バスのカラーリング

C05-4カラーデザインの流用

譲受車両のカラーデザインをそのまま自社デザインとする「流用」も見られます。
これが多く見られるのは系列会社間の車両譲渡です。グループ内でカラーデザインの統一を行っている国際興業、名鉄、東急などのほか、譲渡車だけは塗り替えずに使用している近鉄のような例もあります。
また、系列関係のない会社の場合でも、元デザインを保持しているケースが見られます。これらは、塗替えに要する費用を抑えるため、利用者に混乱のない範囲で、最小限の塗り替えにとどめたものと思われます。もっとも、このケースは、飽くまでも一部の譲受車のみの事例であり、会社全体のカラーデザインに影響を及ぼすものではありません。
なお、近年では、小規模の貸切バス会社に、中古車のデザイン流用は数多く見られるようです。

系列会社間での車両譲渡によるもの

4-01 名鉄バスからの譲渡車

名鉄バス
名鉄バス

撮影:豊田市駅(2017.5.20)

名鉄バス(愛知県)は、白地に赤いラインの入る伝統的なカラーデザインを続けていますが、裾のラインが二重線になったり、正面のラインが金太郎腹掛けスタイルからM字形、簡易M字形、更には山形に「名鉄バス」の文字が入るなど細部のアレンジは時代ごとに変わっています。
写真は2006年以降の標準的デザイン。

>>1-06 名鉄グループカラーへ

名鉄バス → グループ各社

網走バス(元名鉄バス)
網走バス
女満別空港(2016.6.12)

知多乗合(元名鉄バス)
知多乗合
常滑駅(2016.8.27)

東濃鉄道(元名鉄バス)
東濃鉄道
多治見駅(2016.4.16)

名鉄バスでは、系列会社への車両譲渡を多く行っていますが、これがそのままのカラーで就役しています。
網走バス(北海道)へは高速バスカラーでの譲渡車があります。同社には、路線バスカラーの車両も移籍しています。
知多乗合(愛知県)では、自社カラーは青系のオリジナルカラーに移行しているほか、名鉄カラーの車両も正面の赤い部分が「C」の字を象ったオリジナルデザインですが、譲受車に関しては名鉄バスそのままで使用しています。
東濃鉄道(岐阜県)も類似例で、自社カラーは名鉄カラーに緑色の細線を配していますが、譲受車は緑線を付けないまま使用しています。

名鉄バス → ミヤコーバス

ミヤコーバス(元名鉄バス)
ミヤコーバス
長谷川竜様(気仙沼営 2017.6.3)

ミヤコーバス(元名鉄バス)
ミヤコーバス
長谷川竜様(石巻駅 2017.6.10)

ミヤコーバス(元名鉄バス)
ミヤコーバス
長谷川竜様(気仙沼営 2017.6.3)

名鉄グループのミヤコーバス(宮城県)では、継続的に名鉄バスから譲渡を受けていますが、最近ではカラーデザインをそのまま使用するようになっています。
2004年までのデザインは、正面の赤いラインがMの文字を簡略化したような形状になっています。
小型車に採用されたデザインは、Mの字をモチーフにしたデザインが前と横に入れられています。
本体の名鉄バスでは見られなくなった歴代デザインが、譲渡先ではしばらく見られるという現象が起きています。

4-02 近鉄グループの譲渡車

近鉄バス
近鉄バス

撮影:河内小阪駅(2016.9.26)

近鉄バス(大阪府)は、黄色地に青色で当時の社名であった近畿日本鉄道の頭文字「KN」を大きく入れたデザインを1994年に採用し、現在に至ります。
現在、近鉄バスホールディングスの子会社には複数のバス会社がありますが、カラーリングは別々で、統一はされていません。

近鉄バス → 明光バス・防長交通
明光バス(元近鉄バス)
明光バス

撮影:旅とのりもの様(白浜 2009.1.7)

防長交通(元近鉄バス)
防長交通

撮影:徳山駅(2017.11.25)

近鉄グループでも、系列内の車両譲渡に際し、ほぼそのままのカラーで使用する例が見られます。
明光バス(和歌山県)では、近鉄バスからの譲受車は、「KN」のイニシャルもそのままで使用しています。
防長交通(山口県)は、「KN」をデザインした部分は地色の黄色で塗りつぶされているほか、正面と側面に「BOCHO」の文字が入れられているなどアレンジされています。
防長交通、明光バスともに、自社カラーは存在しており、近鉄バスからの譲受車のみがこのカラーで使われています。

明光バス → 防長交通
防長交通(元明光バス)
防長交通

撮影:徳山駅(2017.11.25)

近鉄グループの子会社間でも車両譲渡が行われています。
明光バスから防長交通に移籍した車両も、そのままのカラーでロゴだけを変更して使用されています。

4-03 国際興業 → 岩手中央バス・岩手県交通

国際興業
国際興業

撮影:板橋不二男様(飯能営業所)

岩手中央バス(元国際興業)
岩手中央バス

撮影:板橋不二男様(雫石営業所 1976.5.29)

岩手中央バス(岩手県)は1970年に国際興業グループ入りした後、1974年以降、国際興業から譲受した車両については、そのままのカラーで使用しています。屋根肩のローマ字社名と「KKK」というロゴは消されています。また、写真の車両では正面のV字形デザインが消されていますが、補修の際に細かいデザインの変化が生じた車両も少なくありません。
1976年に合併により岩手県交通となった後も、1978年頃までこのカラーのまま就役した車両があります。岩手中央バス、岩手県交通ともに、自社オリジナルカラーは存在しており、譲受車のみこの色で使用されていました。

>>1-02 国際興業グループカラーへ

岩手県交通
岩手県交通

撮影:長谷川竜様(大船渡営業所 2014.6.21)

岩手県交通(岩手県)は1976年の合併による成立時には国際興業グループではありませんでした。自社カラーは、成立後に設定され、1986年に国際興業グループ入りした後も、自社カラーの使用を続けてきました。
しかし、2000年から他のグループ各社とともに、標準色を国際興業カラーに変えています。その後の国際興業からの譲受車は塗り替えずに使用しています。
当初は「KKK」ロゴを「IKK」に変えていました。

4-04 東海バスグループ

新東海バス(基本カラー)
新東海バス

撮影:修善寺駅(2016.6.4)

東海自動車(静岡県)は1999年にバス部門を地域ごとに分社し、自らは管理会社となり、東海バスグループというべきものが形成されました。その後もグループ内の再編や社名変更、小田急グループ内での移管などがあり、各社名の変遷は複雑です。
1999年の分社以降、基本カラーは従来のオレンジと黄色をベースにしながら、直線主体のシンプルなデザインになっています。

神奈川中央交通 → 東海バス
神奈川中央交通
神奈川中央交通

撮影:横浜駅(2017.4.30)

新東海バス(元神奈川中央交通)
新東海バス

修善寺駅(2016.6.4)

同じ小田急グループの神奈川中央交通(神奈川県)からの譲受車は、窓下と車体裾のラインをオレンジ色に変えただけです。雨樋部分に赤色が残りますので、神奈中カラーの流用であることが分かります。
通常の利用者からは東海バスカラーとの区別はつかないレベルです。

箱根登山鉄道 → 沼津登山東海バス
沼津登山東海バス(元箱根登山鉄道)
東海バスオレンジシャトル

三島駅(2016.6.4)

東海バスでは、2002年に同じ小田急グループの箱根登山鉄道(神奈川県)の静岡地区を東海バスグループに移管して以来、その後の移籍車も含め、塗り替えずに使用しています。
社名はその後、東海バスオレンジシャトルに変わっています。

沼津登山東海バスカラー
東海バスオレンジシャトル

三島駅(2016.6.4)

こちらは譲受車ではなく、会社統合時に採用された折衷カラーです。
2002年に、箱根登山の路線を統合した沼津登山東海バスが設立されましたが、東海バスと箱根登山のカラーの折衷型となりました。その後、東海バスの基本カラーに変わり、このデザインは増えてはいません。

4-05 東急バス → 上田交通

上田交通(元東急バス)
上電バス

撮影:ヒツジさん様(上田車庫 2004.4.21)

上田交通(長野県)は1958年に東急グループ入りし、東急の当時の観光カラー(ブルーグレー)を路線バスにも採用していましたが、1990年代末期に一時塗り替えをやめ、東急カラーの流用を行っています。
1997年頃に東急からの譲受車については、赤帯の色を青緑色に塗り替えて使用しています。これまでの上田交通カラーや、上田交通の電車のラインカラーに合わせたものと思われます。

上田交通(元東急バス)
上田バス

撮影:ポンコツ屋赤木様(上田市 2014.9.13)

1999年頃には、赤帯のままで使用するようになりました。
バス部門は事業譲渡により上電バス、上田バスと名前を変え、2009年には東急グループではなくなっています。その後、2013年にオリジナルカラーを設定し、これら東急カラーは姿を消しています。

>>1-05 東急グループカラーへ

4-06 東急バス → 草軽交通

東急トランセ
東急トランセ

撮影:羽田空港(2017.8.19)

草軽交通
草軽交通

撮影:軽井沢駅(2017.3.11)

草軽交通(長野県)は1945年の草軽電気鉄道時代に東急グループ入りし、1957年にバス事業を開始、以来、東急カラーをアレンジしたデザインを用いてきました。
東急からの譲渡を受けるようになってからは、各種の東急カラーをそのまま使用してきました。
空港連絡バスの「東急リムジン」が、草軽交通では、「KUSAKARU Limousine」と書き換えて観光路線バスに使用されています。

草軽交通(元東急バス)
草軽交通

撮影:軽井沢営業所(2017.3.11)

この車両は、東急時代にNHK線で使われていた車両で、そのままのカラーで使われています。
なお、草軽交通は2009年に東急グループを離脱していますが、その後も車両の譲受は続いており、オリジナルカラーが制定されたものの、譲受車に関してはそのままで使用されています。

4-07 徳島バス→四国交通

徳島バス
徳島バス

撮影:鳴門局前(2016.11.23)

四国交通
四国交通

撮影:本社(2023.1.29)

徳島バスと四国交通は、かつては同じカラーでしたが、現在では異なるオリジナルカラーを持っています。もっとも、四国交通は青と緑をコーポレートカラーとして維持し続けているようです。
近年、徳島バスからの移籍車に関しては、ピンク色を黄緑色に変えて使用しています。

4-08 長崎自動車 → 島原鉄道

長崎自動車
長崎自動車

撮影:大橋営業所(2018.10.16)

島原鉄道(元長崎自動車)
島原鉄道

撮影:島鉄バスターミナル(2018.10.15)

島原鉄道(長崎県)は2018年に長崎自動車(長崎県)の系列企業となりましたが、それに伴い、長崎自動車からの譲渡車両がそのままのカラーデザインで使われるようになりました。
車体裾にはローマ字でシマテツのロゴが入れられています。

4-09 京成タクシー成田

千葉交通
千葉交通

撮影:銚子駅(2023.11.11)

まずは、かつての親会社であった千葉交通のカラーリングから。
2000年から採用されたドアを強調するデザイン。ブルー系は千葉交通の伝統カラーでもあります。

京成タクシー成田(元千葉交通)
京成タクシー成田

撮影:銚子駅(2023.11.11)

千葉交通の子会社の千葉交タクシーでは、「ちばこうバス」の愛称で、千葉交通の廃止路線を引き継いで運行していました。車両も千葉交通からの引き継ぎ車両が多く、そのままのデザインで社名のみを変えていました。
2019年の京成グループのタクシー再編に伴い、成田タクシーと合併の上、京成タクシー成田と社名を変えました。
「ちばこうバス」の愛称はそのままです。

京成タクシー成田(元千葉海浜交通)
京成タクシー成田

撮影:銚子駅(2023.11.11)

様々な京成グループからの移籍車はそのままのカラーで使用されます。
このバスは千葉海浜交通のカラーで、「ちばこうバス」の社名や車番を入れるためか、前面と側面に白いシートを貼ったため、修理中のような中途半端なデザインです。

京成タクシー成田(元京成タウンバス)
京成タクシー成田

撮影:本社営業所(2023.11.11)

撮影時点では大多数を占めていた京成タウンバスからの移籍車。カラフルな「TOWNBUS」のロゴもそのままで、「ちばこうバス」のロゴも追加しています。
「TOWNBUS」のロゴが小さくなった時期の車両もあります。
なお、これ以前には、京成バスや東京ベイシティ交通のカラーの車両もありました。

系列会社以外での車両譲渡によるもの

4-11 道北バス

道北バス(基本カラー・市内線)
道北バス

撮影:旭川駅(2016.6.11)

道北バス(北海道)では、2007年頃からの譲受車に、前面以外は旧事業者のカラーそのままで使用するという手法を取っていました。それらをご紹介する前に、まずは基本となる道北バスのオリジナルカラーをお見せします。
緑色の濃淡のラインが入るデザインが、市内線のカラーデザインです。

道北バス(基本カラー・郊外線)
道北バス

撮影:旭川駅(2016.6.11)

青色のラインが入るデザインが、郊外線のカラーデザインです。
高速バスにも使用されたカラーです。

東京都交通局 → 道北バス
東京都交通局
東京都交通局

撮影:新宿交通公園(2016.10.10)

道北バス(元東京都交通局)
道北バス

撮影:旅とのりもの様(旭川駅 2010.6.9)

東京都交通局(東京都)からの譲受車の一例です。元々の都営バスカラーと見比べると、正面のみ道北バスカラーに似せて塗り替えているのが分かります。
基本的にライトグリーンの斜めラインという大枠が道北バス基本カラーと共通しているので、あまり違和感はありません。

相模鉄道 → 道北バス
相鉄バス
相鉄バス

撮影:横浜駅(2017.4.30)

道北バス(元相模鉄道)
道北バス

撮影:旅とのりもの様(旭川駅 2007.6.19)

相模鉄道(神奈川県)からの譲受車の一例です。こちらもグリーン系濃淡の斜めラインなので、道北バス基本カラーとはもともとよく似ています。また、正面のラインもそのまま活用されており、斜めラインが加えられて道北バスらしくなっています。

遠州鉄道 → 道北バス
遠州鉄道
遠州鉄道

撮影:浜松駅(2015.1.11)

道北バス(元遠州鉄道)
道北バス

撮影:旅とのりもの様(旭川駅 2010.6.9)

道北バス(元遠州鉄道)
道北バス

撮影:旅とのりもの様(旭川駅 2010.6.9)

遠州鉄道(静岡県)からの譲受車の一例です。
塗り替えの手法は全く同じで、正面のみ道北バスカラーになっています。やはり元々がグリーン系の斜めラインですが、遠州鉄道の場合は地色がシルバーです。

市内線カラーは、同じ緑色ですが、塗り替えた正面のラインの色は側面の緑色とは異なります。
郊外線カラーは、側面との色使いは全く異なりますが、ラインの連続性は考慮されています。

4-12 四国高速バス → 沿岸バス

四国高速バス
四国高速バス

撮影:松山駅(2016.5.29)

沿岸バス(元四国高速バス)
四国高速バス

撮影:旭川駅(2016.6.11)

沿岸バス(北海道)では、四国高速バス(香川県)から譲受した車両の側面デザインをほぼそのまま流用しています。
元々四国高速バスでは、鳴門海峡の渦潮をイメージしたと思われる渦巻模様をデザインしていました。沿岸バスでは、正面は自社オリジナルのデザインに塗り替えたものの、側面の渦潮デザインは自社カラーに変えてはいるものの、塗り分け線は流用しています。同じ海沿いの事業者ということかも知れません。

4-13 阿寒バス

関東自動車 → 阿寒バス
阿寒バス(基本カラー)
阿寒バス

撮影:阿寒湖バスセンター(2016.6.12)

まず、阿寒バス(北海道)の基本カラーです。ブルーとクリームの地色に大きなタンチョウ(丹頂)が飛んでいる独特のデザインです。かつては、長距離バスも近距離バスもこのカラーリングでしたが、近年では、長距離バスについては異なるカラーリングが増えています。

関東自動車
関東自動車

撮影:勝田駅(2017.5.14)

阿寒バス(元関東自動車)
阿寒バス

撮影:釧路駅(2021.6.6)

関東自動車(栃木県)の高速バスは、「マロニエ号」で採用されたシルバーとブルーのラインの上に3本の木をデザインしたカラーリングですが、この車両が阿寒バスでほぼそのまま就役しています。その後、3本の木が消されています。更に、その後に導入された中距離バス用の車両では、元関東自動車以外の車両もこのカラーに塗られています。
ブルーとクリームという使用色が、阿寒バスの基本カラーともよく似ているため、違和感はありません。

南海バス → 阿寒バス
南海バス
南海バス

撮影:sakaisuji66613様(高松駅 2011.5.15)

阿寒バス(元南海バス)
阿寒バス

撮影:釧オロ様(本社 2024.6.28)

南海バスが南海電気鉄道当時の1994年に、関西国際空港開業に合わせて導入した空港バス「sorae(ソラエ)」カラーの車両が、阿寒バスの釧路・羅臼線用に譲渡されました。
後ろの方の青色の部分に白線が4本入れられ、尖ったデザインが消されるなど、イメージを変えてあります。阿寒バスのロゴは大きく入れられました。
しかし、1か月後には阿寒バスの都市間バスの標準塗装であるオレンジ色1色に塗り変えられ、この流用カラーは姿を消したそうです。

4-14 西東京バス → 下北交通

西東京バス
西東京バス

撮影:八王子駅(2017.4.30)

下北交通(元西東京バス)
下北交通

撮影:comfort805様(大畑駅 2012.5.20)

下北交通(青森県)では、2012年に西東京バス(東京都)より譲受した車両について、正面のみ自社カラーに塗り替えて使用しています。赤と白の下北交通カラーと、朱色と黄色の西東京バスカラーとの隔たりは大きく、違和感を感じます。
その後、側面部分は広告によりラッピングされ、流用カラーは見た目上は解消したとのことです。

4-15 神奈川中央交通 → 花巻バス

花巻バス(基本カラー)
岩2く3092

撮影:板橋不二男様(花巻バス本社 1973.11.3)

岩手県交通の前身の一つである花巻バス(岩手県)の一例です。
まずは、花巻バスの基本カラーをお見せします。クリーム色の地色に赤色のラインです。正面の金太郎腹掛け塗り分け、おでこのヒゲ、側面裾のフェンダをトレースしたと思われる塗り分けなど、かつてのバスデザインの基本要素を数多く盛り込んでいます。

神奈川中央交通
MR420

撮影:板橋不二男様(立場車庫 1974)

花巻バス(元神奈川中央交通)
花巻バス

撮影:板橋不二男様(花巻バス本社 1973.11.3)

花巻バスでは、ツーマンカーの時代から、神奈川中央交通の車両譲渡を受けていましたが、窓下のラインのみを塗り替えて使用しています。もともとの神奈川中央交通とは、正面の塗り分けラインは同じですし、車体裾の模様も形こそ異なりますが、フェンダを生かしたデザインである点は共通しています。
なお、ワンマンカーの場合は、窓下のラインが青色になります。

4-16 神奈川中央交通 → 岩手県交通

岩手県交通(岩手中央バスカラー)
岩手県交通

撮影:雫石営業所(1985.9.23)

こちらは、岩手県交通(岩手県)のカラーデザインの中で、統合前の岩手中央バスが用いていたカラーデザインです。
1976年の岩手県交通成立後は、岩手県交通のオリジナルカラーが採用されましたが、最終年式では1976年式の旧岩手中央バス車両がこのカラーのまま残されていました。

神奈川中央交通
神奈川中央交通

撮影:戸塚バスセンター(1985.4.2)

岩手県交通(元神奈川中央交通)
岩手県交通交通

撮影:滝沢営業所(1985.12.7)

1981年に岩手県交通が神奈川中央交通から譲受した車両は、車体の下半分を塗り替えて、岩手中央バスカラーに似せています。車体上半分は、雨樋部分に赤い線が残ることから、神奈中カラーのままであることが分かります。
合併前の旧カラーではありますが、この車両より新しい車両にまだ残されていたカラーでもあり、塗替えコストの削減のためにこのような手段を取ったものと思われます。正面の塗り分け線が同じ曲線であることも幸いしました。

4-17 高槻市交通部 → 和歌山バス那賀

高槻市交通部
高槻市交通部

撮影:高槻駅(2016.5.7)

和歌山バス那賀(元高槻市交通部)
和歌山バス那賀

撮影:comfort805様(那賀営業所 2016.9.18)

南海系列の和歌山バス那賀(和歌山県)では、2012年に高槻市交通部(大阪府)より譲受した車両について、ほとんどそのままのカラーで使用しています。正面の窓下の緑のラインのみ消されて、南海グループのマークが入れられています。

4-18 鞆鉄道

鞆鉄道(基本カラー)
鞆鉄道

撮影:福山駅(2017.11.23)

こちらは、鞆鉄道(広島県)の基本カラーです。白地にモスグリーンのラインが入った伝統的なデザイン。側面には社章とロゴが入るようになりました。

神奈川中央交通 → 鞆鉄道
神奈川中央交通
神奈川中央交通

撮影:横浜駅(2017.4.30)

鞆鉄道(元神奈川中央交通)
鞆鉄道

撮影:シンコー様(福山駅 2014.5.28)

鞆鉄道では神奈川中央交通からの譲受車2両について、正面を自社カラーに塗り替えた上、側面のラインを自社カラーのモスグリーンに塗り替えた状態で使用していました。裾、窓下、雨樋部分のラインがそれぞれ上塗りされています。
しかし、正面と側面とで地色が異なる点は、違和感が残ります。その後、側面は広告によりラッピングされ、この姿は見られなくなったそうです。

相鉄バス → 鞆鉄道
相鉄バス
相鉄バス

撮影:横浜駅(2017.4.30)

鞆鉄道(元相鉄バス)
鞆鉄道

撮影:福山駅(2020.6.20)

相鉄バス(神奈川県)からの譲受車に関しても、上半分に元カラーが残されています。
相鉄バスは、もともとモスグリーンのような色なので、鞆鉄道の色とは共通性があります。さらに、斜めラインの角度もよく似ています。

4-19 関東バス → 北海道拓殖バス

関東バス
関東バス

撮影:赤羽駅(2024.9.23)

北海道拓殖バス
北海道拓殖バス

撮影:釧オロ様(帯広駅 2022.8.24)

北海道拓殖バスでは、関東バス(東京都)からの譲受車による車両代替を行っていますが、屋根部分のカラーデザインを流用しています。屋根肩には、関東バス時代は「KANTO BUS CO.,LTD」と書かれていましたが、「TAKUSYOKU BUS」(近年は「Hokkaido Takusyoku Bus」)に変っています。
屋根以外は塗り替えられているのですが、車番だけは関東バス時代のものをそのまま踏襲しています。写真の車両もC1210の車番が、そのままの字体で残されています。面白い流用事例です。

4-20 花巻観光バス → 信濃観光バス

花巻観光バス
花巻観光バス

撮影:一関駅(1985.10.5)

信濃観光バス
信濃観光バス

撮影:長野駅(2017.3.11)

信濃観光バス(長野県)は、2000年頃に貸切事業を開始した事業者ですが、最初の車両が花巻観光バス(岩手県)からの譲受車であったため、その後の新車もそれに準じたカラーデザインになりました。
花巻観光バスでは緑ラインの下の細線はゴールドでしたが、信濃観光バスでは黄色になっています。写真のセレガFCは、花巻観光とは関係のない車両ですが、塗り分けはほとんど踏襲しています。

信濃交通
信濃交通

撮影:本社(2024.7.21)

徐々に花巻観光バスから遠ざかって行く途上の車両。このエアロバスは2013年頃に登録されていますが、前面のラインが直線に変っています。

信濃交通
信濃交通

撮影:本社(2024.7.21)

こちらは2016年頃に登録されている日野セレガ。前面の塗り分けがなくなり、側面は中央部に社名ロゴが入るため、ラインが大きくカットされています。花巻観光バスの面影はかなり失われています。

4-21 東武バス → 志賀高原交通

東武バス
東武バスセントラル

撮影:羽田空港(2017.8.19)

志賀高原交通
志賀高原交通

撮影:長野駅(2017.7.15)

志賀高原交通(長野県)も、2000年頃に貸切事業に参入した事業者ですが、最初の車両が東武鉄道(東京都)からの譲受車でした。元デザインの赤いグラデーションの部分を水色のベタ塗としていました。ここに揚げた写真はその後継車で、東武バスとは無関係の車両ですが、初代車両のデザインを踏襲しています。そのため、東武バスのデザインとよく似た塗り分けですが、後ろの方にラインがつながっているあたりは、オリジナルのアレンジのようです。

4-22 遠州鉄道 → 南三陸観光バス

南三陸観光バス(元遠州鉄道)
南三陸観光バス

撮影:長谷川竜様(石巻駅 2017.6.10)

南三陸観光バス(宮城県)に存在する遠州鉄道(静岡県)からの譲受車。
遠州鉄道では深緑色のラインだった部分に、薄茶色を上塗りしているようです。地色のシルバーとのマッチングが自然なので、流用の違和感は感じません。
同社では、他の車両はオリジナルカラーの新車が主力であり、この流用カラーは例外的な存在のようです。

4-23 日の丸自動車興業 → 西彼観光バス

日の丸自動車興業
日の丸自動車興業

撮影:東京都(2016.7.30)

西彼観光バス
西彼観光バス

撮影:本社(2018.10.16)

西彼観光バス・せいひ観光(長崎県)のデザインは、日の丸自動車興業(東京都)とほぼ同じで、文字やマークを取り除いたものとなっています。同じように三菱車が多いことなどから、当初の譲渡車両のデザインをそのまま継承しているものと思われます。
なお、ラインの傾斜角度は若干変わっているほか、新たな導入車両では、窓上に緑色のラインが追加されていたりします。

4-24 日本中央バス → ヒカリ総合交通

日本中央バス
日本中央バス

撮影:前橋バスセンター(2016.7.2)

ヒカリ総合交通
ヒカリ総合交通

撮影:左党89号様(湯田町 2003.6.14)

ヒカリ総合交通(岩手県)では、2000年頃に導入した車両が、日本中央バス(群馬県)のデザインを流用しているようです。名称は変えているものの、字体はほとんど同じです。側面のゴールドの太線に上に細線を追加している点が相違点でしょうか。
なお、このセレガFCが譲渡車であれば、元所属は日本中央バスの系列の日本中央交通か日本中央自動車になります。

日本中央バス
日本中央バス

撮影:羽田空港(2017.8.19)

ヒカリ総合交通
ヒカリ総合交通

撮影:左党89号様(盛岡駅 2012.5.12)

独自の進化を遂げつつあるヒカリバスです。
両社の新型セレガ・ガーラを並べてみました。ベースデザインを維持する日本中央バスに対し、ヒカリ総合交通は、前面のラインが細く、ラインの端が丸くなっていない点などが本家と異なる進化を遂げています。側面の後部にあった白抜きのローマ字社名もなくなりました。

日本中央バス
日本中央バス

撮影:前橋駅(2023.3.11)

ヒカリ総合交通
ヒカリ総合交通

撮影:左党89号様(久慈駅 2024.4.1)

路線バスについては譲渡車ではありませんが、参考までに見比べてみます。
ヒカリバスでは、久慈市民バスに使用される路線バスにも、日本中央バス流用カラーを展開します。こちらは太線の端に丸みがある点も本家のデザインを踏襲しています。ただし、前面に中央部に社紋を入れている点が独自展開になります。

事業移管によるもの

交通局、交通部等が運営する公営バスが、地元の民間バス事業者に移管されるケースがあります。
公営バスは一般的な路線バスの利用者減少に加え、事業体の特性から人件費など高コスト化、さらに「官から民へ」という国策の影響もあり、事業廃止が増加したものと思われます。
1986年の浜松市(→遠州鉄道)から始まり、1999年の山口市(→防長交通)、2003年の函館市(→函館バス)、2004年の札幌市(→北海道中央バス、じょうてつバス、JR北海道バス)など、2000年代に入るとその数は急増しました。
多くの場合、車両はそのまま引き継がれ、暫定的にそのままのカラーデザインで使用されるケースも多いようです。

4-31 尼崎市交通局 → 尼崎市交通事業振興・阪神バス

尼崎市交通事業振興(元尼崎市交通局)
尼崎市交通事業振興

撮影:塚口駅(2016.5.7)

阪神バス(元尼崎市交通局)
阪神バス

撮影:塚口駅(2016.5.7)

尼崎市交通局(兵庫県)は2016年にそのバス事業を阪神バスに譲渡し、事業を終了しました。その後も、車両は2事業者により引き継がれ、3色の虹を描いたカラーのまま使用されています。
尼崎市交通事業振興(兵庫県)は、2003年度から市営バスの路線の受託を行っていました。交通局からの移籍車を主体としており、正面に「ATS」のロゴが表示されています。2016年からは阪神バスが引き継いだ路線を受託しています。
阪神バス(兵庫県)は、2016年から交通局の事業を引き継いでいます。虹のデザインはそのままですが、側面上部に「HANSHIN BUS」の文字が入り、正面の市章も阪神バスのマークに代えられています。
中ドアに描かれた尼崎市のマスコット「あまっこ」のイラストはいずれもそのままです。

4-32 山口市交通局 → 防長交通

防長交通(基本カラー)
防長交通

撮影:徳山駅(2016.5.29)

防長交通(山口県)は、1999年に山口市交通局(山口県)から事業譲渡を受けました。
こちらの写真は、防長交通のオリジナルカラーです。防長交通では、旧カラーや近鉄からの譲受車カラーも含めて、様々なカラーデザインが存在しています。

防長交通(元山口市交通局)
防長交通

撮影:新山口駅(2016.5.29)

事業譲渡に伴い山口市交通局から引き継いだ車両です。車両カラーは塗り替えずに使用しています。
山口市交通局では、終戦後から赤と白で正面を小判型に塗り分けたデザインを一貫して使用してきました。最終的には、窓周りが赤から白になるなど軽快な感じにアレンジされていました。

4-32 苫小牧市交通局 → 道南バス

道南バス(基本カラー)
道南バス

撮影:苫小牧営業所(2023.6.9)

道南バス(北海道)は、2002年度から苫小牧市交通局の運行業務委託を受けていましたが、2012年度から完全移譲となりました。
写真は、道南バスの基本カラー。貸切バスから採用された緑色の重厚なデザイン。

道南バス(元苫小牧市交通局)
道南バス

撮影:苫小牧営業所(2023.6.9)

2012年度の完全移譲に伴い、車両もそのまま移籍しました。市営バスカラーのまま、社名を上張りして使用しています。

4-34 徳島バス

徳島バス(基本カラー)
徳島バス

撮影:徳島駅(2016.11.23)

徳島バス(徳島県)では、2011年に徳島市交通局の一部路線の受託運行を開始したほか、2013年に鳴門市運輸部の路線を引き継ぎ、2015年に小松島市運輸部の路線を引き継ぐなど、地元公営交通の路線を相次いで引き継いでいます。
それに伴い、車両も同時に引き継いでおり、複数のカラーが混在しています。
まずお見せするのは現在の基本カラーで、徳島のTをデザインしたと思われるカラーリングです。

小松島市運輸部 → 徳島バス
徳島バス(元小松島市運輸部)
徳島バス

撮影:徳島駅(2016.11.23)

小松島市運輸部(徳島県)は、小松島市から徳島市までを結ぶ路線を運行していましたが、2015年に事業を廃止し、路線、車両ともに徳島バスに譲渡しています。
徳島バスでは、2016年現在、小松島市営バスカラーのまま、譲渡された路線に使用しています。このカラーは、窓下に3本ラインを持つ伝統的デザインで、50年以上使われてきました。

徳島市交通局 → 徳島バス
徳島市交通局(基本カラー)
徳島市交通局

撮影:徳島駅(2016.11.23)

徳島市交通局(徳島市)では、経営環境の悪化により2011年から路線の再編を開始し、併せて徳島バスへの路線譲渡、移管を進めています。
これは徳島市営バスの基本カラーで、銀色地に紺色のラインが入った伝統的なカラーです。

徳島市交通局(東部循環)
徳島市交通局
徳島駅(2016.11.23)

徳島バス(中央循環)
徳島バス
徳島駅(2016.11.23)

徳島バス(南部循環)
徳島バス
徳島駅(2016.11.23)

次にこの3枚は、徳島市交通局の路線再編で生まれた循環線のカラーで、路線ごとに色分けされています。
黄緑色は2011年に路線再編で生まれた循環路線の一つ、東部循環線のカラーです。窓下の帯色を、東部循環線のラインカラーである黄緑色に変更しています。2016年時点では、徳島市交通局が運行しています。
ピンク色は中央循環線のカラー。2002年に市営バスで運行が開始された最初の循環路線で、徳島市営バスの基本カラーの紺色部分をすべてラインカラーのピンクに変えています。2015年に車両ごと徳島バスに移管されました。
黄色は南部循環線のカラー。2011年の路線再編で生まれた循環路線の一つで、同じく紺色部分をすべて黄色に変えています。やはり2015年に徳島バスに移管されました。
結果的に、市営バスと同じ塗り分けで色の異なる車両が、市営バスと徳島バスの両方で使用されています。

4-35 JRバス東北 → 宮交仙南バス

JRバス東北
岩手22き22

撮影:盛岡支所(1988.7.21)

宮交仙南バス(元JRバス東北)
RJ172BA

撮影:左党89号様(角田営業所 2001.3.19)

ジェイアールバス東北(宮城県)の角田営業所が1999年3月に廃止され、路線が地元の宮交仙南バス(宮城県)に引き継がれた際、同時に車両も譲渡されました。JRバスの青い部分を宮城交通のカラーである赤色に塗ったようです。

支援事業などの特殊事例

岩手県交通(元東京都交通局)
岩手県交通

撮影:comfort805様(大船渡市 2012.7.14)

2011年の東日本大震災では、宮城県、岩手県の沿岸部のバス事業が大きな打撃を受け、車両も被災しました。そこで、全国から支援事業として車両の無償譲渡が行われています。
写真は、東京都交通局(東京都)から岩手県交通(岩手県)に無償譲渡された車両で、側面に「このバスは東京都交通局より被災地支援として無償譲渡された車両です」と書かれています。
塗り替える余裕がなかったことはもちろんですが、支援事業であることを明確にするためにも、そのままのカラーでの使用はやむを得ないことでしょう。後に自社カラーへと塗り替えられています。

ミヤコーバス(元東京都交通局)
ミヤコーバス
長谷川竜様(気仙沼営 2017.6.3)

ミヤコーバス(元明石市交通部)
ミヤコーバス
長谷川竜様(気仙沼営 2017.5.13)

ミヤコーバス(元神姫バス)
ミヤコーバス
長谷川竜様(石巻営 2017.6.10)

ミヤコーバス(宮城県)でも東日本大震災の際の無償譲渡を受けています。
東京都交通局からの譲受車、明石市交通部からの譲受車、神姫バス(兵庫県)からの譲受車がそのままのカラーで使用されています。明石市や神姫バスは、正面の紋章も含めてそのまま使用されています。なお、譲渡元の明石市交通部は2012年に事業自体を終了しており、このカラーのオリジナルは先に姿を消しています。
ミヤコーバスでは、自社カラーに塗り替えた車両とそうでない車両がありますが、震災の支援事業の記録を残す意味もあるのかも知れません。

夕張鉄道(元東京都交通局)
夕張鉄道

撮影:夕張営業所(2016.6.11)

財政再建団体となった夕張市への支援のため、2012年に東京都から夕張市へ都営バス1台が無償譲渡され、これを夕張鉄道(北海道)が路線バスとして運行しています。
支援車両であることを示すためか、そのままのカラーで使用されています。

>>5-5 共同運行と共同配車へ


主な参考文献
  1. 日本バス友の会(1994)「日本のバスカラー名鑑」
  2. 和田由貴夫(1998)「シティバスのカラーリングを考える」(「年鑑バスラマ1998-1999」P.97〜103)
  3. 三好好三(2006)「バスの色いろいろ」(「昭和40年代バス浪漫時代」P.124〜125)
  4. 満田新一郎(2005)「昭和30年代バス黄金時代」
  5. 満田新一郎(2006)「続昭和30年代バス黄金時代」
  6. 満田新一郎(2006)「昭和40年代バス浪漫時代」
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80s岩手県のバス“その頃”