その頃
のびぞう 「ノラざえもん! 大変だ。お父さんがリストラにあって会社をクビになっちゃうよ」
ノラざえもん 「そりゃ大変だ。早くこの家から逃げ出さないと」
のびぞう 「どうして逃げるんだよ。家賃が払えなくて夜逃げする所にまで頭が回るんなら、そのポケットから何か出してよ」
ノラざえもん 「そうだよね。すっかり忘れていたよ。それじゃあ・・・♣求人票!」
のびぞう 「何それ?」
ノラざえもん 「これをハローワークに持って行くと、いい就職先見つかるかもしれないよ」
のびぞう 「だから、お父さんが失業する前提を捨てなよ!」
ノラざえもん 「いや、雇用機会均等法で男女の差別はなくなったから、お母さんだって就職できるよ」
のびぞう 「就職するとかしないとかじゃなくて、お父さんがリストラされないようにしてよ」
ノラざえもん 「なるほどね。じゃあ・・・♣嫌いなものが好きになっちゃうパウダー!」
のびぞう 「これどう使うの?」
ノラざえもん 「このパウダーを社長さんとか人事部長とかにかけるんだ。そうすると、嫌いだったお父さんのことが好きになるから、リストラされなくなるよ」
のびぞう 「でもリストラって、好きとか嫌いとかで判断されるんじゃないんじゃない?」
ノラざえもん 「そうなの? じゃあ、どうしてお父さんはリストラされるんだろう」
のびぞう 「多分、同じ給料もらっているのに、仕事が遅いとか、売上が上がるような発想をしないとか、人付き合いが悪くて営業成績が悪いとか、そういうことじゃないかと思うんだよ」
ノラざえもん 「なるほどね。でも、のびぞう君、よく分かるね、そういうこと」
のびぞう 「うん。何だか分かる気がするんだ。ボクも小学校で色々な体験をしているからね」
ノラざえもん 「この親あってこの子ありか」
のびぞう 「まあ、そんなに褒められても困るけどね」
ノラざえもん 「褒めちゃいないよ。でも、そういうことなら、あれを出すか・・・。♣スペシャル企画書用紙!」
のびぞう 「おお! なんかいいね。どういうもの? それ」
ノラざえもん 「この企画書用紙に向かうと、自然に最も優れた企画書が出来上がるんだ。これをお父さんに渡して、企画書を書いてもらい、会社に提出すれば、お父さん大手柄だよ。リストラなんて取り消しになるさ」
のびぞう 「ありがとう、ノラざえもん。さっそくお父さんに渡してくるよ」
ノラざえもん 「やれやれ。まあ、確かにお父さんが失業したら、ボクだってここにいられなくなっちゃうからな」
のびぞう 「ノラざえもん、大変だ。スペシャル企画書書いたのに、お父さんリストラに遭っちゃったよ」
ノラざえもん 「ど、どうして?」
のびぞう 「お父さんの書いた企画書は、会社を危機から救うのに最も優れた内容だったんだけど、自分をリストラすれば会社の業績が上がるって内容だったんだ」
岩手県のバス“その頃”