三菱MR400系
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フレーム付のR400系列は一足早く1959年から生産が始まり、並行して生産されていたものの1967年のマイナーチェンジの際に生産終了。また、1967年からは高出力のB8系列が並行生産されています。
型式の数字部分は長さによって異なりますが、数字の大小と車長は関係ありません。また、生産時期によっても異なるので、理解が難しい系列でもあります。エアサス車は、Rの前にAがつき、MAR470のようになります。
なお、高速バス用のMAR820/870、9mサイズのMR500系列、中型車のMR620はここでは除外します。
三菱自動車MR400系 1960 − 1978
三菱MR400系 製造時期による分類
三菱MR400系 第1期(1960〜64)
広島電鉄 三菱MAR470
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撮影:板橋不二男様(広島南営業所 1978)
岩手県北自動車 三菱R480
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撮影:長谷川竜様(岩泉町 2013.6.8)
1959年に縦置きエンジンのR400系が登場、引き続きフレームレスモノコック構造のMR400系が登場し、1961年には横置きエンジンのMR300系列が廃止され、短い方からMR480、MR490、MR470、MR440の4型式に整理されました。
エンジン配置の相違により、側面最後部の窓が引き違い窓になっているのがこの系列の特徴です。
この時期のボディは、三菱、呉羽ともに丸形が標準でした。
この時期の末期に前輪2軸のラッシュ用大型バスMR430がターボ付エンジンで登場していますが、1965年には生産中止になっています。
三菱MR400系 第2期(1964〜67)
名古屋鉄道 三菱MR480(1967年式)
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撮影:板橋不二男様(足助管理所 1973頃)
松本電気鉄道 三菱MR490(1967年式)
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撮影:松本駅(1978.1.4)
1964年にマイナーチェンジが行われ、ロングサイズのMR440は若干短いMR420に代わりました。
このとき、車体のマイナーチェンジも行われており、三菱車体は後面傾斜で2枚連続窓のスタイルに、呉羽車体は後面丸形のまま連続窓のスタイルに変わりました。このスタイルは両社ともこの期間だけのものです。
前照灯はこの期の途中の1966年に、2灯から4灯に変わりました。
三菱MR400系 第3期(1967〜73)
立川バス 三菱MR410(1971年式)
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撮影:立川駅(1980.5)
西東京バス 三菱MR410(1968年式)
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撮影:八王子駅(1977)
1967年にマイナーチェンジが行われ、車体長が短い方からMR410、MR470、MR420に整理されました。これらは、同時期に登場した高出力車のB8系の長さに対応しています。1971年に長尺車がフロントオーバーハングを延長し、MR450に代わりました。
車体は再度マイナーチェンジを受け、三菱車体は前面がヒサシつきに、呉羽車体は後部が傾斜で2枚連続窓になりました。呉羽車体はひとつ前の三菱車体の特徴を後追いしていますが、この時期の末期の1973年に、前面ヒサシ付ボディにモデルチェンジしています。
三菱MR400系 第4期(1973〜78)
川中島バス 三菱MR470(1976年式)
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撮影:長野営業所(1989.3.26)
京都市交通局 三菱MR410(1976年式)
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撮影:京都駅(1981.11.15)
1973年を境に、他のメーカーの路線バス用モデルと同様に、ワンマンカーの広幅ドアに対応して、フロントオーバーハングが延長されました。型式のバリエーションは変わりません。呉羽車体はこの直前にヒサシ付の前面スタイルに変わりました。また、三菱車体、呉羽車体ともに、この期の途中にサッシ窓に変わっています。
1974年ごろから、左側側面のエンジン通気孔がなくなり、また、後面の通気孔も右側に1枚、中央部に横長のもの1枚がつく配置に変わりました。
1977年に直接噴射式エンジンのMPが登場し、しばらく並行生産された後、MR400系は生産中止になりました。
三菱MR400系 長さによる分類
京王帝都電鉄 三菱MR480(1966年式)
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撮影:高幡不動駅(1977.7)
MR480(1960-1967)
MR480は1960年にこの系列が発売開始されたときに路線バス用の短尺車として用意されたもので、全長9,610mm、ホイールベース4,530mmと、今から見ると他社の短尺車より若干短め。
1967年のマイナーチェンジの際、中間尺のMR490と統合の上、MR410に発展的解消を遂げました。
小田急バス 三菱MR490(1967年式)
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撮影:吉祥寺駅(1977.7)
MR490(1960-1967)
MR490は中間尺の車両で、窓配置は1967年以降のMR410と変わりません。ただし、三菱ボディ(前面ヒサシの有無で区別)、呉羽ボディ(後面の丸形か傾斜形で区別)ともに1967年にモデルチェンジを実施しているため、外観上で区別可能です。
写真は、1967年に4灯となった最終期のMR490。
神奈川中央交通 三菱MR410
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撮影:ソルティドッグ様(由利本荘市 2013.11.9)
MR410(1967-1978)
MR410は1967年のマイナーチェンジの際、MR480とMR490を統合して生まれた中間尺車で、全長10,010mm、ホイールベース4,900mmと、路線バスとしては手ごろな大きさが好まれました。
外観上はMR490と同様、MR480に小窓1つ追加した長さです。同世代のB800Jとは共通のボディサイズです。
岩手県交通 三菱MR410(1973年式)
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撮影:江刺営業所(1985.8.22)
MR410(1973-1978の呉羽車体)
1973年頃からの呉羽車体には、側面最前部の小窓がなく、ちょっと小さめの窓を3つ並べる窓配置が多くなっています。引き戸の戸袋窓は、その分小さくなっています。
下のMR470と同じ窓配置になりますが、中ドアより後ろの窓柱スペースなどがないことから、こちらの方が短いことが分かります。
西武バス 三菱MR470
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撮影:吉祥寺駅(1977.7)
MR470(1960-1978)
MR470は系列中唯一、全時期にわたって製造されていた型式で、標準尺と長尺の中間といえる全長10,600mm、ホイールベース5,400mmです。1973年のマイナーチェンジでフロントオーバーハングの延長に伴い全長も若干延長されました。
外観的には、MR410より窓半個分長いくらいです。
神奈川中央交通 三菱MR420(1969年式)
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撮影:板橋不二男様(立場車庫 1974)
MR420(1964-1971)
MR420は1964年から生産された長尺シャーシで、幹線系統やラッシュバスとして用いられました。初期の長尺車MR440に代わり、収容力を維持しながらホイールベースを短縮した設定です。
全長11,330mm、ホイールベース5,650mmで、MR470より窓約1個分長いボディです。同世代のB800Mとは共通のボディサイズです。
神奈川中央交通 三菱MR450
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撮影:ソルティドッグ様(由利本荘市 2013.11.9)
MR450(1971-1978)
MR450は長尺シャーシで、1971年にMR420に代わって登場しました。
全長11,240mm、ホイールベース5,700mmで、同世代のB800Nとは共通のボディサイズです。
遠州鉄道 三菱MR440
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撮影:静岡県(2018.9.28)
MR440(1960-1963)
MR440は初期の長尺シャーシで、全長は11,470mmと12mに肉薄する長さ。当時需要が旺盛だった路線バスの幹線用などに用いられました。ホイールベースは6,270mm。
やはり当時の道路事情では無理かあったのか、後継のMR420では、車体長はほぼ維持しながら、ホイールベースを短縮しています。
三菱MR400系 後面通気孔の分類
初期(1960〜61年頃)
広島電鉄 三菱MAR470
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撮影:板橋不二男様(広島南営業所 1978)
初期のMR400の後面は、エンジン通気孔が3つあり、その中央のものが縦横寸法ともに大きいのが特徴です。さらに、最初期のものは、屋根上のダクトが中央部にあります。
写真は三菱ボディの一例で、網の形状が独特です。
第1期(1962〜64年頃)
仙台市交通局 三菱R490
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撮影:海さん様(黒川郡 2006.3.4)
屋根上のダクトが右側に移った時期の後面です。
エンジン通気孔は、やはり3枚で、中央部のものが大きくなっています。
写真は呉羽ボディの一例で、丸みのある通気孔の形状が特徴です。
第2期(1964〜67年頃)
阪急バス 三菱MR420
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撮影:岩出市(2007.5.19)
岩手県交通 三菱MR490(1965年式)
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撮影:oyan様(北上駅 1979.1)
この時期には、右側面の通気孔の形状がL字形になっています。
呉羽ボディの場合、後面の通気孔の縦寸法が3つとも同じ大きさになっていますが、これは左右の通気孔を上に伸ばしているようです。
第3期(1967〜73年頃)
福島交通 三菱MR410
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撮影:一関市民様(下郷町 2009.4.26)
岩手県交通 三菱MR410(1969年式)
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撮影:長谷川竜様(花巻市 2014.5.11)
第2期とほとんど変わりませんが、側面の通気孔は四角です。
小田急バス 三菱MR470(1973年式)
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撮影:吉祥寺駅(1977)
岩手県交通 三菱MR410(1971年式)
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撮影:53様(花巻営業所 1985.8)
呉羽ボディの場合、後面両側の通気孔の高さが低くなりました。また、1970年ごろになると、中央も低くなり、再び3つの高さが揃いました。
富士重工や北村製作所製ボディの場合、右側の通気孔がバックランプを避けた逆L字形になっています。
第4期(1974〜76年)
長野電鉄 三菱MR410
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撮影:ヒツジさん様(中野市 2004.3.27)
岩手県交通 三菱MR410(1976年式)
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撮影:一関市民様(金ヶ崎町 2003.9.21)
1974年以降、後面に3枚あった通気孔は、右側に1枚と中央に細長いもの1枚という配置に変わり、かなりすっきりとしたイメージになりました。
この時に、左側面の通気孔がなくなり、屋根上のダクトも右から左に位置が変わっています。
富士重工製ボディでは、右側面の通気孔の左2隅が面取りされたような形状になっています。他のボディメーカーでも、最終期になるとこのような形状になっているようです。
最終期(1977〜78年)
横浜市交通局 三菱MR410(1977年式)
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撮影:ポンコツ屋赤木様(緑営業所 1988.6.18)
最終期には後面の右コーナーに縦長の通気孔が追加されました。
三菱MR400系 主なボディメーカー
三菱ボディ
立川バス 三菱MAR470
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撮影:立川市(1977.5.14)
MR450(1971-1978)
三菱シャーシの標準ボディは当然三菱ボディ。台形状の正面窓が特徴でした。
写真は、路線バスのスタイルを観光バスにアレンジするため、正面窓上に明かり窓を設けたもの。1960年代には多く見られたスタイルです。エアサス車。
呉羽自工
北見バス 三菱MR450
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撮影:旅男K様(大空町 2012.6.24)
三菱自工とともに三菱車の双璧を成すボディが呉羽自工。都市部では三菱ボディと並行導入する事業者が多く、地方では呉羽自工のみを導入する事業者が目立ったように思います。
スタイルの特徴は三菱ボディと似通っているのですが、モデルチェンジのタイミングが一歩遅く、ボディスタイルの特徴で年式等を推察する場合には注意が必要です。
富士重工
長野電鉄 三菱MR410(1976年式)
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撮影:柳原営業所(1991)
富士重工製ボディは三菱ボディや呉羽ボディほどの癖がないこともあり、好んで導入する事業者も多く、三菱のシャーシに架装される例も多く見られました。
富士重工の場合、MRの側面最後部窓は、台形の固定窓になります。
西日本車体
大井川鉄道 三菱MR410(1972年式)
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撮影:新金谷駅(1980.8.31)
関西以西を中心に、西日本車体での架装例も多く見られます。
西日本車体の場合、ヘッドライトベゼルの形状は丸型になります。また、側面の窓配置も三菱車体などとは全く異なり、側面最後部の窓も小型の固定窓になっています。
北村製作所
新潟交通 三菱MR410(1972年式)
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撮影:BA10-2407291様(南部営業所 1986.8)
北村製作所での架装は、地元の新潟交通をはじめ東日本各地で見られます。
側面最後部の窓が立席窓付の横引き式になりますが、後期には台形の固定窓になるようです。
新潟交通では、1976年式まで北村製作所と三菱の組み合わせが見られます。
川崎車体
函館バス 三菱MR410
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撮影:板橋不二男様(松前営業所 1977)
川崎車体では、1972年まで三菱シャーシに架装していました。
写真は三菱シャーシに架装した最後のスタイルです。この時期まで川崎車体を選択していたバス事業者は、地元岐阜県の岐阜乗合自動車など少数です。
写真の車両は、側面最前部に縦長の固定窓があり、長さと窓配置の調整に苦労したのが分かります。
安全車体
福島交通 三菱MR480
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撮影:ソルティドッグ様(福島市 2013.9.7)
安全車体と資本関係にあった福島交通に見られた安全車体架装車。
安全車体では、末期には川崎航空機との提携により、同形ボディを架装していました。この車両は正面4灯の1966〜67年式ですが、川崎ボディの前世代ボディを継承しています。後面窓が平面ガラス2枚になっているのが特徴。
金産自工
下北バス 三菱AR470
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撮影:板橋不二男様(下北バスターミナル 1973)
生産数は多くありませんが、北陸鉄道などに見られた金産自工製です。
写真の車両は、日野BD/BKなどに架装されたのと同タイプのボディですが、側面最後部の窓がスタンディウィンドウ付の横引き窓であったり、後面が2枚窓であったりという違いがあります。
金産ボディの三菱車は1973年まで生産されていたようです。
三菱MR400系 特殊な型式
旭川電気軌道 三菱MR430(1963年式)
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撮影:板橋不二男様(旭川市 1977頃)
MR430(3軸車)
都市型ラッシュバスに対応した全長12mの大型バスで、前2軸の3軸車MR430が1963年に誕生しています。エンジンはターボ付のDB34型。
国鉄バスと名鉄バスが富士重工製ボディで、旭川バスが呉羽ボディで導入しています。
結局この3社だけで、1965年には生産を終了しているそうです。