西日本車体(路線バス)
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側窓下にRのあるスタイルが長く定着していましたが、1983年以降は比較的特徴のないスケルトンタイプに移行しています。その一方で、ユーザー系列なので大手メーカーの意向に縛られないことなどから、新しい試みの導入に積極的で、特に1990年代以降、夜行高速バスや低床路線バスの分野で他社にない製品を送り出しています。
なお、1980年代末期から、型式によっては日産ディーゼルの指定ボディになり、2003年から富士重工に代わりすべての日産ディーゼルのバスの指定ボディとなりました。その関係で全国的な展開を見せるようになりましたが、2010年に日産ディーゼルからの発注が中止されることを受け、事業を終了しました。
路線バスタイプ
前期型 1961−1964
神戸電鉄 いすゞBR20(1961年式)
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撮影:播磨観光タクシー様(三木市 1986)
宮崎交通 三菱MAR470
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撮影:板橋不二男様(宮崎市)
西日本車体では1955年にモデルチェンジを行い、軽合金窓枠、スタンディウィンドウ採用、プレス部品採用など、後のボディスタイルの基本を確立しています。そして、1961年ごろに他メーカーに準じたマイナーチェンジが行われ、前面窓が連続窓になりました。
側面窓の隅にRがあるのが西日本車体の特徴です。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱、トヨタ
中期型 1964-1966
西日本鉄道 三菱MR480(1966年式)
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撮影:板橋不二男様(宇美営業所 1977頃)
神戸電気鉄道 三菱MR470
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撮影:板橋不二男様(兵庫県 1977.3.11)
1964年に、前面窓を下方に拡大し、後面窓を連続窓にするマイナーチェンジが行われました。この時期の川崎車体、呉羽自工、金産自工などと同様の変化です。しかし、後面窓は4枚ガラスという他に例を見ないスタイルです。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱、トヨタ
66MC 1966-1978
高槻市交通部 いすゞBU04(1973年式)
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撮影:高槻駅(1980.3.28)
京都交通 三菱B805L
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撮影:京丹波町(2006.8.26)
1966年に西日本車体として2回目となるモデルチェンジを行いますが、これ以降、モデルチェンジ時期による世代呼称がつくようになります。1966年のモデルチェンジ=66MCと呼ばれます。
それまでの丸型ボディから前後をヒサシ状に変えていますが、方向幕部分は下向き傾斜の平面になり、窓の部分が逆向きの傾斜を持つため、横から見ると「く」の字状のカットになっている点が大きな特徴です。後面に方向幕がない場合は、おでこの部分のみ丸くなります。
側面は雨樋がスタンディーウィンドウ上に上がったほかは前モデルと同じで、下辺にRがついた窓が特徴です。
同時期、各ボディメーカーが前後をヒサシ状にするモデルチェンジを行っていますが、西日本車体の前後のカットは特徴があります。
宇部市交通局 三菱MR470(1971年式)
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撮影:宇部新川駅(1980.4.1)
ユーザーによっては早くからサッシ窓の導入例がありますが、1975年ごろから全面的に切り替わっています。サッシの場合も窓の四隅にRがあります。
写真はバス窓標準の時期にサッシ窓を採用した事例。
京都市交通局 三菱MR410(1976年式)
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撮影:京都駅(1981.11.15)
大型方向幕の導入例です。前面の傾斜部をそのまま突起させて大型方向幕に対応しています。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱、トヨタ
B型
78MC 1978-1983
B-Ⅰ型
宇部市交通局 日野K-RC381(1979年式)
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撮影:宇部新川駅(1980.4.1)
1978年に、大型方向幕や観光タイプとの共通のプレス部品の採用などを前提にしたモデルチェンジを行いました。合わせて前面窓は2枚ガラスに統一されています。
これまでの独特の形状は失われています。特に後面は平面的なスタイルになりました。それでもR付の側窓は残されており、西日本車体のオリジナリティを主張しています。またヘッドライトべゼルは、シャーシメーカーにかかわりなく同一になりました。
西日本鉄道 日産デK-U31LA(1981年式)
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画像:西日本車体工業カタログ(1982)
大型方向幕の導入例です。前頭部を突起させて大型方向幕に対応していますが、設計上は大型方向幕を標準としているそうです。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
B-Ⅱ型/B-Ⅲ型
阪急バス 三菱K-MP118N(1982年式)
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画像:西日本車体工業カタログ(1982)
1981年に、屋根が浅く、側窓が縦に大きくなったB-Ⅱ型が登場します。屋根が薄くなったことで雨樋位置が上がったため、ドアの上のスペースが広がったことで外観上の区別ができます。(注1)
また、写真のように前面窓の左側を下方に拡大したB-Ⅲ型というバリエーションが阪急バスなどに導入されています。
後面窓をルーフラインまで拡大して、方向幕を内部に組み込んだ3枚連続窓のタイプも登場しています。
58MC 1983-1996
B-Ⅰ型
長崎県交通局 日野U-HT2MMAA(1995年式)
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撮影:尾上車庫(2018.10.16)
熊本電気鉄道 日野U-HU2MMAA(1993年式)
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撮影:熊本交通センター(2015.8.29)
1983年にスケルトンボディ化の傾向に則り、フルモデルチェンジを図りました。日野ボディに続いて本格的なスケルトン構造を導入し、これまでの丸みを廃した直線的な構成になりました。前面は方向幕部分を枠で囲い、後面はルーフラインまでの連続3枚窓で方向幕は内蔵されます。
こちらは基本となるB-Ⅰ型。
九州産業交通 いすゞKC-LV280N(1996年式)
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撮影:熊本交通センター(2018.11.28)
後面窓は、後に1枚ガラスが選択できるようになっています。
B-Ⅱ型
岡山電気軌道 三菱U-MP618M(1991年式)
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撮影:岡山駅(2011.11.3)
1984年から、バリエーションとして前面窓の左側を下方に拡大した視野拡大窓の採用が始まりました。これはB-Ⅱ型として区別されます。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
96MC 1996-2010
B-Ⅰ型
長崎自動車 いすゞKC-LV380N(1997年式)
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撮影:長崎駅(2018.10.16)
1996年にモデルチェンジが行われ、前照灯とバンパーが一体的にデザインされた前面スタイルに変りました。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
B-Ⅱ型
西日本鉄道 日産デKC-UA460LSN(1999年式)
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撮影:門司港駅(2017.11.25)
前面窓左側を下方に拡大した仕様は、引き続きB-Ⅱ型と呼ばれます。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
西日本車体の系譜
- 1946(昭和21)年 西日本車体工業設立、バスボディ製造に着手
- 2003(平成15)年 日産ディーゼルの指定メーカーになり、日デ車を全受注
- 2007(平成19)年 三菱ふそうのOEM生産開始
- 2010(平成22)年 日産ディーゼルからの発注中止に伴い、事業停止
西日本車体について詳しい本
バスラマスペシャルとして1冊にまとめられたこの本は、西日本車体が事業を終了するのに合わせるかのように出版されました。
西日本車体のバス製造の歴史や、関係者やスタッフの思い出話など、まるで社史のようにまとめられた1冊です。