ACT1 BARK AT THE MOON
〜月夜と犬と銀豹と〜
3.斧槍ヴォージェ
大馬の覚醒の時が近づきつつあります。
■大馬の覚醒
GM:場面は変わって都内の大きな病院。大馬はベッドで目覚める。個人部屋だ。点滴をされ、頭と右手に包帯が仰々しく巻かれている。
ビスマルク:おい、また俺は入れないぞ。というわけで、この病院は紅虎組と関係の深いという設定にしてくれ。俺は病室の前のベンチに座って紫煙を漂わせる。戦闘後の一服は格別だな。どこから仕入れたか、500円相当の食事をしてエナジーを5点、『衝動』を1点回復しておく。犬は所持金が無いので鏡のおごりって事にしておいて。
大馬:周囲を見渡す。病院…?今は何時だ?
GM:「今は夜の10時です。ご家族の方には連絡しておきました。若」と鏡の物静かな声が答える。
大馬:鏡さん…。その…「若」と呼ぶのはやめてくれないか?私は堅気の身だよ。
GM:「すみません、若。…お身体の具合はどうですか?傷の痛みとは違う感覚があるんじゃないですか?」と鏡弁護士。大馬のベッドの横に座っている。
大馬:傷の具合は…。あれ?たしか手は骨にひびが入っているくらいの痛みがあったのに、今動かしても痛みが無い…。頭もなんともない…。鏡さん、私には分からないことだらけだよ。そもそもビスマルクのあの姿は何だったんだい?あの青年…、化け物と戦っていたのか?私の頭がおかしくなったのか?
GM:「若が見たものは夢でも幻でもありませんよ。あの青年が化け物になり、ビスマスクも化け物になった。正真正銘の化け物同士の戦いですよ。いや、正しくは”悪魔憑き(ディアボロス)”同士の戦いですがね」と鏡。
ビスマルク:食事も終わり、少し開いたドアを押し開けて病室に入ろう。言っておくが、とっくに犬の姿に戻っているぞ。あんたも同類だぞ、大馬。と声をかける。
大馬:ビスマルク…。何でお前、人間の言葉がしゃべれるんだ?
ビスマルク:あら、あなた。電話でも話してたじゃない?と大馬の妻の声も出してみる。
大馬:唖然として言葉も出ない。
ビスマルク:俺は普通の犬より、ちょっと賢くなっただけだよ。
GM:「これが”悪魔憑き(ディアボロス)”ですよ。ビスマルクの体内に別の生命体が宿っていると思ってください。そいつがビスマルクの知性を高めたり、身体を変化させてりするのです。そして、若の体にも…」と鏡が言ったところで大馬の携帯電話が着信音を奏でる。「若、電話ですよ」と鏡は携帯電話をベッドで寝ている大馬に渡します。
大馬:呆然自失の態で携帯電話を耳にあてる。
GM:「ヒヘヘへ。かわいい娘さんですね、伴係長。ヒヘヒヘ、おいしそうだな〜。俺このままだと係長の娘さんを食べちゃいそうですよ。ヒヘヒヘ」左門の狂ったような、しかし泣き出しそうな声だ。
大馬:…今どこにいる?
GM:「ヒヘヒヘ。代々木公園かなぁ」と左門。
大馬:待ってろ、すぐ行くっ!遂に身体の奥底の獣が鎖を引きちぎり咆哮を上げる!携帯電話を握り潰すっ。
GM:「わ、若?どうしました?」と鏡。
大馬:娘が、繭がさらわれた。ベッドから起き上がり包帯をほどきつつ窓に向かって猛然と走り出す!そしてそのまま窓を突き破って外に飛び出すっ!!
ビスマルク:わざわざ窓突き破って行くなよ(笑)。
ビスマルク:目覚めやがったな。鏡に視線を送る。
GM:「ビスマルク、追うぞ!」鏡は病院に駐車してある自分の車に乗り込むよ。
ビスマルク:やれやれ、また追跡か。
■ヴォージェ
大馬:グロロ…、繭ーっ!今の俺の姿は月光を照り返す銀色の獣毛が生えた身の丈2mを越す豹の姿をした獣人だ。
GM:大馬の共生生物はヴォージェだね。
大馬:はい、そうです。しなやかでありながら強靭なな肉食獣の筋肉の力でビルからビルへと飛び移っている。時にはビルの壁に強靭な爪を突き刺して身体を張り付かせる。目指す先は代々木公園。地上に降りては、走行中の車のボンネットをへこまし、信号機を捻じ曲げつつ、突き進む。
GM:その移動スピードのため、ヴォージェ大馬の姿をはっきり捉えた者はいないが、突然ボンネットが外れたりして急ブレーキを踏む車がいて、ちょっとした交通事故や渋滞が起きたりしてね。
大馬:そんな感じで。繭ーっ!待ってろ!
ビスマルク:まさに大型の猫科動物の動きだな。
GM:「若の寄生体はヴォージェでしたか。宙次さん、あなたは実の子に何をしようとしているのですか…」と鏡には意味有りげなセリフを言わせよう。
大馬:なんだ?その伏線は(笑)?
ビスマルク:鏡、奴は速い!見失うなよ。と後部座席に座り、煙草を吸いながら偉そうに指示する俺。
GM:「繭さんに危険が迫っているようだな。若は一体どこへ向かっているんだ?」と鏡。
ビスマルク:この方角は…、代々木公園か?!俺が毎日、女と散歩するコースだな。
GM:ははは。ここでビスマルクのオープニングと繋がる訳か。
大馬:おお!偶然にも繋がったね〜。
GM:「よし、急ぐぞ!」と鏡。なんとなく行き先が分かり、1人と1匹は大馬の追跡に成功したと言うことにしましょう。
■”悪魔憑き”たちの戦い
GM:さて。場面は代々木公園です。街灯が照らす開けた場所に左門は忽然と立っている。その足元にはパジャマ姿の女の子が倒れている。
大馬:いたか!俺は木の枝から枝へと飛び移り、左門がいる場所に太い枝のしなりを利用して渾身の跳躍!体を丸めて隕石のように地面に落下する。砂埃が吹き去った後にヴォージェの俺が立っている。ロロロ…、と唸りながら。
ビスマルク:大馬の悪魔的特長は「独特の芳香を漂わせている」だけど、何の臭い?ちなみにビスマルクも同じ特徴で「煙草の臭い」だ。
大馬:えーっと、どうしようかな?
GM:鏡は代々木公園脇に駐車したよ。
ビスマルク:鼻をヒクヒクさせて、こっちの方角だな。大馬特有のシトラスミントの香りがする。と言って走り出す。
大馬:う〜んフレッシュ、って勝手に決めるなーっ!まあいいけど。
GM:鏡はビスマルクを追いかける。そしてビスマルクは大馬と左門のいる場所に到着した。
ビスマルク:あいつは初めての”悪魔化(デモニック・フォーム)”だからな。完全に衝動に飲まれてやがる。俺も”悪魔化(デモニック・フォーム)”して大馬をサポートする。
大馬:ところでGM。俺は病院からここまでダッシュして来たわけだが、何分くらいかかったことにする?”悪魔化(デモニック・フォーム)”の時間は『衝動』1点で10分だからね。
GM:病院から代々木公園まで20分かかったことにしよう。大馬は『衝動』2点蓄積しておいてくださいね。あれ?これで大馬は『衝動』第1段階突入かな?
大馬:イエッサー。ただいま衝動5点。衝動第1段階突入です。副作用は(ダイスを振って)「抑制」、押さえ込んだぞ。そしてさらに『衝動』1点蓄積で”悪魔化(デモニック・フォーム)”10分延長〜♪
GM:では戦闘開始です。
大馬:うおおおー!
GM:では1ターン目。ターン開始で、「伴係長…。た…す…け…て」左門は泣きながら自分の顔を引っかく。肌が破れ剥がれ落ちて中から虫のような顔が、背中が弾けて巨大な8本の蜘蛛の足が生える!左門は蜘蛛の怪物に変身した!カルトロップ・ハンターだ!大馬と左門は「接近」状態。ビスマルクは大馬の後ろで左門とは距離10mって感じ。
大馬&ビスマルク:了解。
GM:行動順は左門→大馬→ビスマルクで。左門の行動から。「通常」タイミングで≪カーネイジウェポン≫、そしてカルトロップ・ハンターの4本の足が一斉に大馬を突き刺す!肉弾攻撃(ダイスを振って)21だ。
大馬:回避だが、21って無理だろ!(ダイスを振って)達成値18、命中。ダメージ来いやーっ!
GM:ダメージは≪カーネイジウェポン≫で+1dだから(ダイスを振って)14。ドシュー!っと4本の足が大馬の身体を貫く!
大馬:イタイっ!残りエナジーは25か。よし、こちらの攻撃だ。最初から全開だ!「通常」行動で≪戦闘高揚(アドレナリンコントロール)≫、これで肉弾攻撃に+5!そして攻撃、「肉弾攻撃」は中級あるから+10(ダイスを振って)達成値30!グロロローッ!
GM:怪物かっ!回避はクリティカルしかないな(ダイスを振って)19か。…ダメージください。
大馬:うおお!いっけぇー!≪剛腕の一撃(パワーブロウ)≫で4dダメージ(ダイスを振って)21ダメージ!
GM:ギニャー!大馬の剛腕がカルトロップ・ハンターを殴りつけた。カルトロップ・ハンターは猛烈な勢いで反転してぶっ倒れた。でもまだ生きてるよ。
裏コメント:ヴォージェは豪快ですね。プレイしていて気持ちいいです。
GM:樹の後ろに隠れていた鏡は「あれが若の力!信じられない!!」と驚愕の表情を見せる。
ビスマルク:最強種のヴォージェだからな。あれくらいやってもらわないと困る。しかし、強いな。俺が倒したい気分だぜ。最強を目指す俺は大馬の強さを意識する。
GM:さっきから普通に”悪魔憑き(ディアボロス)”の正体を分かってるけど、【知力】又は「知識(共生生物)」技能で判定しないといけないんだね。
ビスマルク:了解。GM自ら相手の正体ばらしてるからね(笑)。まあいい、次は俺の攻撃だな。実は先程のヤンキーとの戦いの後なのでエナジーがあまりないのだ。残り13。とっとと終わらせるぞ。
GM:頑張って。
ビスマルク:カルトロップ・ハンターに≪落雷白電(ライトニング)≫を放つ!『衝動』1点蓄積で再び第3段階突入だ!(ダイスを振って)うほっ!効果的成功♪当たればダメージMAX24だ!
大馬:やるな〜♪
GM:では回避だ。クリティカルすれば…(ダイスを振って)ダメか。ギギギーッ!カルトロップ・ハンターの身体を雷が貫いた!プスプス…と身体の節々から煙を上げて倒れた。気絶!
大馬:やったー!
ビスマルク:そして衝動の副作用は(ダイスを振って)「本能」。次のターン、目の前の動くものを攻撃する!経験値20点獲得♪
大馬:「目の前の動くもの」って俺か…?あぶねーな(汗)。決着ついてよかったぜ。
ビスマルク:本当だよな(笑)。俺は一瞬、大馬の強さを意識して本能に目覚めてしまったって感じかな。
GM:戦闘が済んだ事を確認した鏡は繭を保護するよ。
■戦い終わって
ビスマルク:俺は”悪魔化(デモニック・フォーム)”を解いて大馬に近付く。あんたの娘は無事保護したぞ。初めてにしてはいい戦いだったな。
大馬:ロロロ…。まだ警戒して喉を鳴らしているよ。
ビスマルク:おっと、何が起きているか今は冷静に判断できないと思うが、まずは≪魔種吸引(キャプチャー)≫をしてもらおうか?あんたの部下も助かるぞ。
大馬:≪魔種吸引(キャプチャー)≫?しかし、自然と俺の身体が動く。カルトロップ・ハンターに手をかざすと紅い宝石のような珠がコロコロ落ちる。
GM:経験点5点と≪カーネイジウェポン≫の魔結晶(デモニッククリスタル)が手に入ったよ。大馬も左門も徐々に人間の姿に戻っていく…。
大馬:夢から覚めたようにハッと気づく。繭?と鏡の元に駆け寄る。繭、大丈夫か?
GM:「大丈夫ですよ、若。眠っているだけです」と鏡。
大馬:よかった…。繭を抱きしめる。う〜ん、いいシーンだ♪これがヒーローだぜ。
ビスマルク:そこに笑いはないのか?
大馬:大丈夫だ。俺は全裸にネクタイを一本締めた格好だ。
ビスマルク:ぶーっ。ということはヴォージェの時もネクタイ締めてたの?
大馬:そうなるな。
ビスマルク:あんたの娘が気絶してて良かったな…。
裏コメント:変身すると服が全損したり、全身がびしょ濡れになったりするのもこのゲームの楽しみ?の一つのようですが、それが中年オヤジではね〜(笑)。
GM:左門は覚醒してからまだ間もないから後遺症は無いです。左門は「う〜ん…」と頭を振りながら目を覚ますよ。「伴…係長?」まだ意識ははっきりしていない様子だ。
大馬:うん?お前は悪い夢を見てたんだよ。早く家に帰ってゆっくり休みな。明日は本社に顔出せよ。すまん、鏡さん。あいつにタクシー代やってくれ。さあ、俺らも帰ろうぜぇ。
GM:「なんで係長はまっぱにネクタイなんだろう?忘年会の帰りかな?」と左門はまだ意識のはっきりしないまま公園を出る。
GM:繭が大馬の腕の中で目を覚ます…。
大馬:気がついたか繭。と優しく逞しい笑みを浮かべる。
GM:繭は大馬の全身を見回して。
大馬:どうした?
GM:ギャー!このド変態オヤジー!!と渾身のビンタ!
大馬:ぶふぉーっ!!
ビスマルク:俺はすかさずエナジー5点消費して、繭に≪微弱電操(スパーク)≫を放つ。これで繭は1時間気絶だ。まあこれも悪い夢だな。
GM:鏡は自分のスーツの上着を大馬に渡して、「若、自宅まで送りますよ」と言って駐車位置まで案内する。
大馬:素っ裸にネクタイにスーツの上着って…、どんどん変態度が上がってるのはどうでしょう?
ビスマルク:そういうキャラじゃないのか?このシナリオ中、唯一の見せ場だぞ。
大馬:唯一って寂しすぎないか(涙)。
GM:鏡は車に繭を運んで、代わりになにやら荷物を持ってきたよ。それは上等なスーツの上下だ。黒地に白の縦線の入ったやつです。「若、これを着てください。こんな日がくると思って準備しておきましたよ」。
大馬:何だいこいつは?
GM:「とりあえず着ておいて下さい」と鏡。
GM:繭は無事に自宅のベッドに寝かせました。これまでの出来事は繭にとってもただの悪い夢という認識でしょう。
ビスマルク:鏡に声をかけよう。おい、大馬に状況を説明しておく必要があるんじゃないのか?俺が喋っている事や自分の身体の変化について、本能では理解していても人間に戻った今の硬い頭では理解できないだろうからな。
GM:「若、ちょっと時間いいですか?これから私の事務所へ来てもらえないでしょうか?」と鏡。
|