導き出されたものだ。
コリジョンフリーのレイヤ2スイッチが入ることにより、この距離制限は無視される。

ハイパーネット助手

ふむふむ。ということは、レイヤ2スイッチを組み合わせれば大きなネットワークが作成できるってことですよね。

スーパーインター博士

そう、ここでもう1つ、L2スイッチの弱点が問題になる。
ブロードキャストだ。

ハイパーネット助手

L2スイッチによるネットワークの巨大化は、ブロードキャストドメインの巨大化ってことですか?

スーパーインター博士

そういうことだな。
実際、ブロードキャストを前提にしたプロトコルは結構多い。その処理がユーザPCの負荷を増大させるわけだ。

ハイパーネット助手

じゃあ、ブロードキャストドメインを分割すればいいわけですよね。
ルータを使えばいいじゃないですか。

スーパーインター博士

ルータは確かにブロードキャストドメインを分割するが、イーサネットインタフェースの数に限界がある。
ある程度以上の規模のネットワークでは、そのサブネットの数を満たすためのルータ数が膨大になってしまう可能性がある。

ハイパーネット助手

ルータのイーサネットインタフェースってどのくらいあるんです?

スーパーインター博士

多くて2〜4つだな。
さて、ではどうする? ブロードキャストドメインを分割したい、だがルータはその役割にはちょっと使いづらい。

ハイパーネット助手

多くのイーサネットインタフェースを持ちながら、ブロードキャストドメインを分割できる機器があればいいですよね。

スーパーインター博士

そうだ。だからといって、新たな機器を持ち込むとまたネットワーク構造がややこしくなる。
できるならば、レイヤ2スイッチでブロードキャストドメインを分割できるといいわけだな。

ブロードキャストドメインの分割

[FigureSW04-02:ブロードキャストドメインの分割]

スーパーインター博士

そのための技術が、バーチャルLAN。通称VLANだ。

ハイパーネット助手

ばーちゃるらん。ぶいらん。

■ Virtual LAN

スーパーインター博士

VLANは名前の通り仮想的にネットワークを構成できる技術だ。

ハイパーネット助手

仮想的にネットワークを構築……?
なんかこう、バーチャルリアリティって感じですか?

スーパーインター博士

バーチャルリアリティとは、また最近聞かない言葉を持ってきたものだな。
バーチャルといえば、バーチャルリアリティという見事かつ貧困な発想は敬服する。

ハイパーネット助手

見事ですか、僕。えへへ。

スーパーインター博士

褒めてねぇ

ハイパーネット助手

はぅっ。

スーパーインター博士

ともかくだ。先ほどの話から継続していけばわかるとおり、レイヤ2スイッチでブロードキャストドメインを分割する技術なわけだな。

ハイパーネット助手

なんでそれがバーチャルなんですか?

スーパーインター博士

それの理由はまた先で話そう。
ブロードキャストドメインを分割するということは、特定のインタフェースにのみブロードキャストが流れるようにする、ということだ。

[FigureSW04-03:VALNによるブロードキャストドメインの分割]

ハイパーネット助手

ブロードキャストが流れるポートが、全部ではなく一部になるんですね。

スーパーインター博士

そう、ルータのように1つのポートが1つのブロードキャストドメイン、というわけではなく。
複数のポートが1つのブロードキャストドメインに所属する形になるわけだ。

ハイパーネット助手

ははぁ、そうやってブロードキャストドメインを分割してるわけですね。

スーパーインター博士

そういうことだな。
L2スイッチ内では、VLAN番号という番号をつけてブロードキャストドメインを識別する。

VLAN番号

[FigureSW04-04:VLAN番号]

スーパーインター博士

例えば、上の図ではAとCが所属するブロードキャストドメインを「VLAN1」。
BとDが所属するブロードキャストドメインを「VLAN2」と名付けているわけだ。

ハイパーネット助手

ふむふむ。

スーパーインター博士

同じVLAN番号を持つものにのみ、ブロードキャストが届くようになるわけだな。
ちなみに、ブロードキャストドメインのことをVLANと呼ぶことが多い。

ハイパーネット助手

は〜。同じスイッチに接続していながらも、違うブロードキャストドメインに所属する形になるわけですか。

スーパーインター博士

そういうことだ。つまり、見た目(物理的な接続)だけではネットワーク構成がわからなくなっているわけだ。
物理的な接続とはまた別の論理的な接続が存在するようになるのだ。

ハイパーネット助手

実際の配線とはまた違う、別の論理的な配線が存在する、と。

スーパーインター博士

そうだ。だからバーチャル(仮想)LANなのだよ。

ハイパーネット助手

なるほど。

■ VLANの識別

スーパーインター博士

さて、どのようにVLANを作っていくかと言うと、2種類の方法がある。
スタティックVLANダイナミックVLANだ。

ハイパーネット助手

静的と動的ですか。よくでる言葉ですよね。

スーパーインター博士

うむ、まぁ手動で設定するか、自動化するか、というのはよくある話だからな。
まず、スタティックから話そう。これは別名ポートベースVLANとも呼ばれる方式だ。

ハイパーネット助手

ぽーとべーす?
スイッチのポート?

スーパーインター博士

そう、ポート単位にどのVLANに所属するか決定しておく方式だ。
各ホストは、接続したポートによって所属するVLANが決まる

ポートベースVLAN

[FigureSW04-05:ポートベースVLAN]

ハイパーネット助手

1番ポートはVLAN1、2番ポートはVLAN2…って設定していくんですね。

スーパーインター博士

そうだ。そして、各ホストは所属したいVLANに対応したポートに接続するわけだな。

ハイパーネット助手

なるほど、シンプルっすね。

スーパーインター博士

シンプルで処理も少なくてすむ方式だが。
まぁ、スタティックと言ってる点からもわかる通り、ポート数が多くなればものすごく手間がかかるわけだ。

ハイパーネット助手

手動ですからねぇ。「スタティック〜」と名前がつくのはみんなそうですよね。

スーパーインター博士

それに、変更時も手間がかかる。
例えばホストAをポート5に接続した場合、ポートの設定を変えなければならない。

ハイパーネット助手

スタティックの宿命ですね。

スーパーインター博士

と、なるとやはり自動化が有効になるわけだ。
それがダイナミックな方式だ。

MACベースVLAN

[FigureSW04-06:MACベースVLAN]

ハイパーネット助手

MACアドレスとVLANを対応させる?

スーパーインター博士

そうだ。これならばMACアドレスに対応するため、ホストの接続ポートが変わっても、設定を変更する必要がない。
これはMACベースVLANという。

ハイパーネット助手

なるほど。でも、MACアドレスとVLANの対応表を作成する手間がかかりますけど?
それに、NICが壊れた場合はどうするんです?

スーパーインター博士

あぁ、うん。確かにそうだ。ちなみにCisco Catlystスイッチの場合、MACベースVLANはVMPSで行う。
ともかく、MACアドレスは確かに不便なので、IPアドレスを使う方法もある。

サブネットベースVLAN

[FigureSW04-07:サブネットベースVLAN]

スーパーインター博士

サブネットベースVLANと呼ばれる方式だ。
さらに、ユーザベースVLANと呼ばれる方式もある。

ハイパーネット助手

は〜、ともかくMACアドレスかIPアドレスかユーザログオン情報かを使って、VLANを決定する方式なんですね。

スーパーインター博士

要約すればそうなるな。

ハイパーネット助手

なるほどです。

スーパーインター博士

さて、今回はここまでにしておこう。
しばらくVLANの話が続くぞ。

ハイパーネット助手

いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪

ブロードキャストを前提とした
ARP、DHCP、RIP、NetBIOS(Windowsファイル・プリンタ共有)、IPX/SPX、AppleTalkなど。
バーチャルLAN
[Virtual LAN]
仮想LANとも。
VMPS
[VLAN Management Policy Server]
ユーザベースVLAN
[User-Based VLAN]
WindowsNTもしくは2000サーバと組み合わせて、Windowsにログオンしたユーザの情報からVLANを設定する。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • VLANはL2スイッチでブロードキャストドメインを分割する技術。
  • VLANはVLAN番号で識別される。
  • 同一のVLAN番号を持つポートのみにブロードキャストは送られる。
  • ポート単位にVLAN番号を割り当てていくのがスタティックVLAN。
  • 接続されたホストのMACアドレスやIPアドレスから動的にVLAN番号が決定されるのがダイナミックVLAN。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp