入門その頃のバス

三菱自動車(小型バス)

ボディ+シャーシ 三菱のマイクロバスは1960年以来、「ローザ」を基軸にして改良が続けられてきました。製造したのはは乗用車のメーカーであり、かつバスボディメーカーであった新三菱重工業でした。並行してバスメーカーである三菱日本重工業(通称三菱ふそう)からも「ふそうライトバス」が発売されますが、両社は1964年に合併して三菱重工業となり、その後の生産車種は「ローザ」系に統合されています。
当初のローザは小型バスにしては大型でしたが、「ライトローザ」の市場投入で次第に競争力をつけ、「プリティローザ」と呼ばれる2代目ローザを経て、エアロバスファミリーのスタイリングを明確に打ち出した3代目ローザ以降は、小型バス市場のけん引役になっています。


表7-7 三菱小型バスの系譜

系譜

ふそうライトバス 1961-1966

三菱の乗用車ブランドでの「ローザ」発売後、三菱ふそうブランドでは、より小型の「三菱ふそうライトバス」が発売されます。しかし、1964年に三菱系3社が合併し、2つのブランドで販売を続ける意味がなくなり、「ローザ」に一本化されました。その後しばらく、三菱の小型バスは乗用車ブランドでのみの販売となります。

表7-7-1 ふそうライトバス
年式1961-19621963-1966
原動機型式
(出力)
4DQ1
(65PS)
4DQ1
(68PS)
軸距2285mmT720
2750mmMB720
備考 
三菱ふそう ライトバスT720
ふそうライトバス

画像:三菱日本重工業カタログ(1961年)

1961年に試作された小型ディーゼルトラックT720をベースに、14人乗りの小型バスも試作されています。1963年に「キャンター」の名付けられる車種です。
車体はルートバン程度のサイズで、この時期一般的には「マイクロバス」と名付けられるタイプですが、ふそうでは「ライトバス」を名乗ります。

ベース車・・・2tトラック「ふそうキャンターT720」
車長・・・4,675mm
車幅・・・1,695mm
乗車定員・・・14人
総排気量・・・1,986cc
ボディの組み合わせ・・・

三菱ふそう ライトバスMB720
ふそうライトバス

画像:三菱日本重工業カタログ(1964年)

大型車メーカーであった三菱日本重工業(三菱ふそう)からは2tトラック「キャンター」T720型をベースとした21人乗りのライトバスが発売されます。
ディーゼルエンジンのみで、バリエーションもありません。車体は癖のないスタイルですが、呉羽自工によるフレームレスボディで、運転席側のドアが売り。

三菱ふそう ライトバスMB720
ふそうライトバス

画像:三菱重工業カタログ(1965年)

1964年には前照灯を4灯にするマイナーチェンジを行っています。
1964年には新三菱重工と三菱日本重工業は合併しており、結果1966年にライトローザに発展的解消を遂げています。

ベース車・・・2tトラック「ふそうキャンターT720」
車長・・・5,470mm
車幅・・・1,890mm
乗車定員・・・21人
総排気量・・・1,986cc
ボディの組み合わせ・・・呉羽

三菱 ローザ 1960-

三菱ローザは、1960年の登場以来の息の長いシリーズで、「だるまローザ」と呼ばれた初代ローザから始まり、1973年にフルモデルチェンジを行い「プリティローザ」となり、1986年のフルモデルチェンジではエアロバスの意匠を採り入れたデザインに変わっています。
三菱初代ローザ 1960-1973
表7-7-2 三菱ローザ B10/B20系
年式1960-19681968-1973
原動機型式
(出力)
KE31
(61PS)
JH4
(76PS)
KE36
(85PS)
KE63
(92PS)
KE65
(95PS)
軸距2950mmB10D
(1961~1963年)
B10   
3250mm  B20D
(1962~64)
B22D
(1965~)
B23
3750mm   B21D
(1964~)
B24
備考 
第1期(1960~68)
三菱ローザ B10
ローザ

画像:新三菱重工業カタログ(1962年)

1960年に中型トラック「ジュピター」をベースに作られた小型バスが「ローザ」で、初期モデルは全長5.4m、21人乗りですが、2.1m幅の大きめの小型バスでした。
丸みのあるスタイリングから「だるまローザ」と呼ばれます。
このサイズに関しては、「ライトローザ」と市場が重複することから、1968年に生産を終えています。

ベース車・・・2tトラック「ジュピター」
車長・・・5,390mm
車幅・・・2,130mm
乗車定員・・・21人
総排気量・・・2,199cc
ボディの組み合わせ・・・三菱

三菱ローザ B20D
ローザ

画像:新三菱重工業カタログ(1962年)

自家用 三菱ローザB20D
ローザ

撮影:佐久市(2015.10.24)

1962年に全長を6.2mサイズに延長した25人乗りB20系が新設されます。前面上部には方向幕もつき、路線バスにも使える大きなサイズになりました。また、ディーゼルエンジンのみの設定です。
1965年には出力強化によりB22Dに型式を変えます。
この時期までは、前後のウィンカーが小判形で、丸みのある外観の特徴とよく似合っています。

ベース車・・・2.5tトラック「ジュピター」
車長・・・6,250mm
車幅・・・2,130mm
乗車定員・・・25人
総排気量・・・3,299cc
ボディの組み合わせ・・・三菱

三菱ローザ B21D
ローザ

画像:三菱の自動車(1965年)

1964年に全長7m、定員29人の長尺車が加わりました。
ドアの後ろの側窓3枚が、ほぼ同じ広幅になっている点で見分けられます。

第2期(1968~73)
自家用 三菱ローザB23
ローザ

画像:所蔵写真(三菱重工業 1968)

1968年に、短尺のB10系は生産中止となり、中・長尺のB20系に統一されました。
この時に、ウィンカーの形状が小判形から角形(六角形)に変わっています。
写真は全長6.25m、定員25人の中尺車。B20D→B22Dの系譜を引き継ぐ型式です。

自家用 三菱ローザB24
ローザ

画像:所蔵写真(三菱重工業 1968)

こちらはB22dの後継となる全長7m、定員29人の長尺車。

三菱ライトローザ 1966-1973
表7-7-3 三菱ライトローザ
年式1966-19681968-1973
原動機型式
(出力)
KE42
(90PS)
4DR1
(75PS)
4DR5
(80PS)
KE47
(95PS)
軸距3100mmB12B14B16
(1970年~)
B13
備考ダブルタイヤは末尾にA 
三菱ローザB12
ライトローザ

画像:三菱の自動車(1967年)

「ローザ」が小型バスの割りに大きすぎて他社の小型バスとの競争力に欠けるため、1966年に2t車ベースの25人乗り「ライトローザ」を投入しました。これは、三菱ふそう系の「ふそうライトバス」(MB720)のサイズを引き継いだもので、外観はローザのイメージを採り入れています。

三菱ローザB13/B14A
ライトローザ

画像:三菱重工業「MITSUBISHI」(1970頃)

1968年に角型2灯でグリル形状を変更するマイナーチェンジが行われ、B13となりました。同時にディーゼルエンジンのB14が加わりました。
後輪の車両は型式末尾にAがつきます。

自家用 三菱ローザ
ライトローザ

撮影:終点北藤根様(一関市 2015.3.28)

1970年に丸型4灯に戻っていますが、グリルの形状が異なるので、初期型とは区別できます。

ベース車・・・2tトラック「ジュピター・ジュニア」
車長・・・5,840mm
車幅・・・1,850mm
乗車定員・・・25人
総排気量・・・1,995cc
ボディの組み合わせ・・・三菱

三菱ローザ(2代目) 1973-1986
表7-7-4 三菱ローザ(2代目)B200/B300系
年式1973-19791979-19831983-1986
原動機型式
(出力)
4DR5
(80PS)
KE47
(100PS)
6DR5
(105PS)
4G53
(110PS)
4D30
(90PS)
6DR5
(105→115PS)
4G53
(105PS)
4D30
(95PS)
4D31
(95PS)
4D31-T
(120PS)
軸距3100mmB200
B210
B215 B217K-BE201D
K-BE211D
 BC211N-BE211DP-BE213D 
3700mm  B360  K-BH212F   P-BH214F
備考B200,BE201はシングルタイヤ
第1期(1973~79)
自家用 三菱B360
プリティローザ

撮影:山梨県(2011.7.23)

自家用 三菱B360
プリティローザ

画像:三菱自動車工業カタログ(1973年)

1973年に「ローザ」はフルモデルチェンジされ、それまでのライトローザのサイズに一本化されました。「プリティローザ」と呼ばれます。やはりガソリンエンジンとディーゼルエンジンの2本立てです。同年中にディーゼルエンジンのロング仕様が追加されました。
こちらの写真はロングサイズ。

自家用 三菱ローザ
プリティローザ

撮影:S-507様(名古屋市 2014.6.1)

こちらの写真はショートサイズです。

ベース車・・・2~3tトラック「キャンター」
車長・・・6,120mm、6,875mm
車幅・・・1,980mm
乗車定員・・・26人
総排気量・・・2,315cc
ボディの組み合わせ・・・三菱

第2期(1979~86)
宮城交通 三菱K-BH212F
プリティローザ

撮影:M@Y様(蔵王町 2006.8)

昭和54年排ガス規制に対応して1979年にマイナーチェンジが計られ、前面窓が拡大されました。
三菱のエンブレムは、1976年からMの文字を図形化したマーク(エムエムマーク)になりました。
1981年にはハイルーフ仕様も追加されています。
写真の車両は後部に通気孔がありますので、冷房車です。

三菱P-BE213D
プリティローザ

撮影:富士河口湖町(2011.7.3)

昭和58年排ガス規制に対応して1983年にマイナーチェンジが計られ、この時ガソリンエンジンは廃止されています。写真は短尺車で、側面の窓が一つ分少なくなっています。
三菱のマークは、1982年からMMCマークに変わっています。

三菱ローザ(3代目) 1986-1997
表7-7-5 三菱ローザ(3代目)BE400系
年式1986-19901990-19941994-1995
原動機型式
(出力)
4D32
(110PS)
4D31-T
(130PS)
4D32
(110PS)
4D33
(120PS)
4D34(T1)
(145PS)
4D36
(110PS)
4D33-1A
(120PS)
4D33-3A
(130PS)
4D34(T4)
(155PS)
軸距3355mmP-BE435E U-BE435E  U-BE436EU-BE437E 
3755mm   U-BG437F U-BG437F 
3765mm P-BE434F U-BE437FU-BE439F
U-BE449F
U-BE436FU-BE437FU-BE439F
U-BE449F
U-BE459F
備考WB3755mmは4WD
439=前後輪リーフサス、449=前輪独立懸架・後輪リーフサス、459=前輪独立懸架・後輪エアサス
第1期(1986~90)
自家用 三菱P-BE434F
ローザ

撮影:上田市(2010.7.3)

1986年にローザはフルモデルチェンジを行い、エアロバスと共通する流麗なフォルムのバスに生まれ変わりました。左方視界を拡大するためのセイフティウィンドウが外観上のアクセントにもなっています。

ベース車・・・2~3tトラック「キャンター」
車長・・・6,950mm
車幅・・・1,995mm
乗車定員・・・26人
総排気量・・・3,298cc
ボディの組み合わせ・・・三菱

第2期(1990~95)
自家用 三菱U-BE437F
ローザ

撮影:上田市(2010.7.24)

自家用 三菱U-BE437E
ローザ

撮影:長野県(2016.7.2)

1990年にフロント周りの形状変更を含むマイナーチェンジが行われました。
最高グレードの「ロイヤルG」にはスィングドア、固定窓が採用されたほか、155PSインタークーラーターボ付では、前輪独立懸架、後輪エアサスなども初採用されました。
写真は、折り戸でシルバーサッシの「デラックス」とスィングドアでブロンズサッシの「カスタム」です。「カスタム」はショートボディです。

自家用 三菱U-BG437F
ローザ

撮影:長野県(2018.7.27)

1990年のマイナーチェンジの際に、クラス唯一の4WDが新設されました。
山岳道路や積雪地などの悪路に対応するための仕様と思われ、高床となっています。従って、フェンダ上部にタイヤ位置に合わせた加工が見られるのが特徴です。
(注1)

第3期(1995~97)
グリーン観光バス 三菱KC-BE436E
グリーン観光バス

撮影:長谷川竜様(栗原市 2013.6.30)

1995年に平成6年度排ガス規制に対応したマイナーチェンジを実施、プロジェクターヘッドランプの採用などで前面のスタイルが変わりました。同時に出力も強化されています。
写真は、型式末尾がEのショートボディで標準ルーフ。

三菱ふそうBK 1981-1986

4tトラックのふそうFKをベースにしたひとまわり大きな小型バスは、ローザと異なりふそうブランドで販売されます。
初期にはトラックシャーシの改造扱いで一部事業者に納入されていますが、1981年にふそうBKとして正式販売されました。

表7-7-4 三菱ふそうBK
年式1976-801981-19831984-1986
原動機型式
(出力)
6DS7
(135PS)
6D10
(145PS)
6D14
(155PS)
6D14
(160PS)
軸距3760mmFK102FFK103FK-BK215FP-BK215F
備考   
ふそうFK(1976~80)
松本電気鉄道 三菱FK103F改(1978年)
松本電鉄

撮影:松本営業所(1988.10.12)

1クラス上の小型バスとして、中型トラックFKをベースにローザを拡幅して登場したのがFK102/103です。
写真の車両は路線バス仕様ですが、セミデッカーのような明り窓を持つハイルーフ車です。

松本電気鉄道 三菱K-FK102F改(1980年)
松本電鉄

撮影:松本営業所(1988.5.21)

ローザのマイナーチェンジに合わせて、FKのボディも変わりました。前面窓が大きくなり、ウィンカーの形状も変わっています。
写真の車両はやはりセミデッカー風の明り窓を持つ仕様です。

ふそうBK(1981~86)
自家用 三菱P-BK215F
BK215F

撮影:山中湖村(2013.5.25)

1981年から小型バスとしてカタログに載ります。やはりFKをベースにローザを2,260mmに拡幅したもので、同時期のローザと共通のスタイルです。
観光バス、レンタカーを主用途とし、直結冷房付が標準です。
1986年に7mサイズのエアロミディにその座を譲りました。

ベース車・・・4tトラック「ふそうFK」
車長・・・6,990mm
車幅・・・1,980mm
乗車定員・・・29人
総排気量・・・6,557cc
ボディの組み合わせ・・・三菱

商品名の由来

・ローザ(rosa)・・・イタリア語で「薔薇」の意味
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